「死後の世界は実在するのか?」
昨日見た「
ラザロ・エフェクト」も同じようなテーマながら
かなり消化不良気味だったので、もうちょっと踏み込んで描写してくれてそうな雰囲気の本作を今日はチョイス。
何といっても本作は導入部が非常に興味深い。
「死に対して過度な恐怖を抱いている主人公マイルズは、それを克服するため、
死後の世界を証明した人間に3万ドル払うと新聞広告を出す」
面白半分の好奇心がもとで悪霊に憑りつかれてしまう、
と言ったようなホラーは無数にありますが
新聞広告で募集するなんて話は今までに観たことがないパターンです。
しかもそんないかれた広告出した主人公マイルズは体格は良いのに目はうつろでどこか頼りなく、だいたい母親同伴で行動するような男。
いい年のオッサンがつきそいの老母と共に、
広告を見て応募してきた「死後の世界証明者」の選定を行う。
などという空前絶後のホラーストーリーに俄然期待が高まります。
「死後の証しを見せた人に3万ドル」
こんな新聞広告を目にしたとて、果たして応募する気になるものか?
おちょくってやろうとか、あわよくばうまいことだまくらかして3万ドルゲットとか、
どう考えてもろくでもないクズしか食いつかないことは想像に難くありません。
逆にまともな人なら、こんな変な広告主と関わりたくないと考えるでしょう。
ということで、ビデオやらメールを使って応募してきた数千人のうち、望みがありそうなのは3人というところまで絞り込みます。
そしてマイルズは母親と共にその3人と会って死後の世界を見せてもらおうとするのですが…
残念ながらこの映画が独創的で面白かったのはそこまででした。
脈がありそうだった学者、霊媒師、実業家それぞれに
会いに行くくだり自体はまだ良いのですが、マイルズは
そんなことをしているうちにネルソンというタチの悪い亡霊に憑りつかれてしまいます。
それ自体も別にいいっちゃいいんですが、
そこからは
「悪霊ネルソンをどうすれば祓えるのか?」
というありがちな心霊ホラーにテーマがシフトしてしまい、
当初の「死後の世界を証明してほしい」という目的がウヤムヤにされてしまうのが問題です。
いや、まあ確かにネルソンという悪霊に憑りつかれたことによって
死霊は実在する、つまり死後の世界も自明の物となったのかもしれませんが、
本作の導入部に惹かれて鑑賞した者としては何かうまいこと騙された気がしないでもない。
「マイルズ君騙されるなよ!」とか思いながら観てたら騙されてたのは観客の方だったというね。
「死後の世界とはどういうものか?」
ではなく
「死霊がいるんだから死後の世界もあるでしょ」ってだけ。
結局単なる心霊ホラーですかそうですか。
ちなみにそういう目で観ますと、本作はドッキリコケ脅しは一応少な目となっており、
Jホラー的な「さりげなく映り込んでいる死霊」を楽しむことも可能ではあります。
死霊ネルソンの望みを探り、成仏する方法を突き止める。
しかしそこには悪霊よりも卑劣な生きた人間の悪意が絡んでおり…
というサスペンス要素や、やけに強調され続ける「母親の愛情」といった伏線も活用しつつちょっとわかりにくいハッピーエンドへなだれ込むクライマックスもそれなりに良く出来ていると言えば出来ています。そこら辺は少し「シックス・センス」っぽいです。
そう考えるとクオリティ自体はなかなか高い心霊ホラー映画だったかなとも思えるのですが、
面白いかどうかと言われれば全然面白くは無かった。
娯楽性が薄すぎます。
まず主人公マイルズに共感できないから感情移入も出来ないしコイツがどうなろうと別に何とも思えない時点で娯楽映画としては失敗しているとしか言えません。
ホラー映画は人を怖がらせるためのものですから、
楽しませようと思って作られていないものもあるわけです。多分。
が、そんな映画が怖くも無かったら後には大して何も残らない。
ということで、本作もまた「暇潰し程度にはならなくもないB級ホラー」という感想でした。