カッターヘッド　真夜中の切断魔　感想

製作：2018年アメリカ
発売：ニューセレクト

幼い娘マディとケイラを連れて湖畔の別荘にやって来たローラ。しかし、マディが森の中でケーキを拾い食いして嘔吐してしまう。そのゲロの中には「ＨＥＬＬＯ」と書かれた紙切れがあった。

この前観た「グラウンド・デス」というデンマーク映画が「Cutterhead」という原題でして、ちょっと調べてみたところトンネル掘削工事の時に使うシールドマシンの先端部についてる回転する面板のことをカッターヘッドというそうです。

しかし本作にはそんなものは特に関係ありません。では「ヘルレイザー」のピンヘッドのように頭からカッターが生えまくってる殺人鬼でも出てくるのかと思いきや、珍しくジャケの通り包帯を巻いたような何の変哲もないマスクの殺人鬼が出てくるのみ。真夜中の切断魔とか言うわりに切断とか一回もしてくれないし朝でも普通に暴れます。

それではせめて凶器はカッターなのかと思いきや、ごくフツーに手斧。公式紹介文でも

「捕まったら、斧でお仕置きだよ―――」

カッター使え！

と言ってもデタラメ極まりない邦題なのはあくまでニューセレクト（アルバトロス）の仕業なので文句を言っても仕方がありません。妙に具体的なわりに何一つ合っていない邦題を除けば、マジメに作られておりそこそこよく出来たスラッシャーホラーと言えます。

舞台はシーズンオフでほぼ無人の湖畔の別荘…もうこの手のホラーでは何百万回観たのか分からない設定です。アメリカでは休日に湖畔の別荘へ行くのがそこまで一般的なんでしょうか。殺人鬼がジェイソンと大して変わらないビジュアルということもあり、正直「真・１３日の金曜日」という邦題でもイケたのではないかとすら思いますが、襲われるのがチャラい若者グループではなく幼い娘２人を連れた母親というのが本作をシリアスにしています。

小学校低学年くらいかなという年頃の娘たちですが、森の真っただ中にセッティングされていたお茶会のテーブルに喜んで喰らいついてしまうくだりがあります。そんな手の込んだことをする殺人鬼も相当アレですが、見るからに怪しいケーキを喰ってしまう娘も相当アレです。あんな森の中じゃすぐに虫がたかるだろという気もします。まあ、そのケーキに軽い毒とメッセージカードが仕込んでありゲボの中に怪しいメッセージが！という脅かし方をやりたかったのは分かりますしなかなかユニークだなあなどと感心はしました。どうでもいいけど「ＨＥＬＬＯ」じゃない方のケーキを食ってたら台無しですよね。

ちなみにかなりリアルなゲボを何度かジックリと見せられるので苦手な人は食事中に見ない方がいいでしょう。グロは全く大したことないんですけどね。切断とかしませんしね。

幼い娘２人という巨大なハンデを背負って殺人鬼と対決しなければならない母親、ということで緊迫感はかなりあります。殺されてもいいメンバーがいない。いや、父親はどうしたんだ？というと仕事で遅れて後から参戦するという話です。しかしこの登場人物構成では明らかにただのいけにえ役でしかないのが丸分かりすぎた。「パパが来れば助かる！」と信じて奮闘する母娘の前にドスンと落ちてくる父親の無残な死体。絶望と恐怖を煽るにはこれだよねと言いたいところですが、既定路線すぎて何ともかんとも。全体的に丁寧で悪くはないんですけどね。

ということで、小学生以下のお子さんをお持ちの女性の方であれば、そこそこ楽しめるのではないかと思うのでおすすめです。