「スリープレス」というタイトルでダリオ・アルジェント監督の同名映画の方を連想してしまう人はどれくらいいるんでしょうか?
私はアルジェント監督+ゴブリンが大好物ですが、どうもあっちの「スリープレス」はかなりマイナーな存在で終わってしまった感がありますね。まあクソつまらなかったんで当然かもしれませんが、音楽は素晴らしかったと今でも思ってます。
それはともかく、本作は「金縛り」をテーマにしたホラー映画でした。
私も相当な金縛り体質で、おそらく過去100回は金縛りになったことがあります。
昼寝すると特になりやすいんですよ。実態は睡眠麻痺というもののようで、別に心霊現象でも何でもありません。しかし、慣れないうちは相当怖い思いをしました。
老婆の生首が浮いていたり、何者かに胸を強く押されたり、手や足を触られたり、歯がグラグラしてきて抜けちゃったり。
本作でも歯が抜ける描写があり、金縛りで見るイメージは案外万国共通なのかなと思いました。
まあ目を覚ましてから思えばどれもこれも幻覚なんですけどね。
金縛りになっている間は現実としか思えないのです。
しかし、そんな金縛りも回数を多くこなしてくると、もう恐怖感はどっか行っちゃって
「またかよ!うぜーな!」と悪態をつくようになって来たりします。
恐ろしい幻覚が見えそうになってもむしろ積極的に見たり触ったりしようと努力してみたり。
体が思い通りに動かないんでそれもできなくてイライラする一方なんですが。
本作はその金縛りを突き詰めたようなホラー映画ですが、
一応スーパーナチュラルな存在としての「夢魔」が絡んでくる内容でした。
主人公のアリスは睡眠障害治療施設で働く医者で、そこにやって来たモーガン家の4人に夢魔がとりついており…というストーリーです。
はじめは、モーガン家4人全員が夢遊病にかかっているのではないかという観点で話が進むのですが、長男の症状が異常にひどく、ベッドが浮くほど揺れていることから超常現象の存在が疑われます。
…えらく地味です。「寝たら最期」とか煽るわりに何回寝ても誰も死なんし。
そしてたまたま「夢魔」のことを熟知していた病院の清掃員が、「妖婆」とだけ書かれたものすごく意味深なメモをアリスに手渡し、「あの家族に近づくな」とだけ言い残して退職。
思わせぶりにもほどがあります。
そんなことされたら、いくら退職しても住所を調べて話を聞きに行くに決まってますが、藁にも縋る思いのアリスとモーガン父に対してあくまで「帰れ!」と突っぱねます。じゃあ何で中途半端な情報をくれたのかと。「妖婆」でググっても何も分からんし。どうでもいいけどこの映画ググるシーンが多いです。
まあ何やかんやで結局清掃員とその祖父も夢魔退治に付き合ってくれるのですが、
どうもその夢魔との戦いが現実ではなく、悪夢の中で繰り広げられているのか、抽象的でいまいち要領を得ずどうすりゃいいのか分かりにくい。
しかもそれがクライマックスなので困ってしまいます。
満を持して現れた夢魔も幼稚臭いビジュアル。子供が見ている悪夢だから?
オチに至ってはアリスが過去のトラウマを克服してハッピーエンドかと思いきや。
まあこの手の映画はそういうものかもしれませんがね。心霊現象は相手を倒せないから困ります。まじない的な手法でやっつけようにも、そんな話全然出てきませんでしたし。
映像的なクオリティは結構高いのでB級臭さは感じないのですが、
あんまりおもしろい映画とは言えませんね。
全体的に静かなトーンで演出されているというのもあり、眠たくなってしまう人も多いでしょう。
眠ってはいけない、眠ったら怖いよ!というテーマとタイトルなのに観客を眠りに誘うというある意味高度な嫌がらせ。
しかし特に怖くはないですし薄味すぎて印象にも残りません。
なにしろ私が本作で一番印象に残ってしまったのが、
モーガン家母の来ていたシャツに「WEST VIRGINIA」とデカデカと書かれていたことですからね。
アメリカ人もこんなしょうもない柄の服着るんだ…
いや、着るにしてもこんなシリアスホラー映画であえて着せる意味とは何なのか。
日本人で言ったら「山梨県」とか書いてあるようなもののはず。
…まあ、そんなことしか心に残らない程度の映画でした。