おお、これはなんと素晴らしいモンスター映画だろうか!
…と思って観てたんですがラストでぶち壊されました。
せっかくスッキリいい感じでまとまってたのに!
なんでそんないらんことやらかすのよ…。
「火星の土から見つかった細胞を培養したら、凶暴な人喰いエイリアン(カルビンという名)に成長してしまって国際宇宙ステーション大パニック」
というシンプル極まりないストーリーからはB級の匂いしかしません。
が、本作はジェイク・ギレンホール氏やライアン・レイノルズ氏、真田広之氏など映画ファンなら誰でも知ってるような著名な俳優が大勢出ているし、CGのクオリティも高いし、
何より最初から最後まで無重力空間が舞台なので、撮影の手間も莫大。
モンスター映画としては破格の製作資金が費やされているはずです。
というか完全にA級ムービーです。
少なくとも閉鎖された宇宙船内でエイリアンとのバトルを描いた映画において、
これほど豪華な映像を実現したものを他に知りません。
冒頭の長回し、砕け散ったデブリの飛び散り方、大気圏突入シーンなど「ゼロ・グラビティ」を意識しているようなシーンが多々出てきます。人喰いモンスター映画で使うにはあまりにも贅沢すぎる背景です。
劇場で観ておくべきだったと後悔しました。
ストーリーは前述のように極々シンプルなものですが、脚本の出来もまあまあよろしいかと思います。真田広之氏が序盤であまりにも分かり易すぎる死亡フラグを立てるとか、ピンチに陥った時にわざわざ改めて死亡フラグを立て直すとか、いつの間にか足に喰らいついてたカルビン等ちょっといただけない部分もありますが。
それでも、最後に自己犠牲心を発揮してカルビンの処分に身を捧げる宇宙飛行士の人選、その伏線を序盤に無理なく仕込んでいるあたりはB級以下のモンパニ映画ではまず見られない細やかな技術だと思います。
培養した火星由来の細胞がちょっとしたミスから脱走して成長してしまうわけですが、
見た目は例によってタコみたいなヌメヌメした触手ウネウネなやつで実にありがちな造形です。ちょっとはひねれよと言いたくなりますね。
かろうじてオリジナリティがあるところといえば、半透明のビラビラが付いててちょっとだけ可愛らしく見えるところでしょうか。
コイツが存外強力で、色々頑張っても駆除する方法がどうしても見つからない。
そして地球にこんな奴を絶対に連れて行くわけにはいかない。
ということで、脱出艇で宇宙の果てに飛ばすしかない、という事態に陥ります。
この時点で生き残っているのはデビッド、ミランダの2名のみで脱出艇も2つ。
デビッドの方がカルビンと共に地球から離れ、ミランダの方が地球に帰還することになります。そこまでは良いのです。が…。
「デビッド+カルビン」と「ミランダ」の乗った脱出艇がそれぞれ発射され、
片方は大気圏突入、片方は宇宙の果てへ。
そして片方は無事に着水。
近くでボートに乗っていたアジア人がそれを発見し、
行ってみるとそこにはカルビンに喰われかけてるデビッドの姿が…!
開けるな!というデビッドの叫びも虚しく開けてしまうアジア人!これで地球滅亡か!?
一方ミランダは無駄に宇宙の果てへ飛ばされてしまっていた…
という超絶バッドエンドなわけです。
やってくれましたねえ…
これで衝撃のラストのつもりなら観客をバカにしすぎでしょう。
脱出艇射出の時、「これもしかして行き先逆になるんじゃねえだろうな、おい…」という不安は誰でもよぎるんじゃないでしょうか。本当にやるとは思いませんでしたが。
それより何より、着水した脱出艇にやって来て開けちゃうのが
見るからに貧困層であろう、汚らしい身なりのアジア人たちであるという描写に彼らの差別意識を垣間見た気がします。
どんなバカでもあんな状況見えたらすぐには開けませんよ普通。
脱出艇と言っても地球のどこに落ちるか分からんし変な奴のいるところだったら困るよなあ…という観客の嫌な想像をこういった形で出してくるとは…。
真田広之でかっこいいアジア人を描いたからもういいだろ?という感じがします。
…まあ、別にいいっちゃいいんですがね。どうせ地球に着いちゃった以上取り返しはつかないわけだし。
それを差し引いても、安易すぎるバッドエンドにはガッカリです。
バッドエンドそのものを否定する気は全くありませんが、
「それまでの努力は全部無駄でした」エンドはダメですね。嫌いです。
力及ばなかったとか、選択を間違えたとか、自業自得だったとかならいいけど、観客の予想を裏切るためだけに大した理由付けもなくやっちゃうのは本当に安易としか言えません。
いくら有名俳優が出ていても、映像に手間と金をかけていても、結局こんなオチを見せられるくらいなら安いサメ映画でも観ていた方がマシですね。
とはいえそれ以外は良い出来なので結末がダメでも過程が面白ければ良いよ、という人なら大いに楽しめるでしょう。