変わった映画を見つけたらそれを語りたいブログ。 主にモンスターパニック映画、特にサメ映画の感想が多め
ここは基本映画ブログですが、珍しくゲームをやったのでその感想を書いてみます。
ちょっとネタバレしてますが、やったことがない、やるつもりがない方にも興味を持って頂ければ…というつもりで。
期待する方向性さえ間違えなければ素晴らしい珍作だと思います。
私は去年胆振東部地震に遭い、図らずも巨大地震のもたらす非日常を垣間見たわけですが、
考えてみれば近年東北はもとより大阪や熊本でも大地震が起こっており、程度の差はあれもはやそれを体験していない日本人の方が少ないんじゃないかと思えるほど珍しくない出来事になりつつあります。
そう考えると、
「大地震に巻き込まれた時、人はどうすべきか」
などというシリアスなテーマで作られたテレビゲームは日本人の興味・関心を強く引き付けるのではないでしょうか?
…と言いたいところなんですが、あいにくこのゲームは九条一馬氏をはじめとするグランゼーラスタッフの奇天烈なセンスが炸裂している、いわゆる
「バカゲー」
というやつなのです。
大震災でのサバイバル・シミュレーション…という真面目な側面もあることはありますが、基本的にはバカさ加減をゲラゲラ笑いながら楽しむべき珍作ゲームなのです。
(1作目の頃はそんなにふざけてなかった記憶もありますが)
では、大震災で崩壊した都市からの脱出ゲームのどこら辺がそんなにバカなのか?
ということより前に、まず本作の欠点から述べなければなりません。
悲しいことに今のところアマゾンでは平均星2つ程度なうえに発売からたった1か月半で半額以下にまで値崩れしてしまっており、客観的に見てもクソゲー扱いされてしまっています。
ただしこれはファンから見ても、まあ正当な評価かも…と思わざるを得ない理由がありまして。
・操作性が著しく劣悪
・ゲーム的には、ただのお使い
・中盤のストーリーがメチャクチャ(※これは良い点でもある)
・終盤のストーリーが胸糞悪い(※これは誰が見てもマズイ)
細かいところを無視すればこんなところですが、上の2つはかなりよろしくないです。
と言ってもここはゲームブログではないのでその辺は詳しく述べず、ストーリー的に特にイカれていた部分にだけ触れて行くことにします。
ここからが本題です。
ストーリー中盤のネタバレがあります。
中盤、駅前の交差点で白いシャツの二人組に怪しい団体へ勧誘されます。
それについていくと、地下にある一室へ案内され、
震災で皆困窮しているはずなのにそこだけ冷房の効いた部屋でご馳走食べ放題。どうやら地震を以前から予知して物資を溜め込んでいたらしい。
どう考えても胡散臭すぎるカルト団体なのですが、なぜかこのゲームでは
その「安らかな白き衣の会」に強制加入させられ、しかも勧誘ノルマまで課されてしまいます。
なんで震災中にそんなもんに付き合わなければならないのか。素直に従う必要はあるのか。まあやらないとゲームが進まないんですが。
で、駅周辺の被災者に優しく声をかけ、悩みを聞いたり自分に全てを委ねるように誘惑したりして勧誘ノルマを達成すると、代表にお褒めの言葉を頂けることになります。
しかし、代表に会うとノルマ達成を褒め称えられるどころか突然
「君にこの団体を率いてもらえないだろうか?」
と頼まれる、壮絶に斜め上な展開。
いや、入ったばかりなんですけど。
3人勧誘しただけで会の趣旨も運営方法も何も分かってないのに。
一旦断ることも出来ますが、引き受けないとゲームが進まない仕様。
これがサブクエストならともかくメインストーリーだなんて冗談だろ?と思いましたね。
儲けられそうなので美味しい話とも言えますが、カルト集団の代表としてそれらしく振舞えるのか?
既存のメンバーはついてきてくれるのか?
そもそも新入りに団体ごと譲り渡す理由は??というね。
つくづく謎すぎる。こんな天才的なシナリオを書く奴も書く奴だが、しっかりGOサインを出してしまうディレクターの神経も本当に大好きです。
で、引き受けると金庫に入っている三千万円+宝石を持ち逃げ出来たりするわけです。不法行為なのかどうかもよく分からん。
寄付金がどうのと言ってたのでマルチ的な団体だったんでしょうか?
