エクスティンクション　地球奪還　感想（ネタバレあり）

製作：2018年アメリカ
配信：NETFLIX

妻と2人の娘を持つエンジニアのピーター。彼らはいつもと変わらぬ平和な日常を送っていた。しかし、ピーターだけは毎晩宇宙からの侵略者に攻め込まれる悪夢に悩まされ、不眠症に陥っていた。
そして妻の昇進祝いパーティの夜、その悪夢が現実となる。

宇宙人が総攻撃をかけてくる大作ＳＦ映画に見えましたが、それにしては1時間35分と短め。
映像的には結構派手目で製作費もかなりかけてる感じですが、意外とスケールは小さいです。
愛とか平和とか差別反対とか反戦的なメッセージが伝わって来るシリアスなタイプ。

しかし、ただストレートにエイリアンが襲ってくるだけではなく、ちょっとした仕掛けが仕込んであります。この仕掛けに触れずに語るのは難しい映画です。
ということで、ここから下はネタバレ注意です。

…と言っても、「地球奪還」というサブタイトルの時点で盛大にネタバレしてるんですが…。

おかげですぐに展開が読めてしまいました。序盤の日常シーンの不自然さ、そして襲撃者が人型だった時点で気付く人はかなり多いかと思われます。まあかっこいいタイトルだとは思いますが、もうちょっと分かりにくい風に出来なかったものか。

ピーターたちが実は昔地球を武力で乗っ取った人造人間で、それを取り返しに襲撃してくるのが本当の地球人。
星新一のショートショートとかですごくありそうな古典的なネタですが、気づかなければかなり驚けると思うんですよね。実にもったいない。しかし邦題だけが悪いかと言うとそうでもなく、宇宙から総攻撃をかけてきた奴らの姿がもう少し人間離れしてるように見せてくれてたらなあと思います。火星に移住して2世代後の人類なのだから体型がかなり変化していてもおかしくないわけだし。

そもそも宇宙船からの爆撃が恐ろしく強く、それだけで人造人間たちは駆逐できそうなのにわざわざ地上に降りて銃撃戦を仕掛けてくるのが変です。未来世界のわりには銃火器が何も進歩してないし白兵戦では人造人間より弱いとしか思えないやられっぷり。火星は重力が弱いし資源も乏しいだろうからそうなっても仕方ないかもしれんけど。

とはいえ主人公ピーターとその家族は戦時中の記憶も無いただの非戦闘員なので銃撃爆撃から必死に逃げ惑うわけですが、そこはなかなかスリリング。というのも、2人の幼い娘がこれでもかと足を引っ張りまくるからです。やたらビービー泣いてうるさいし、親の言うことを全然聞かないし、危ないところですぐ立ち止まるしで最悪です。この映画を観ている時間の大半はこの2人のバカ娘にイライラすることになります。というか、何でこんな何の役にも立たない人造人間が作られたんでしょうか。愛玩動物的な役割ですかね。そもそも人造人間を本物の人間と見わけがつかないほど精巧に模す理由も全く分からないんですが。そんなモンを、人類を地球から追い出せるほど大量に生産してしまった人類の愚かさと来たらね。火星まで逃げたのはスゴイけど奪還作戦がお粗末で若い兵士が無駄死にしまくるのも必然だったかもしれませんね。

ラストはこの戦いに何の決着もついてなくて、まさに「俺たちの戦いはこれからだ」エンドなわけで非常に物足りないんですが、ただの一般市民であるピーター視点での話だと考えると地球奪還作戦を最後まで描き切る必要は無かったのでしょう。もっと言えばあのどんでん返しが見せられればそれで良かったのかなと。物足りないけど仕方ない。
ということで、イラつくバカ娘さえいなければ、そしてどんでん返しが事前に予想できなければ、かなり良い映画になり得たのではないかと思いました。