行方不明になった考古学者を捜す一行がたどり着いたのは、地下深くに眠る古代宮殿。だが、その場所は、攻撃的で恐ろしい殺傷力を持つ大量のクモに支配されていた。
(NETFLIXより)
ハムナプトラとかトゥームレイダーっぽい、遺跡発掘アドベンチャー映画に見えたのでそっち系には特に興味がないゆえ一旦スルー。が、よく見ると「恐ろしい殺傷力を持つ大量のクモ」などというおぞましい説明文に気が付いてしまったので鑑賞しました。
結論から言うとこれが正解で、遺跡探検映画として見るとクソ駄作以外の何物でもありませんが、虫が人を襲うパニックムービーとして見ればそれなりの出来…というわけでもないのですが、クモ映画としてはまあまあでした。
本作はオーストラリアと中国の合作映画です。
監督はあの良作サメ映画「
パニック・マーケット」を撮ったオーストラリア人のキンブル・レンドール。
どういうわけか「パニック・マーケット」は中国で大ウケしたらしいのでこういう仕事が回って来たのでしょうか?
なお本記事はクモ画像多めなので苦手な人はご注意ください。
不老長寿の薬を求めて製薬会社の社長が暗躍していたとか、
考古学者の弟を追って古代遺跡に入る姉とか、
そういう人間ドラマはかなり薄味なのではっきり言ってどうでも良いです。
本作の見どころは
「クモ」ただただこの一点のみ。
古代遺跡と言ってもスイッチを押したら橋が出て来たり扉が開いたりと言った単純極まりない仕掛けしかないので何のスリルも驚きもありません。淡泊すぎて逆に驚くくらいです。
そんなことよりもワサワサ迫って来る毒グモから逃げ回るシーンの方が圧倒的に多く、明らかにこちらがメインです。
不老長寿の薬の秘密も、古代遺跡関連の謎の核心も全部クモ絡み。
かなり純度の高いクモ映画です。
襲ってくるクモは「ジョウゴグモ」
クモ好きな人には常識ですが、オーストラリアには「シドニージョウゴグモ」という世界最強クラスの毒グモがいまして、本作ではなぜそれが中国の遺跡に現れるのだ!?
というのが不老長寿の薬の由来と絡んだ大きな謎として提示されます。
多分クモに興味がない人にとってはどうでもよすぎる話だと思います。
そして本作のクモは「
ラバランチュラ」などと違って、サイズも動きも完全にリアル系のクモの大群です。手の平よりは一回り小さいくらいでしょうか。
監督もオーストラリア人ということでおそらくジョウゴグモは慣れ親しんだ存在(?)のはず。現物と見紛うほどにリアルな…というかこれ本物使用してるだろ? としか思えないシーンも結構あります。
クモ映画といえばなぜかコメディばっかりというこれまでの傾向を覆す、ガチでリアルなクモパニック。
↑私も知りませんでしたが、ジョウゴグモは水中でも問題なく生存可能らしいです。
水中で泡の中からクモが襲ってくるという、マニア感涙の超絶レアなシチュエーション。
どういう観客層を想定して撮ったのか?
こんな趣向を凝らしたシーンを見せても、よっぽどのクモマニアじゃないと喜びませんよ。
監督のジョウゴグモ愛がひしひしと伝わってきます。
遺跡の奥で見つけた考古学者の弟に、なぜか不老長寿の薬を飲ませる姉。
はっきり言ってこの辺は全然意味が分かりません。
不老長寿の薬と言っても、2千年前の中国皇帝がオーストラリアのアボリジニに製法を聞いて作らせたものです。
その正体は、攻撃性と毒性を高めるよう改良したジョウゴグモが発情期に数滴だけ分泌する超濃厚なクモエキスを集めたものでした…って何それ? キモイよ! …それでこの地下宮殿がオーストラリア産のジョウゴグモに乗っ取られて支配されたわけですね。かなり斜め上なクモサスペンス。
しかもこのビンに入ってるのは当時の物、そのまんま。
2千年も寝かせた超濃縮発酵クモエキスを弱った人間に飲ませるとかもうね…本当にどうなってんの?
しかもそんなヤバすぎる劇物を飲まされても彼は腹も壊さないし、別にスパイダーマンにも何にもなりません。滞りなく消化吸収されて良いものとは思えないのですが…
ラスボスのクイーンスパイダー。
人間たちを自分の部屋に誘導する知能があるらしい。
お腹の周りに大量の子グモが密集しているタイプのメスグモであり
アラクノフォビアの精神的に脆いところを的確に刺激してきます。
しかし人間共はそんなラスボスと戦おうとは一切せず、
ただ単に脇を歩いてやり過ごすだけ。
クモ側もそんなデカイ図体してなんで一歩も近づかないんだよ。
なんてつまらんクライマックスだ…あり得ない…
(一応どうでもいいキャラ2人がやっつけで雑に喰われるシーンはありましたけど)
「パニック・マーケット」であれだけスタイリッシュにサメとの戦闘を描いた監督のやることとは思えません。
ちなみにこの後火事になってこのクモたちは燃えたり崩れた柱に勝手に潰されて終わりです。
ご馳走が出てきたのに手を付けようとしたら無慈悲にそのまま下げられたみたいでかわいそう。
…クモも観客も。
「ガーディアンズ」というタイトルからして、遺跡を守護する存在としてのクモと考古学者の戦いが観られると思ったんですが、全然違いました。
遺跡探検や人間ドラマなど投げやりかつ大雑把、アクションシーンすらも存在しない。
普通に見たらほめるところなど皆無に等しい駄作であることは間違いない。
アニマルパニック映画として見ても、ただただ逃げ回るだけの単純な展開しかないのでこれもまた面白いとは到底言えない。
ただただクモが襲ってくる描写に偏って力を入れまくった、本当にただのクモ映画でした。
セットもストーリーも、全部クモのために用意されたものと言って過言ではありません。
クモ大好きなクモ映画マニアじゃないと本作を楽しむのはほぼ無理かと思われますが、
シリアスなクモ映画は珍しいので、その手の人なら鑑賞する価値はあるかもしれません。
…あと、ラストで幼い少女がいきなり口からクモを勢いよく吐き出すシーンは物凄いビックリしました。何の脈絡もなく突然そんなことされたらそりゃ死ぬほど驚くに決まってますがそんなことして何の得があるのか全く分からんしむしろ腹立たしいです。だいたいこの少女の役割がほぼ無意味だし。このラストのためだけに連れ回していたのか? と思うとよけいムカつきます。本当にクモ以外なんの美点のない映画でした。