地獄の社内を生き抜け!
狂暴化ウィルスが大企業の高層オフィスで発生。
全社員が感染、ビルは完全封鎖される。
社内はなんでもありの無法地帯と化す。
クビになったデレクは、クソ社長に復讐するため、
上司や同僚をブチ殺し、ビルの最上階を目指す!
(アルバトロスHPより)
いやー、なんとも楽しそうな内容の映画ですね。
普段から鬱憤がたまっているサラリーマンの方には
共感することしかできないようなサクセスストーリーと言えるでしょう。
本作は人間の理性のタガを外させるID7ウイルスというのがオフィスで感染騒ぎを起こす設定なわけです。
そういう設定の場合、主人公だけが偶然感染を免れ、凶暴な感染者から逃れるために戦う。
みたいな展開にするのが定番でした。
が、本作の場合はそこをあえて主人公デレクにも感染させ、襲われる側ではなくむしろ襲う側にしてしまったというのがなかなか気が利いています。
ラスボスのクソ社長や重役どもをこれでもかとゲスに描いていたのもあって、
「いいぞ!ぶっ殺せ!」
と素直にテンションを上げながら鑑賞することができます。
まあID7ウイルスの細かい設定なんぞどうでもいいし
何ならストーリー自体もほぼどうでもいいような映画なのですが、
このウイルスのいいところは
「感染拡大防止のためにビルを封鎖するけど、中和剤を撒いたから8時間後には全員治るよ」ってことです。
普通なら「8時間も耐えなければいけないのか!」となるところですが、
本作の場合は「8時間以内にクソ社長をぶっ殺さなければならない」
そのためにはカードキーを持つ同僚をぶっ殺して奪い、
その上のカードキーを持つ上司をぶっ殺して奪い…
といういかにもゲームチックなミッションに早変わり。
いや、8時間後にはもとに戻るんだから
殺人はさすがにいけないのでは?
という疑問に対しては、
ID7ウイルスに感染中の犯行は心神喪失とみなし、罪に問われない。
とすることで回避。
とにかくクソみたいな同僚や上司をぶっ殺したいんだよ!
そのためだけの設定を無理やり考えたんだ!他のことはどうでもいいんだよ!
と叫ぶ脚本家の声が聞こえてくるようです。
描きたい内容を明瞭にするのはとても良いことですね。
舞台となるオフィスビルを見ると、それなりに先進的な企業のように見えますが、やってることは田舎の三流企業と大して変わらない様子。
人間は能力が上がってもその性質はどこまで行っても同じなのか。
社内政治って本当に嫌なもんですね。
気に入らない奴はミスを擦り付けてでも蹴落とす!
全体の利益を追求すべき社員の行動ではありません。
そんなことでどれだけの損失が出ていることか。
ほんでそのミスを擦り付けられた男デレクがミジメに会社を去ろうとした時、
ID7ウイルスがどこからか侵入したのだった。
そんな時に理性のタガが外れれば、そりゃあまずは怒りが爆発するに決まっています。
ところが、本作は前半では釘打ち機をバンバン発射したり電動ノコギリで人事部長をゴリゴリ削ったりとテンション高めのバイオレンスアクションを見せてくれるのは大変素晴らしいのですが、
なぜか話が進行するにつれデレクのテンションがちょっとずつ下がり出します。
釘打ち機や電ノコといった素敵な武器がいつの間にかどこかへ行ってしまい、
主武器はスパナやハンマーといった地味目なものへ変更。
それはちょっと殺傷力が低すぎるんじゃないかなと。
真に八つ裂きにすべきは人事部長ではなく重役や社長であろう?
という心配をよそに、
一応スッキリとしたエンディングにはなります。
が、やっぱりあのクソ社長は釘打ち機をバンバン打ち込むべきだったし、
電動ノコギリでブリブリ切り刻むべきでした。
なんせあのクソ社長はデレクの親友の死体に小便をかけるほどのクズ描写がありましたからね。
なかなかそこまでやってくれる悪役もいませんよ。
しかるにあの地味~なやっつけ方は…
物足りん…。
それ以外は大体良い出来だったのですが、
全力でスプラッター描写すべき最大の見せ場において
手抜きをしてしまったがために、
絶賛するほどの映画でもなかった。と言わざるを得なくなりました。
もったいない話です。
まあそんな難点はありますが、
ストレスフルなサラリーマン生活を送っている方々には
それなりに明日への活力にはなってくれる映画と思います。