「ノー・エスケープ 自由への国境」
…とは別物のB級映画です。
同じ邦題つけるのはやめた方が良いと思うんですけど。
パチモンって感じでもないし、ただ紛らわしいだけ。
しかも別に逃亡不可能というほどのフィールドでもないです。
しかし原題は「Quarries」で「採石場」という意味。恐ろしく淡泊なタイトルですね。
邦題の方が普通にマシなぐらい素っ気ない。
内容も期待を裏切らず、かなり地味です。
これは確かに刺激的なタイトルなど付けようがないかもしれない…。
殺るか ヤラれるか――
キャンプに訪れた女性6人組。しかし、その地は決して踏み込んではいけないエリアだった。突如、何者かに襲撃され不可解な状況にパニックに陥った彼女達に次々と襲い掛かるハンターたち。不条理にも彼らの"人狩り"ターゲットとなった彼女達は逃げようとするが、そこは隠れるのももままならない険しい山岳地帯。極限の恐怖と仲間を殺された怒りが彼女達の本能を目覚めさせ、遂に決死の反撃を試みるが・・・
(アメイジングD.C.HPより)
ストーリー的には上記の公式解説文がほぼ全てです。薄口あっさり味。
補足するならば、キャンプに訪れた女性6人組というのが、友人同士というわけではなく
心に問題を抱えた人を立ち直らせるための、自然と触れ合うサバイバルキャンプに参加した人たちであるということぐらいですね。あと引率者がいるので実は計7名でした。
主人公は恋人のDV行為に苦しんでいるキャサリンという女性です。
そんな彼女らが、山奥に入ったらそこは武装した殺人サイコ野郎集団が闊歩する危険な領域だった…
という話ではあるんですが、本作はこのサイコ野郎共が一体何なのか、全く掘り下げる気がありません。
↑侵入者を遊び半分のように殺害するサイコ集団の説明らしきものは、オープニングクレジット時に出てくるこのシーンだけ。つまり彼らは州兵ってことになるわけですか…それだけでアメリカ人は納得するのか? アメリカはこんな無法地帯の存在が新聞に出ていながら放置する国なのか?
まあ、本作は心に問題を抱えた女性たちがサイコ野郎との戦いを通じて、それを乗り越える物語なのだろう…だから敵の設定はテキトーでもいいんだろう…
などと考えて鑑賞したわけですが、案外そういうヒューマンドラマ的会話もロクにありません。
女性側のキャラクターの掘り下げが大してないのでそこまで読み取れないのです。
しいて言うならば、キャサリンはDVに悩まされているのですが、本作の後半では彼女がサイコ野郎共を暴力の嵐でぶっ倒しまくるのである意味この事件を通じて悩みを克服したのだと言えるかもしれません。
というわけで、あまり余計なことは考えずに純粋に、プロレス的に殺し合いを眺めて楽しむタイプの娯楽映画と捉えて観るのが正解でした。
↑サイコ野郎のリーダー。
侵入者は面白半分に殺すくせに、いざ仲間を殺されると心からその死を悼みます。
サイコ野郎にしてはちょっと面白いキャラクター性を持っているかと思いましたが、
これ以上は特に何もなかったので結局彼らの行動原理も思想も分からずじまい。もったいない。
襲われる女性チームの方は、はじめは不意打ちを喰らって数人がなすすべもなく死に、
悲鳴を上げて逃げ惑う様は無力感に満ちています。
そりゃあ、銃やナイフで武装した屈強な元州兵チームの前には、丸腰の女性6人では立ち向かいようがありません。
…しかしそうはいかなくなってくるところがこういう映画の楽しいところですね。
「始末してやる」…
かっこいいなあ…
彼女は今後もう黙ってDVを受けることもないでしょう。
まあ、これ以上語ることもありませんね。
無力な女性たちがサイコ野郎に追われるスリルを堪能したあとは
本能むき出しに凶暴化した女性たちによるバイオレンスアクションで存分に爽快感を味わってください。