製作:2018年イギリス
発売:ソニー・ピクチャーズエンタテイメント
小惑星での資源採掘中に爆発事故が発生。緊急避難船カペラ2で一人目を覚ましたホロウェイは、制御不能に陥ったカペラ2が太陽に向かって飛んでいることを知る。救助船の船長ロバーツと交信は出来たが、窓にヒビが入り、急速に酸素が減少し、彼に残された時間はわずか70分しかなかった。
たった一人宇宙で遭難してしまい次から次へと発生するトラブルを何とか乗り切ろうとする「ゼロ・グラビティ」系B級SF。あれと違うのは太陽へ向かって飛んでいるということで、より差し迫った危機を抱えたうえでのサバイバル劇のはずなんですが、そのわりにいまいち緊張感に欠ける展開ばかりで眠たい映画になってしまっていると感じました。
なんでそうなったかと言うと、やっぱり主人公ホロウェイがそもそも大して生き延びたいと思っていない点が問題だと思います。
彼は「最期に家族と通信さえ出来れば思い残すことはない」「君たちが危険を冒して救助に来る必要はない」などと序盤から既に生存を諦めているセリフを連発します。生き残ることではなく、家族に対する心残りを解消することが目的です。地上と通信できるようになるまで生きていられれば良いんだという投げやりなスタンス。
本作はホロウェイ以外の人物は誰も画面に映らない完全なる一人芝居なので(通信相手はいるが)、彼が生への執着を感じさせてくれないとなるとサバイバル劇として成立しているかどうかすら微妙です。
こういうのは「死にたくない!!」と必死になって初めてスリルが生まれるんです。宇宙船の窓にヒビが入ったらそれをかっこつけてめんどくさそうな目で見てはいけません。むしろ顔面蒼白になって小便を漏らしながら神に縋りつくぐらいでちょうどいいのです。必死にあがく様を描いてこそ、助かった時の感動または死んだ時の絶望がより輝きを増すものです。あんな極限状況でも生存本能に火が付かないようなスカした生ける屍を観ていてもあまり応援する気が起きません。
しかしホロウェイに生きる気がなくても、通信相手である救助船船長のロバーツは何が何でも助けたいという意思を持ってホロウェイを励まし続けます。そこで感動的な人間ドラマが生まれたりすればまだ見どころはあったんですが、むしろ堂々巡りするような無駄な会話だらけですごくイライラしてきます。これは明らかな引き伸ばし。
しかも危険を冒してまで救助したい理由が、「全員死なれると会社の都合が悪いから」っていう感動もくそもないやつ。いや、一応ロバーツはそれ抜きで本心からホロウェイを助けたいと思っていたようですが、ならそんな身も蓋もない裏事情は黙っとけと。 つーかむしろ映画的には「見捨てろ」という指示が出てるのに逆らって救助に向かってる話にするのが普通なんじゃないかと思うんですが。
あと気になったのは劇伴ですね。曲そのものは悪くないと思うんですが、やけに仰々しくドラマチックで壮大なオーケストラで、一体何をそんなに盛り上げようとしてるのか分からず戸惑いを覚えます。
ということで、太陽に向かって飛んでいく宇宙SFが観たいのであれば、同じイギリス産の「サンシャイン2057」の方がおすすめです。