製作:2018年アメリカ
発売:プライムウェーブ
息子を何者かに連れ去られ、妻を自殺で亡くしたメイソン博士は、死後の世界を証明する研究に没頭していた。彼は祈祷師のお茶から「セラム」という幻覚剤を作り出し、チームを率いて廃屋で実験を開始。やがて彼らの前に死者が姿を現すようになる。
「最も残虐な、悪が誕生する」というキャッチコピーだった「ヴェノム」のパチモン。私は観てませんが。ジャケに載ってるバケモノの姿はそこまでヴェノムに寄せてなくて、わりと本編に登場する姿そのままなのでまだ良心的な方かもしれません。内容はアメコミ的な要素は全くなくて、研究者が家族に会うため死後の世界と接触する…と「ペット・セメタリー」とか「フラットライナーズ」の系統です。
本作、パチモンのわりにトーマス・クレッチマンとかジョシュ・スチュワートのような一流どころの役者が出ているので結構期待してしまいました。特に後者は研究を否定的な目で監視してくるイヤな奴という役どころだったのに、いざバケモノが襲って来てからは「ワナオトコ」シリーズのように頼れるナイスガイ化していくところがいつもながら好感度高かったです。見た目だけなら眠たそうな小悪党顔でしかないところがいいですね。
しかしこの映画、前半は非常に眠たいです。死後の世界を研究するために廃屋でクスリを打ってたら、徐々に幻覚を視始める…とか、死んだ家族に会いたいと願う博士…という展開にいまいち独創性が感じられないのと、死後の世界も幻覚も特に恐ろしいというほどでもないのが原因です。注射を打ちまくってはゲボを吐きまくるシーンしか印象に残らない。科学実験の体でやるからには、もうちょっとそれっぽいやり方を見せてほしかったかなと。
中盤で出てきたパンクな幽霊は呑気な物腰で人によって触れたり触れなかったりと雰囲気的にも科学的にももっと掘り下げるべき存在であったように思うんですが、それっきりだったのがもったいない。せっかく「人と話をするのは久しぶりだよ」なんて積極的にコミュニケーションをとってくれそうな幽霊もいるとわかったのに、自分から拒絶してしまうのはいかがなものか。
とはいえ後半は、ジャケに載ってるヴェノム系のバケモノがガシガシ暴れて人間をぶっ殺してくれます。そこはまあまあ気色悪くて良い感じです。「エル・デスエンカルナド」とか舌を噛みそうな名前みたいでしたが、ググっても全く出てこないのでオリジナルモンスターなんでしょうか。
少しシックスセンス的なひねりを利かせたラストはなかなかでした。しかし結局ジョシュ・スチュワートもあっさりぶち殺されてしまったのは納得いかなかった。いや、他のメンバーたちがエル・デスエンカルナドに喰い殺されたのも相当ひどい話なんですがね。博士が死んだ家族と会うために行われた実験だったのに、これだけ周囲に迷惑をかけたのはいかがなものかっていう。自分だけ非常に満足気な顔で「君を助けたかった」なんてたった1人だけ救って偉そうにしてる博士にちょっとムカつきました。
ということで、過度な期待をしなければそこそこ楽しめなくもないオカルトホラーかと思います。