製作:2017年アメリカ
発売:エクリプス
ケンタッキー州の田舎町へ遊びに来ていた4人の若者。地元のガソスタ店員の勧めで、タロン・フォールズというホラー系アトラクションへ行くことに。そこは入場まで3時間待ちという超人気施設だったが、中ではよそ者を捕らえて本当に拷問殺人を見世物にしているのだった。
エクリプスから出てるってことでどうせC級だろとスルーしかけていたんですが、これは意外と出来が良くて面白かったです。「残酷ホラーの金字塔『ホステル』を彷彿とさせる」という宣伝文句もあながち嘘ではないですね。いや、あくまで「彷彿とさせる」というだけですが。
ストーリーは単純極まりないし人物描写はほぼ皆無で74分という短い尺ですがこういう映画は残酷シーンさえしっかりしとけばそれなりに満足感は得られるものです。
しかし話自体はシンプルとはいえ、「ホラーアトラクションかと思って楽しんでいたら実は本物の殺人が見世物にされていた」「さらにそれをスナッフビデオとして売りさばいていた」という悪趣味の入れ子みたいな構造は残虐さを求めるホラー映画ファンに対する皮肉が効いてるようで感心しました。
まあそれはそれとして、この手のホラー映画でものすごくありがちなんですが、冒頭で結末のネタバレをするのはどうしてなんでしょうかね。最後に生き残る人物をあらかじめ知らされてしまうとつまり他のメンバーは死んでしまうと事前に分かるわけで、尺の大半を占めている逃亡劇から緊張感が失せてしまうと思うんですが…
↑やけにリアルなホラーアトラクションだな~と思ったら本当に拷問していた…ということに、自分がされる番になって気付く。なので、このシーンも本物とは思ってないお客さんが近くで観てます。
にしても「助けてくれ!」とばかり叫んでないで、「これは見世物じゃない!警察を呼んでくれ!」みたいに訴えればまだチャンスがないでもない気が。
で、普通こんな具合に拘束され、サイコ野郎が舌なめずりするかの如くカチャカチャと血に濡れた刃物をイジリ出しても、その辺のホラー映画だと結局未遂に終わるか、やっても直接描写はほとんどなかったりするんですよね。ホラーとはいえ観客のストレスが大きすぎるからかなと勝手に想像してるんですが、そこら辺のタブー(?)を破ったのが「ホステル」だったわけです。
本作もストレートにその境界線を超えてきてるので、そりゃあ「ホステル」を彷彿とさせると言っても嘘ではない。さすがにあれほどではないけど、本作もかなり頑張ってます。本当のところ私は残酷なのが結構苦手なので、ここは女子小学生のように恐れおののきながら指の隙間からチラ見することしか出来ませんでした。案外ザクザク切り刻むような本当にイヤなことはしてないじゃんと言えなくもないですが、そこまでの残虐性を求めてしまう人はこの悪趣味の入れ子構造に気付いた時、多少なりとも内省することになるでしょう。
ただホステルが名作となったのは観客のストレスコントロールがしっかりしていたからで、前半で苦痛を与えておいても後半はそれをスッキリ解消させる方向に持って行ったことが大きいと思うんですが、本作は特にそういう気遣いはありません。色んな意味でイヤ~な気分のまま終わらせられます。それがネガティブサプライズ的なバッドエンドであればいいんですが、全く持って予想通りなのは少しもったいないところです。
あまり声を大にしてオススメとは言えませんが、B級ホラー好きなら楽しめるんじゃないでしょうか。