ある好事家の記録 主に変な映画の感想

変わった映画を見つけたらそれを語りたいブログ。  主にモンスターパニック映画、特にサメ映画の感想が多め

エクストーション 家族の値段 感想(ネタバレあり)




無人島で遭難した家族の前に突然現れた男。救助と引き換えに、強請られた金額は100万ドル!
家族の生死を賭けた究極の選択が迫られる不条理サバイバル&アクション!! あなたの家族の値段は、いくらですか?
(インターフィルムHPより)



医師のケビンが妻子を連れてカリブのリゾート地にバカンスへ行き、
怪しい業者に借りたボートがポンコツだったせいで無人島に遭難してしまう。
たまたま見つけてくれた漁師が助けてくれると思いきや、
救助料として100万ドルを前払い要求してきて…

という話です。これでもほんの序盤の展開なので、
結構盛り沢山なサスペンス(・アクション)映画となっております。

「家族の値段」とかサブタイがつけられていたので、
その海賊みたいな漁師と主人公ケビンによる駆け引きがメインなのであろう
と想像していたらその辺は序盤であっさり流されており、
中盤からは良い意味でも悪い意味でも予測しにくい展開を見せてくれました。




本作の主人公ケビンは、基本的には妻子を愛する善良な一市民として描かれますが、
どうも金で物事を解決しようとするシーンが多いんですよね。
舞台となるリゾート地がどの国なのかは分かりませんが、
地元の人間はかなり貧しいとみえ、ケビンはことあるごとに彼らにチップをばらまいていいように使おうとします。


無人島に遭難し、たまたまやってきた漁師2人に100万ドルを要求されたケビンは「4万ドルしかない」と食い下がり、医者なのにそれしかないわけねーだろと突っぱねられます。
ケビンは一度のバカンスで1万ドル使えるのに、漁師の年収はそれ以下でしかない…
極限状況で現れるこの貧富の差にはちょっと考えさせられるものがありますが、
それにしても100万はあまりにご無体。
どうにか19万ドルをねん出して納得していただいたはいいものの、結局妻子は無人島に放置されたままで漁師に逃げられてしまいます。


この映画はここからが本番であり、ケビンが地元の警察とアメリカ大使館を巻き込んで妻子を救出するためになりふり構わず奔走するという、
例えるならあまりスマートではない「96時間」のような暴走親父を描いたアクション寄りの映画となります。


地元警察や大使館はその漁師たちを探すよりも妻子の捜索に力を入れるべきだと主張しますが、
カリブ海域には数千もの島があり探すのには時間がかかりすぎる。
オレは自力であのクソ漁師を見つけ出す!とか細い手がかりからあの手この手で調査し、遂に発見したはいいがその主犯格の漁師にも妻子があり、子供の一人は重病を患っていた。
ここもまた実に考えさせられる場面です。
地元漁師はいくら必死に稼いでも年収1万ドル以下なのに、一方では観光に来たアメリカ人がそれ以上の金をばらまいて遊んでいる。
子供の治療に金がかかる、そしてこのアメリカ人は医者。
ケビンが家族を助けるためにやってることと、この漁師がやったことに一体どれほどの差があると言えるのか?


…みたいな感じで重たいテーマを盛り込んだシリアスな映画に仕立てることも出来たと思うんですが、そこはB級の悲しさなのか、それともあくまでケビンの家族愛を優先したいのか知りませんが、ここからは妙に雑な展開になっていきます。
ちなみに漁師の子供はアクシデントで死んでしまい、漁師も勢い余ったケビンに殺されてしまいます。歯がゆくてイライラするうえ胸糞悪い…。



そうなるともう残る手がかりは「主犯ではない方のもう一人の漁師」だけなのですが、
これがどう探しても見つからない。
それどころか殺人犯として警察に追われ、にっちもさっちも行かなくなったケビンはたまたまやってきたバスに乗って警察をやり過ごします。




もうダメだ、打つ手なし…とバスで泣きじゃくるケビン。
さすがに八方ふさがりすぎて、もうバッドエンド確定なのかな?
という気がしてくるシーンです。





ところが…







ふと見れば、奴がいた。













…。

おい、そりゃないだろ?

と突っ込まざるを得ない、ものすごい勢いで感情移入度が下がって来る超ご都合シーンです。
なんとなく乗ったバスにさあ…
たまたま犯人が乗り合わせていたってさあ…
火サスでもやらんでしょ?







しかも説得に応じてくれそうになったら
いきなりはねられるとかさあ…
もはやコントじゃねえか…




いくらなんでもテキトーすぎる。
むやみに波乱を起こしたり受け手の意表を突いたりしようとしてはいけないという悪い例ですね。
いや、これ以前にもそれなりに強引だったりテキトーだったりする場面は
あったんですが、娯楽映画なら目をつぶれる範囲内ではありました。
でもここは明確にそのラインを超えてきたというね。
映画でこのレベルの偶然が許されるのは事件の起こる切っ掛けの部分だけでしょう。




最終的に助けられたかどうか…まではネタバレしませんが、どちらにせよ
ケビンがそこに至るまでに犯罪行為を積み重ね過ぎていて
一体懲役何年喰らうのか?
それが気になってしょうがなかったですね。
ケビンは96時間のリーアムニーソンと違って何のコネもなさそうな男でしたからね。
まあ、例え罪が軽くなったとしても、漁師の子供を死なせたという罪悪感は残ってしまうし、今後のケビン一家が幸せになれるかっていうと難しいですね。後味すっきりしません。



ということで、上記のご都合展開さえなければ…あくまでケビンの努力によって漁師を見つけ出していれば…「そこそこ暇つぶしにはなる映画だったな」というくらいの出来ではあったのですが。
惜しいところでした。
そういう偶然もご都合展開も許せるという方なら普通に楽しめるでしょう。

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岩石入道
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自己紹介:
B級~Z級映画が主食。ホラー、モンスターパニック系が特に好き。目についたサメ映画全てチェックしたい
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