製作:2017年アメリカ
発売:ニューセレクト
紙に名前を書いて血を垂らし、それを木製のドアに貼り付け、ロウソクに火をつけて深夜0時ちょうどにドアを22回ノックするとミッドナイトマンが殺しにやってくるという。助かるにはロウソクの火を消さずに午前3時33分まで逃げ切らなければならない。
認知症の祖母宅の屋根裏でそのゲームのマニュアルを見つけて実行してしまったアレックスたちは無事にミッドナイトマンから逃げ切ることが出来るのか?
ばあさんの家から一歩も出ない、すごく小規模でつっこみどころ満載なばあさんホラー映画。ミッドナイトマンより明らかにばあさんの方が怖い。
現実に古くから伝わるという「ミッドナイトゲーム」なる都市伝説をモチーフにしているわけですが、そんなもの私はこの映画で初めて知りました。とはいえ、そこら辺にいくらでもありそうなネタであり特別目新しさはないです。合わせ鏡の間に生肉を置いて体育座りしたらえらいことに、みたいな怪談話は枚挙にいとまがありませんし何ならコックリさんと大差ない話です。
キャンディマンとかバイバイマンとかスレンダーマンなどと似たようなもんでしょう。
認知症の祖母の世話をしにやってきていた孫娘アレックスが友人マイルズと屋根裏部屋で遊んでいたらミッドナイトゲームのやり方を記した紙をたまたま発見。それを軽い気持ちで実行してしまったがために本当にミッドナイトマンがやってきてしまい、恐ろしいことに…
というベタというか王道な導入ですが、
↑実はそのゲームの生き残りだったアレックスのばあさん。
孫娘が世にも恐ろしいゲームを始めてしまったと知り、関根勤みたいな顔で大激怒。そんな紙を後生大事に取って置く方に非があるのでタチの悪い逆ギレでしかない。
認知症は認知症でも攻撃的な方向性に振り切れてしまった老人の介護は本当に厳しそうですね。
ジャケットでは「絶叫必至!ハイテンションホラー!」とか煽ってくれてますが、本作はむしろかなりローテンションなホラーです。終始薄暗くどんよりしており、ばあさん家から一歩も出ないのでテンションの高まりようがない。
絶叫するのもテンションが高いのもこのばあさんだけ。
↑ミッドナイトマン自体は全然怖くないんですが、このばあさんの演技は割りと本気で怖い。結構名のある役者さんみたいですね。
祖母と孫娘の愛と絆でミッドナイトマンを倒すみたいな筋書きを想像していたら相当裏切られました。
ミッドナイトゲームを実行するのが当初アレックスとマイルズの2人だけしかおらず、いくらなんでも登場人物が少なすぎるのではないか? という不安があったのですが、中盤でケリーという女の子が遊びに来てくれます。しかも、
「あなた方を助けるためには私も参加するしかないようね(ドヤ顔)」などと自信満々で紙に名前を書いて血を垂らしミッドナイトゲームに途中参加するのです。ネットで都市伝説を熟知していると言い、一見何か策を持っていそうな救世主的雰囲気を醸し出しています。
ところがケリーは参加して早々にロウソクの火を消されてしまい、アレックスたちに置いて行かれてしまいます。そのうえアレックスたちはケリーを助けに戻ろうなどという気がさらさら無く、延々と長話をした揚げ句イチャイチャし出します。どうして早く助けに戻ってやらないのか。友達ではないのか。彼らが幼馴染であるという以外には何の描写も無いので理解が及びません。
しまいにはばあさんの主治医であるロバート・イングランドが突然現れ、
「ケリーには前菜になってもらおう。我々はその間にこの忌まわしいゲームを終わらせるんだ」などと「あいつは死んで当然のゴミ」みたいな扱いをしてくれます。珍しく常識人枠で出てきたと思ったらやはりどこかアレな性格だったロバート・イングランド。一筋縄ではいかない男です。
そして幼馴染のくせにそんな鬼畜的提案に反発するでもなく、さらに長い立ち話に興じるアレックスとマイルズ。その間哀れなケリーは必死にミッドナイトマンと対峙。一応塩で作った円の中に居れば安全というルールがあり、その塩の円を守ろうとするケリーさんと流水でチョロチョロとそれを壊そうとするミッドナイトマンとの攻防戦がやたらチマチマしていて笑えます。
そして善戦むなしく無残な死体と化したケリーさんを見ても大して悲しむわけでもないアレックスとマイルズ。どえらい薄情な奴らです。一体ケリーさんが何をしたというのか? あちらは100%善意でこんな危険なゲームに参加してくれたというのに何でそんなムゴイ仕打ちができるのか分からん。
ということで都市伝説がどうとかミッドナイトマンがどうとかよりも、やたらテンションの高いばあさんの大活躍と、異常に気の毒で理不尽な目に遭わされまくるケリーさんが見どころ、という変なひねりが効いたB級ホラーでした。特におすすめするほどでもありませんが、まあまあ暇つぶし程度には楽しめると思います。