製作:2016年アメリカ
発売:トランスワールドアソシエイツ
冷酷で怪物のような暴力男だった過去を隠し、今は妻と穏やかに生きている男フランク。
しかしある時、昔の悪党仲間ミッキーと再会してしまう。そこで目撃したミッキーの悪事を告発しようとしたフランクだったが、それを知ったミッキーはフランクの妻を誘拐してしまい…。
ジャケットによれば世界各地で10個もの映画賞を受賞しているらしいバイオレンス・サスペンス映画(?)です。賞の数もそうですが、紹介文を読むと異常な狂気と暴力の滾る刺激的な映画というような印象を受けます。
しかしまあ…別にそれほどでもない。
こういうのをフィルムノワールと言うのか、ハードボイルドというのかよく分かりませんが、かつて大きな過ちを犯してそれを悔いているらしい男フランクの、平穏だがどこか危なっかしい日常が静かに淡々と何の説明も無く描かれております。フランクは凄まじく凶暴であるという本性を持っているがそれを必死に抑え、正気を保つために酒を断ち、父親には謝罪と懺悔の日々。しかし、妻は何も知らない。
そういう男の内面に想いを馳せながら楽しむのが正しい鑑賞方法なのでしょうが、
そんなしっとりした映画には興味の無い私としては、
「フランクは一体どれだけ凶暴なんだろう」
ということだけが気になるところです。
そして後半になってやっと元相棒のミッキーに妻が誘拐されます。
愛する妻を奪われ、半狂乱で父親に助けを求めるが拒否られ、
怒り心頭のフランクは更生の誓いを破り、仕返しとばかりにミッキーの娘を誘拐。
おっここからの人質交換がバイオレンス全開のクライマックスにつながるんだな!?
と色めき立ちましたが、
なぜかフランクはミッキーの娘と酒を飲みながらイチャイチャし始めます。
しかも長い。いや、超長いです。
本作の尺は1時間42分なのですが、
娘とイチャイチャしている間に、1時間20分を過ぎてきます。
娘は逃げるために色仕掛けでもしてるのかなと思ったら、普通にフランクが好きだったみたいです。でもやることやったらフランクは急に冷たくなったりします。
愛する妻がいるくせに何やってんの?
いつになったらバイオレンスが見られるんだ?
と私もさすがにイライラしてきました。
もしかしてバイオレンスってフランクが女性に怒鳴ったり酷い言葉を浴びせることを指して言ってるんじゃないだろうね? と不安になってきますが、一応ラスト10分で何とかそれなりに暴力的な絵面を展開してはくれました。
「それだけ??」
という感じではありましたが。
こういう「説明しない映画」って、多分自分がどこか行間を読み取れてないんだろうな…
と不安にはなるんですが、それでも突っ込みたいところは多々あります。
ミッキーはフランクの本性を知ってるはずなのに、
なんでわざわざそれを引き出すようなマネを、何の対策も無くやってしまったのか…。
しかも、最後の最後にフランクを撃たずにあんなどうでもいい奴を撃ってしまったのか…とか、
フランクは酒を飲んだらヤバイとさんざん煽ってたから、飲み出してからはビクビクしながら観てたのに、結局別に何もなくイチャイチャしてたな…とか。
そんな感じで、正直イマイチな作品に感じました。トム・サイズモアが出てるけどインディーズ映画なのかな。予算が無くて暴力シーンが撮れなかったのなら仕方ない。
ただ、フランクの最後の言葉
「問題を乗り越えられるか、試してみたい」
は非常にゾクッとする素晴らしいセリフでした。
そこに至るまでにもっともっと過激でバイオレンスなシーンを見せてくれていたら、より効果的に響いたと思うんですけど。そこはもったいなかったですね。