製作:2015年イギリス
発売:AMGエンタテイメント
付き合い始めて2週間のトムとルーシーは、予約していたホテルへ行くため車で林道を走っていた。ところが案内板通りに走っているのに一向にホテルへは着かず、堂々巡りをしてしまう。すると、血まみれの男が車に転がり込んでくる。
B級映画の世界には「新・ナントカ」という邦題が付けられている作品が多数存在します。「新ゾンビ」「新プレデター」「新エイリアン」「新デモンズ」「新トレマーズ」「新エクソシスト」等々。いかにも有名作品のリニューアル版ですよという顔をしていながら、実際は本家シリーズとは全く何の関係も無い有象無象であることがほとんどです。
しかし、だからと言って必ずしもクソ映画というわけではなく、邦題の有名作品とは無関係だと最初から割り切って鑑賞すればそれなりに楽しめる場合もあるのです。悪いのは日本版DVDの発売元であって、作品自体に罪はありません。
で、本作(原題:In Fear)の概要ですが、
「若いカップルが道に迷っていたら1人のサイコ殺人鬼に襲われる」
というだけ。
いや、もう本当にこれだけ。
画面に映る人間、たった3人だけ。
ひたすら暗い林道を車でウロウロしているだけ。
殺人鬼に殺されるのはたった1人だけ。
①道に迷う
②殺人鬼に遭遇
③カップルの片割れが殺される
という、普通のホラー映画であれば最初の3分ぐらいで済ませてしまうような内容を薄めて薄めてどうにかこうにか80分に引き伸ばしたような映画でした。道に迷ってるシーンがいくらなんでも長すぎるんですけど。
「ここさっきも通った」
「おかしいな」
「もう一度ちゃんと案内板通りに」
「また戻って来た」
「そんなバカな」
「オレは道を知ってる」
「またここか」
「そんなはずない」
「もう一度だ」
「…(同じ場所)」
いつまでやるんだこれ!と人によってはブチ切れてテレビにパンチを入れかねないほどのクドさ。どうやらテーマは「堂々巡り」のようで、道に迷うだけでなく会話も何だか無意味に堂々巡りしているような雰囲気でいくら時間が経過しても一向にストーリーに進展がない。
これで「デッド・フィーバー」とか言われても…
一体どこでフィーバーすれば良いのか。
見せ場らしきものと言えば、トムと殺人鬼(素手)による泥んこレスリングからの関節技で手首を折るくだりぐらい?
そういやジャケットでは斧を持ったデブ殺人鬼が女性を襲っていますが、そんなのどちらも全く出てきません。どうやってでっち上げた画像なのこれ。というかどういう気持ちででっちあげた画像なのこれ。
↑これが本作の登場人物全員。
この画像を80分間眺めたらそれでもう本編を鑑賞したのと同じようなものです。
ちなみにこのサイコ殺人鬼(笑)は斧どころかナイフの1本すら使わず最初から最後までずっと素手。
襲撃してきた理由がものすごく意味深に匂わされていたが、ただ単にパブで酒をこぼされたことを恨みに思って襲ってきただけらしい。
ラストはこのサイコ殺人鬼(笑)が猛スピードで迫る車にハネられるシーンなのかと思いきや、当たる直前に暗転してエンドクレジット。
…せめて轢き殺すところぐらい観たかった。
ほんのちょっとの刺激や面白味すら私に与えてくれませんでした。
しかしそのエンドクレジットで
「これは何? 私には分からない」などというふざけた歌詞のテーマソング(?)が流れ出したのは笑いました。
見た人の心情を代弁するテーマソングとはね…
いくらパチモンでもここまでの超駄作というのはそうそうお目にかかれるものではない。
ある程度心の準備をしていた私ですらこうなのだから、本気で「クライモリ」シリーズの新作だと思って鑑賞した人はさぞかし怒りに燃え狂ったことでしょう。そんな哀れな被害者たちの慟哭に想いを馳せるためにも、クソ映画マニアは要チェックです。