製作:2010年オランダ・インドネシア
発売:東宝
『ジョーズ』を超えた恐怖!
『遊星からの物体X』を超えた戦慄!
そして、『ミスト』を超えた衝撃!
ブライアン・ユズナ監督にマイケル・パレ主演
というある意味鉄壁の布陣によるモンスターパニック映画。
原題は「AMPHIBIOUS 3D」なので当然ながら本家「トレマーズ」シリーズとは何の関係もありません。別にパチモンにしなくても「地獄の海さそり」とかで充分だった気がするんですが。
ジャケットの煽り文句がもう、誰が信じるんだい?というぐらい大げさ。本気でそう思ってるんならせめて「シー・スコーピオン」程度の邦題にしといてやれよ…と思いますし、どうせやるなら「今度はサソリ型グラボイズが海の底から来襲!」みたいな煽りを入れたいところ。
本作はマイケル・パレ主演ですが、アメリカ映画ではなく「オランダ・インドネシア合作」という謎の組み合わせ。どこにオランダ要素があるのかはわかりません。
舞台はインドネシア・スマトラ沖の海上に立てられた掘っ立て小屋みたいな漁場です。
そこには親に売られて強制労働させられている子供たちがおり、その中には呪術師の血を引く兄弟が混じっています。彼らが周囲に辛く当たられ、ついにはイライラした大人に気晴らしにぶん殴られて兄の方が死んでしまい、弟が怒りの呪術パワーでクソガキや雇い主たちを皆殺しにせんと巨大海サソリを召喚する…
という感じの陰鬱なストーリーです。
インドネシアのことはよく知りませんが今でもあんな悲惨な環境で働かされている子供がいるんでしょうかね。まあ別にその辺を世界に知らしめたいとかいうタイプの映画でもありませんが。驚くのは呪術師兄弟以外の子供がみんな途方もないクソガキであり、スプラッター全開でぶっ殺されてしまうという点です。
海サソリが出なかったら出なかったでチャイルドホラーが出来てしまいそうなレベルの極悪さ。特に白人女性を捕えた時に盛んに股間をいじりながら迫るくだりは最悪です。
「いいもの見つけた!」とか言っちゃうの。本当に子供か? インドネシア人への偏見を助長しないかと心配にならなくもない。
まあ何にしろ彼らインドネシア人たちの方がストーリー上はメインであり、気の毒な子供を助けようとするアメリカ人女性の海洋学者が主役に近いポジションです。何が言いたいかというと、マイケル・パレはただの運び屋であり、だいたい蚊帳の外でした。それでも海洋学者と子供のピンチにさっそうと駆けつけて戦ってくれるのかと思いきや、ウミサソリがダウンして死にかけている時になってからノコノコやってきて
「これで金持ちになれる!」と大喜び。
それって悪役とか殺され役がよく言うセリフですよね。
ただでさえ「微妙すぎるB級映画スター」という印象が強いのに役柄までもが微妙にかっこ悪いとは…。
ブライアン・ユズナの映画は80年代のものしか見たことがありませんが、本作はいろんな意味で80年代風の仕上がり。
特にスプラッターシーンは手作り感満載。
内臓ぐちゅぐちゅ、胴体切断、血がピューピューとこれはまさに古き良き80年代スプラッター映画の雰囲気。何とも郷愁を誘う香りが漂います。
肝心の海サソリはというと、
まあ悪くはないのですが、別に良くもない。
マイケル・パレと戦う場面では特に合成感丸出しなので、
もしかしてマイケル・パレは何もないグリーンスクリーンをバックに一人で暴れているのかなあと思うと心が少し温かくなりました。こんなもん3Dで劇場公開したって本当ですか?
…そんなんでも陰鬱なストーリーの果てに行き着くエンディングがまた輪をかけて陰惨なので、見た人はだいたいイヤ~な気分になると思いますが、それが多分『「ミスト」を超えた衝撃』、にかかっているのでしょう。個人的には「
アイス・トレマーズ」とどっこいどっこいな感じの作品でした。