7人がシェアしたのは、たった一人の人生。
ノオミ・ラパスが1人7役を怪演したSFアクションスリラー!
一人っ子政策を強行する国家 VS 7人の姉妹
(ハピネットピクチャーズHPより)
人口爆発の対策として、児童分配法という名の一人っ子政策を超厳格に運用するようになった近未来。そんな世界で、不幸にも7つ子に産まれてしまった姉妹のサバイバルを描いたディストピアSF系のサスペンスアクション映画です。
本作はアメリカ・イギリス・フランス・ベルギー合作映画ということで、舞台となる国もどこなのかはユーロ圏であること以外分からず、この児童分配法が世界規模で適用されているのか何なのかよく分からなかったりします。
とにかくこの国では余分な兄弟姉妹がいることが発覚したら、人口問題が解決出来ているであろう遠い未来まで強制的にコールドスリープさせられるというルール。
泣こうが叫ぼうが家族は永遠に引き離される冷徹な監視社会となっています。
まあ、そんなにたくさん冷凍保存できるわけないだろ?
と誰もが思うことでしょうし、なんとなくオチの方向性も想像がついてしまいましたが。
(※本記事に後半部分や結末のネタバレはありません)
本作の主演はノオミ・ラパスさんです。
「プロメテウス」とか「ラプチャー~破裂~」とかでの強烈に濃ゆい演技が私の心に焼き付いて離れませんが、本作の主役は一卵性の7つ子。
つまり彼女の1人7役ということで、ただでさえ濃厚な存在感を放つあのお顔が常時、下手すると複数で画面に映りまくっているということで正直かなり胸やけします。
厳格な一人っ子政策が施行されているので、7つ子とバレたら強制的に冷凍されます。
なので、彼女たちはそれぞれ曜日の名前を持ち、自分の曜日の時に一人だけ外出し、同一人物を装うという決まり。
全員共通の外出時限定のキャラクター「カレン・セットマン」(現在は銀行員)を演じることで30年間周囲をごまかし続けてきた。しかしある日、月曜が出勤したっきり帰って来なくなり、そのうえ7つ子であることがなぜか当局にバレ、追われることになってしまった…という話です。
原題は「What Happened to Monday?」、邦題もそのまま直訳に近い形にした方が良かったと思いますね。
まあ正直言って、SFとしてもサスペンスとしても穴だらけだなあとは思います。
7人もいるのに、1週間日替わりでそれぞれが外出して、学校生活や職場でボロが出ないわけがない。学校はまだ大人しく勉強していれば良いかもしれませんが、銀行員として管理職ポストに昇進するほどバリバリ仕事をこなすのはいくらなんでも無理くさい。
だいたい日曜日担当なんて永遠に休みなわけです。不公平ですよ。
一卵性7つ子とはいえ30代にもなればマッチョもいるしビッチもいるしオタクもいるわけで完全に同一人物になり切れるとは思えません。
しかも幼少時にスケボーでコケて人差し指を欠損してしまった曜日がいて、どうするのかと思いきや、全員の指を等しく肉切り包丁で切り落とす育ての祖父。
全員が生きるためには仕方のない連帯責任。
観ているこっちもドン引きですが、指を詰める様子を見ている幼い姉妹たちの目を剥くわざとらしい演技がかえって微笑ましいという変な感じ。
まあそこまで徹底したとしても…
それ以前に物資の買い出しで一人じゃないことがすぐバレるだろ?
ってツッコミも当然頭に浮かびますけどね。2~3人ならまだしも7人は多すぎるね…
ということでSFサスペンス要素を本作のメインと捉えるのではなく、それは味付け程度。
「国家VS7人の姉妹」の部分に注目。つまり荒唐無稽なアクション映画として鑑賞すると本作はこのうえなく面白い、痛快娯楽大作であると感じました。
123分の長丁場があっという間です。
「プロメテウス」でも「ラプチャー」でもそうでしたが、ノオミ・ラパスさんは強すぎます。
いや…役者のイメージがそうであっても、週に1回しか外出できない7つ子がそんなに強いとは思って観てないわけですよ、一応。
ところが彼女たちは銃で武装した屈強な局員共を相手にそれはもうやり過ぎなくらいの大暴れ。戦えばガッツンガッツン殴り殺すわザックリ刺し殺すわ、逃げればすごい高所から落下して地面に激突してもピンピンしてダッシュするわ大ジャンプするわで、どうしてそんなむやみに強靭なフィジカルを持ってるの?
と疑問に思いながらもあんまりな絵面に笑ってしまいます。
ちなみにこの異常な強さの説明は
「鍛えぬいた体だもの」みたいなセリフひとつだけでした。かっこいい。
いや、確かにサンドバッグを叩いてトレーニングするシーンもちょろっとあったけどさ。
とは言っても7人姉妹の全員が全員そこまで鬼のように強いわけではない。
さすがのノオミ・ラパスとはいえ一人また一人と命を落としてゆく。
7人もいるとなんかゲーム的に残機を失ってるだけのように見える時もありますけどね。
SF的な未来世界は2073年が舞台にしてはあまり強調されておらず、風景は現代とあまり変わりません。
ただ、小道具はそれなりに凝っており、たとえば銃の引き金が常に指紋認証していて、正当な使用者以外には撃つことが出来ない。なんて要素もありますが。
これの活用法がまた爆笑もので、
まず素手で武装兵士をぶっ倒した水曜日がそいつの指を切り取って、自分の欠損した指にくっつけてドンパチドンパチ。
幼い姉妹全員の指を詰めるなんてトンデモエピソードをこれでもかと活用してくるナイスな脚本に喝采したくなりました。
SFとしてはネタが使い古されてる感があるにしろ、かなり独特な味わいを持った映画でした。あまり細部までは期待せずにアクション映画のつもりで観れば相当楽しめると思います。
ノオミ・ラパスさんが苦手でなければ結構オススメです。