私が映画体験に求めているのは、主に生きるか死ぬかのスリルと緊張感の疑似体験です。
なので、恋愛映画やら感動のヒューマンドラマなどは普段全く目にすることは無く、
むしろ嫌悪感すら抱いています。
特に難病モノや死別、別離を押しつけがましいBGMで煽っているような
お涙頂戴映画には悪い意味で鳥肌が立つほどです。
なので、この「隻腕になった天才サーファー少女が不屈の根性で復帰する」
という実話を基にしたヒューマンドラマなど普通なら観ません。
サーファーという人種にも全く興味が持てないし。
が、本作に限っては「サメに襲われて片腕を失った」という話なので
一応観てみることにしました。
…が、主人公のベサニー(13歳)がサーフィン中にサメに襲われるシーンは、
それはもう淡泊なものでした。
↑シャークアタックのシーンはこの一瞬だけ。
サメの出演時間0.1秒くらい。一瞬すぎてこのキャプチャをとるのも苦労しました。
まあ本作は実話ベースなので、13歳の少女がサメに襲われるシーンを楽しみに観る、
というのも不謹慎で気が引けるのは確かですが。
それにしても、現実にあったらものすごく恐ろしいシーンなんだから、
もうちょっとこの事件をクローズアップしてくれても良さそうなものです。
しかもこの天才サーファー・ベサニーはシャークアタックで命を落としかけ、隻腕になってもサーフィンを再開することに躊躇がありません。
サメや海が怖くないのかなあ…トラウマにならなかったのかなあ…
そこら辺の葛藤は本当に無かったんでしょうか。
ジョーズを観ただけで海水浴もしたくなくなった私とはえらい違いです。
むしろサメに襲われた時に近くで見ていた友人の方がシャークアタックを夢に見てうなされたりしていましたが、本作のサメ要素はこれでおしまい。
あとはサーフィン大会で勝てなくなって挫折し、タイにボランティアに行って勝利よりももっと大切なものを知り、再びサーフィン大会に出る。
という感動の復活劇がドラマチックに描かれますが、
「神を信じていたからできた」みたいな感じで宗教臭さが感動を若干スポイルしています。無宗教者的には。
聖人のような人格者ばかり出てくるのもあり、私のようなひねくれ者には本作からにじみ出る神々しい感動の光を直視できません。
太陽光を浴びた吸血鬼のような反応をしてしまうくらいです。
とはいえ、全国大会で5位に入賞しライバルからの祝福を受けるところは少しですが素直に感動できる良いシーンだと思いました。
このライバルは聖人揃いの本作中で唯一嫌な奴として描かれていたんですが、ベサニーが隻腕だろうと同情も手加減せず対等に扱ったうえでの行為なのが良かった。
ヒューマンドラマとしては普通に良く出来ていますが、
サメ要素を期待して鑑賞するのは間違っていました。
このブログにやってくるような人には決してオススメできないまともな良作です。