ともかく、それまでサイフにはせいぜい2万円しか入ってなかったのにいきなりこの金額。バランス崩壊してないか。
震災中にそんなに何を買えばいいんでしょうかね。
まあ、すぐにボロが出て代表の座を追われることになるわけですが。本当に何のためのイベントだったのか分からない。大金持ちにはなれましたが、特にそんな大金使う場面無かったし。
で、代表の座を追われて逃亡し、行きついたとある小学校の避難所で起こる事件がまた輪をかけて凄まじいんですよ。
地元の人間ばかりが屋根の下で寝ることが許され、配給も地元民だけが優先的に受けられる避難所。
主人公のようなよそ者や、東南アジアからの外国人留学生たちはグラウンドで野宿を強いられ食べ物もロクにもらえない…
リアルでもそんなもんなのかな?
そこまで厳しくないんじゃないかな?
土地柄によるかな?
やっぱ避難所には出来るだけ行きたくないなあ…
などと色々と考えさせられるものが無くも無いシチュエーションなんです。
そんな中、主人公はダニーくんという留学生と仲良くなっていきます。
で、「体調を崩した子供のために水を汲んできてほしい」
と頼まれてからまた予測不可能なとんでもない超展開が始まります。
どこでどう水を汲めばいいかというと、校舎の壁から滴り落ちてる水をペットボトルに溜めればミッションクリアなのですが、それを飲んだ子供の体調が回復したのを見て、周囲の地元民たちが「こっちにもその水をくれ」とか言い出し、校舎の壁と避難民の間を何往復もすることに。
で、それを飲んだ人間の体調がたまたま回復していったことから
「奇跡の水」だなんだと祭り上げられ出し、
避難民たちが我も我もと寄って来ることになります。
ただの壁から漏れてる水道水なのに。
その時に無償で水をあげるか、見返りを要求するかで選択肢が色々と出るのですが、
その見返りが多額の現金でも超高級クルーザーでも不動産の権利書でも何でも要求し放題です。しかも全部普通にもらえちゃいます。
汚い水道水で一気に億万長者です。
悪行ポイントはたまってしまいますが、別に大したデメリットも無さそうだし
聖人のように振舞ってもトクは無いと言えるでしょう。多分。
しかしこの辺は(このゲームは一体何なんだ…)と呆れる人と、爆笑しながらひと財産築く人とでハッキリ好みが分かれる展開でしょうね。
アマゾンの評価を見ると、残念ながら前者の方が多かったようですが、それも当然だろうなと言わざるを得ないぶっとび方。
しかもですよ、こんな悪行は当然バレてしまうわけですが、
その時にどう対応するかもまたプレイヤーの手に「完全に」委ねられています。
「こんなインチキで自分だけ甘い汁を吸おうとは…!」
という地元民の当然の糾弾に対し、私は
「この人に脅されてむりやり…と涙目でダニーを指さす」
というド外道な選択肢を迷うことなくチョイス。
もちろん激怒した地元民と一緒になって被害者を装い、哀れな留学生ダニーくんへ石を投げつけました。
ここまで来るとさすがに私も(なんだこのゲーム…)という思いに囚われかけましたが、
石を投げる時もチクイチ
「当てる/当てないつもりで投げる」とか
「謝りながら投げる」とか
「自分の実力を試したい!と強めに投げる」とか
「そろそろ本気を出すか!と全力で投げる」とか
無駄にド外道な選択肢が豊富すぎて笑いがとまりません。
選択肢に関しては全編に渡ってこんなのが大量にありすぎるほどあるので、外道選択肢目当てでやっても損は無いというかむしろ選択肢を愉しむゲームとさえ言えます。ダニーくんはかわいそすぎて泣けてきますが。
ただ、この中盤までは本当に愉快な展開なのですが、終盤はうって変わって陰鬱極まりないストーリー展開となり、ふざけた選択肢を愉しむどころではなくなってしまうのが本当に惜しい。予想もしてなかっただけにダメージ大でした。
震災を笑いに変えてはいけないという自制心が働いたにせよ、むやみに悲劇を起こせばいいというものじゃないんですよね。
そんな急にシリアスになられても、私は野球のユニフォームにカウボーイハットをかぶりギターを背負っている変な姿でプレイしていたので、なおさらついていけませんでしたし。
というわけでちょっと長くなりましたが、
ゲーム性は「操作性の悪いお使いの連続」に過ぎないことと終盤の鬱さえ我慢すれば
実に好事家向けの珍ストーリー&珍選択肢を楽しめる素晴らしいバカゲーなので、
興味を持ってしまった方はぜひやってみてください。