死者の蘇りをテーマにした、2015年のホラー映画です。
「愛する人を生き返らせてみたら、大変なことになってしまった」
という感じの内容なので、
ホラー好きとしてはどうしてもスティーヴン・キングの「ペット・セマタリー」
と比較してしまいます。
実際、何となくあれの劣化コピー的な話であることは否めません。
しかし、あっちは純オカルトなホラーなのに対し、こちらは一応科学的なアプローチで
死者の蘇生を試みているのでSF的な味わいが無いこともなく、その辺の差異を楽しむべきかなと思いました。(前半だけ)
また、監督のデヴィット・ケルブという人は本作の前に
「二郎は鮨の夢を見る」などという寿司ドキュメンタリー映画を撮っている
実に変な経歴の持ち主です。
その特異な感性をどうホラーに生かしているのか?
これから本作を鑑賞する人はその辺にも注目すると良いと思います。
私が本作で突出して出来が良いと感じたのはオープニングクレジットです。
動物の内臓か何かだと思いますが、その表面を蠢くゼリー状の黒いトゲトゲがおぞましいのなんのって。
動きといい質感といい、べらぼうに気持ち悪くて大変素晴らしい。
何回見ても鳥肌が立ちまくりです。
こんなにも生理的嫌悪感を刺激する映像もなかなかないよ。
赤血球の密集画像を超えるキモさ。
キモイ、これはまじでキモイ。
だがそれがいい。
…でも、そこにレイ・ワイズの文字が出てきちゃうのがどうも。
この人本当にどこにでも何にでもマメに顔を出し過ぎじゃないですかね。別にいいけどさ。
で本編の方は、
死者を蘇らせる「ラザロ血清」なるものの研究に勤しむ主人公ゾーイとフランク。
ある日、ついに動物実験に成功。
生き返った犬は生前患っていた白内障が治っており、
ゾーイたち研究チームはラザロ血清による富と名声を確信するのですが…
生き返った犬が何かちょっと凶暴になっている!
お約束ですね。
「ペット・セマタリー」は確か蘇ったネコがゾンビっぽくなってましたが、
この犬はまあそこまでの変異でもない。
もうちょいアニマルパニック要素があっても良いのに。
そしてゾーイが実験中にうっかり感電死してしまい、
彼女を失いたくなかったフランクはもろもろのリスクを全部無視してラザロ血清を投与。
無事(?)人間でも蘇生に成功します。
しかしちょっと凶暴になった犬と同様にゾーイも何か様子がおかしい。
一体何が違うのか?それは脳の活動でした。
「人間は脳の10%しか使っていない。
しかしラザロ血清で蘇った者は100%使いこなせるのだ」
などと北斗神拳伝承者みたいな話になり、
サイコキネシスや読心術や予知?を使い始め、
なぜかゾーイはフランクたち研究チームのメンバーを殺害し始める…
のですが、
別に蘇った人間ならではという何かが見られるわけでもなく、
単なる心霊ホラーと同じような凡庸な展開になってしまいます。
科学の力で生き返ったはずなのに、
目が真っ黒になるという悪霊憑きみたいな表現、
悪夢世界に引きずり込むという心霊的威嚇、
サイコキネシスというポルターガイストそのものな現象での殺害。
これにはガッカリと言わざるを得ません。
死後の世界、魂の転移。
オカルトではなく科学とそれらを組み合わせることで
手垢のついた題材から何か新しい表現を見せてもらえるのか?
そういう期待をしていた人ほど落胆することでしょう。
「愛する人を再び死なせなければならない」
という悲壮感も全くないし、83分という尺が災いしてか
人物描写も浅すぎて誰が死んでもどうでも良い。
死ぬ順番に意外性を持たせてあるのは好印象ですが…
若干竜頭蛇尾な感じなのでガッカリはしましたが
結局のところ、無難な作りではあるので
暇つぶし程度には充分観られるクオリティのB級ホラーとは思います。
オープニングクレジットには一見の価値があるので
興味が湧いた人には一応観てみてほしいですね。