ある好事家の記録 主に変な映画の感想

変わった映画を見つけたらそれを語りたいブログ。  主にモンスターパニック映画、特にサメ映画の感想が多め

ホワイト・ゴッド 少女と犬の狂詩曲 感想(ネタバレあり)



製作:2014年ハンガリー・ドイツ・スウェーデン
発売:ミッドシップ



雑種犬に重税を課すという法律が施行された国でのこと。母親の長期出張で、別居中の父に預けられることになった少女リリと雑種犬のハーゲン。しかしハーゲンはリリの父親に疎まれ、むりやり捨てられてしまう。彼は野良犬生活ののち悪人に捕まり、裏世界での賭け闘犬など過酷な経験を経て保健所で殺処分されかけるが、脱走する。そして人類への怒りに燃えるハーゲンは数百頭の雑種犬を引き連れ一斉蜂起したのであった。






人間に虐げられた雑種犬の群れが、人類に反旗を翻す。
一応アニマルパニック映画なのかなと思って鑑賞しましたが、これはアニマルパニック成分15%ぐらいでしたね。残りの85%は社会風刺系の芸術映画かな…。過剰なまでに虐げられる雑種犬たち、あざといぐらい哀れさ全開で引き離されるリリとハーゲンはたぶん貧困移民の暗喩でしょうし、その辺を深読みして楽しむ映画なんだと思います。私のように「犬が人を襲う」エンタメ要素を期待して鑑賞してはいけませんね。途中で一時停止して寝ちゃうぐらいダルかった。119分たっぷりあるし。






本作は設定やストーリーというものが全く重要視されていない、と思えるほどお話は説明なしでいい加減な感じがします。「雑種犬に重税を課す法律が施行された世界」での話ですが、動物愛護の声が大きい現代でそんな法律が突然施行されるというIFがそもそも受け入れにくくて映画に没入できない。そんな法律が出来た後にリリがハーゲンを飼い始めたとは思えないので、雑種犬の飼い主たちによる反対の声を押し切って施行されたということになります。そうなるからにはよほどの理由があるはずですが別に何もない。雑種犬とそうでない犬との待遇の差はどうして生まれたのか。わからん。まあ、よほどの雑種犬嫌いがもしもボックスで作っちゃった世界ということにします。



では本作の見どころは何なのかと言えば、主人公犬ハーゲンの演技です。これは凄い。凄すぎる。リリと固い絆で結ばれていた頃から、徐々に人間への信頼を失っていき最終的には人間を憎むようになるという複雑な感情が余すところなく表現されていました。私がが勝手にそう読み取っているだけとは思えない確かな演技力。腐肉を食べるかどうか悩むシーンなど細かいところまでいちいち凄い。一体どうやっているのか。本筋よりもそっちの方が気になって仕方がない。犬なのに人間並みの知能があるようにすら見えてきます。もしくはスタッフが犬語で指示しているのか。しかしそんなはずはないので、実際は無理やり色んなことをやらされて何度もリテイクを食らっているのかと思うと気の毒でもあり、素直に感心して良いものかどうか複雑な気分になってきます。





↑ある日突然人間の都合で捨てられ、野良犬になって保健所職員に追われる生活が続いたと思ったら今度は悪人に捕まって闘犬の訓練を受ける日々。そこには犬の自由意思は一切存在せずただただ搾取されるだけの奴隷的生活。本作は犬の演技が凄いということで、犬好きな人が楽しめる映画かと思いきや、ここら辺の描写がかなり虐待に近いせいで逆に犬好きほど辛い内容かもしれません。ムチでビシバシ叩くシーンはさすがに直接的には映りませんがそれでも痛々しい。
極めつけは闘犬の試合の方で、実際に犬同士で喧嘩して血まみれになっているように見えました。まさか闘ってるフリなど出来ないだろうし…。負けた方は本当に死にかけてるんじゃないの?と心配になります。







↑そしてラスト30分になってようやく虐げられし雑種犬どもが一斉蜂起。
クソのような人間共にキバを剥いてくれます。と言っても噛みつくシーンなどごくわずかしかないので特にスリリングでも何でもない。「すごい統率とれてるなあ」ということに感心するのみです。噛み殺された肉屋さんの死体が微グロというぐらいで、それを見たリリはゲボっちゃいますがこちらとしては綺麗すぎる死体に不満しかない。いやグロが観たいというわけではなく、空腹の犬の群れに襲われたんだから少しくらい喰われてる方が自然ではないのかと。あれはあくまで復讐だと言うのか。それにしてもカタルシスが足りなすぎる。
そして当局によって次々と射殺される犬の姿が哀れすぎて愛犬家には見せにくい。



ラストは「美しい芸術を介せば異種同士でも分かり合える」という感じのちょっと前向きな締めではあるし、頑なだったリリの父が理解を示して伏せる姿も確かに感動的ではあるのですが、それでも「結局殺処分は避けられないよなあ…」というやるせなさがほどよくブレンドされ結局プラマイゼロな後味。
欧州の社会問題に関する暗喩等々を読み解きたいと思えるような人ならともかく、そうでない人間にとってはひたすら犬の演技力に感心するだけのダルい映画です。犬が酷い目に遭うシーンがあってもガマンできるという辛抱強い犬好きの方にはオススメです。



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岩石入道
性別:
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自己紹介:
B級~Z級映画が主食。ホラー、モンスターパニック系が特に好き。目についたサメ映画全てチェックしたい
krgm200@gmail.com

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