製作:2018年アメリカ
発売:プレシディオ
とある湖畔のトレーラー・キャンプ場へやってきた平凡な4人家族。反抗期を迎えた娘、大学入学を控えた息子。仲睦まじい…とはいかないが、それなりに休暇を満喫しようとしていた。
そこに、仮面の殺人鬼たちが理由も無く襲ってくる。
あの傑作サメ映画「海底47m」のヨハネス・ロバーツ監督最新作ということで、かなり期待して待っていたホラー映画。
観終わってから知ったのですが、これ「ストレンジャーズ 戦慄の訪問者(09年)」という作品の続編だったんですね。観てねえや。しかし、特に続き物っぽい要素は何もないような気がします。ストーリーはあってないようなものだし、殺人鬼もマイケル・マイヤーズの劣化コピーのような、至極オーソドックスかつオールドなスタイルなのでシリーズ物にするほどの個性がないのです。
作りは丁寧なので安心して楽しめるレベルではありますが、あまりにも教科書的。何かこの作品ならではというパンチが欲しかった。「海底47m」があれだけ素晴らしかったのに次作でこんなありきたりなものを出されてはヨハネス・ロバーツ監督の作家性に疑問を抱いてしまいます。そういや「ストレージ24」という凡作も撮ってましたし、「海底47m」が例外だっただけで本来職人気質な監督なのかもしれません。確実にバント成功させますよ的な。
「どこにでもいそうな4人家族が、無人のキャンプ場で殺人鬼グループに襲われる」という極めてシンプルな話を85分という丁度良い尺に収めてあるわけですが、最初の30分は何もなく最近の映画としてはかなりスローな導入と言えます。高校生の娘がちょっと反抗期でグレ気味というだけで別段これといった人間ドラマもなく。この一家には死んでほしくないなーとも思えないし、逆に死んでほしいほどムカツクわけでもない。これはいけない。
この点を解決するためには、一家揃って鑑賞するのが良いのではないでしょうか。作中の一家と同じような家族構成であればそれぞれの役割を投影しながら鑑賞することが出来るので、より盛り上がれることでしょう。どちらかと言えば胸糞悪いホームインベージョン系のバイオレンスホラーでありながら、ある意味ファミリー向けでもあるというわけです。大したグロもエロもありませんし。
それが出来ない人は、殺人鬼の個性に着目する必要があります。と言っても先に述べた通りマスクを被り無言で静かに歩み寄って来る、マイケル・マイヤーズの劣化コピー的なキャラクターでしかありませんが、「多少セリフがある」「素顔を晒す」という点においてマイケルよりはだいぶ人間寄りです。まあマイケルも1作目では素顔を晒してるんですが。本作のメインテーマ曲がどことなくジョン・カーペンター風味ということもあり、やはり「ハロウィン」を意識しているようなフシはあります。
リーダーの男殺人鬼はともかく、脇の女殺人鬼2人はまだ見るべきポイントがなくもない。例えばそれまで幽霊のように佇むだけだった女殺人鬼が、カメラを引いた視点の時にいきなり全力ダッシュしてくるシーンは全体的に地味な本作の中で唯一輝いていた恐怖シーンでした。
そういう工夫があといくつかでもあれば…と惜しい気持ちにさせてくれる凡作です。暇つぶしくらいのつもりで観ればそれなりの満足感は与えてくれるかと思います。