製作:2018年ブラジル
発売:キュリオスコープ
ジャングルの中にある貧しく小さな村で暮らす少女クララ。ある日瀕死の男と出会い、金貨と引き換えに黒魔術で魂を救済してほしいと頼まれる。臨時収入を得た彼女は恋人と共に都会へ出ようとするが、強盗に遭い金を奪われ恋人も殺されてしまう。クララは恋人を生き返らせるべく黒魔術の儀式を始めるが、それが思わぬ惨劇を呼び込むこととなる。
「吸血怪獣チュパカブラ」「デス・マングローブ ゾンビ沼」などで有名なブラジル・グチャドロ系スプラッター映画界の第一人者ロドリゴ・アラガォン監督最新作。南米のジャングルの超貧困な村でどん底としか言いようのない生活を送っている人たちが悪魔騒ぎに巻き込まれ泥まみれ血まみれでのたうち回るというある意味非常にオリジナリティの高い作品となっております。
ロドリゴ監督は南米では言わずと知れたヒットメーカーであり日本にも熱狂的なファンがいるそうですが、本当かなあ…
だったら「ファンタスティック・ビースト」のパクリロゴ邦題にしなくてもいいような気がします。
しかしいくらロゴを似せても、血塗れのくっそキモい主人公の顔がパチモン臭さを吹っ飛ばしてただひたすら気持ち悪い邪道感を醸し出しております。晒し首みたい。ジャケだけでなく中身も非常にバッチくて貧乏臭くてグチョグチョです。これでもうっかりファンタビと間違って借りてしまった気の毒すぎる人が存在するんでしょうか? 食べ物で例えるとカニ料理かと思ったら実はクモ料理だったぐらいの落差があると思うんですが、もしいたら感想を伺ってみたいところです。
ストーリーは意外とややこしくて尺も1時間38分と長めです。
黒魔術書と金貨を手に入れた少女クララが、死んだ恋人を生き返らせようと怪しい儀式をしてみたらえらいことに、というのが本筋ではありますが結構寄り道が多い。かなりの中弛みを感じます。それにクララは「恋人を生き返らせたい」という願いだけ見れば純粋なようですが、儀式のためにその辺の子供をさらってイケニエにしようとしたり、よその家から鶏卵を盗みまくったり、強盗を魔術で呪い殺したりと業の深い行動をガンガン積み重ねていきます。貧すれば鈍すると言う通り、登場人物はだいたいロクなのがいません。金を見ればすぐぶっ殺してでも奪おうとする危ない輩ばっかりです。
そんな感じで前半はダラダラしてて辛いのですが、後半でニワトリ大好きな男の一家がニワトリのバケモノに襲われるあたりから急にテンションが上がり面白くなってきます。
↑愛情込めてニワトリを育てていた男の一家を襲うバケモノ。クララが儀式の手伝いを頼んだばかりにニワトリが怪物化してしまい一家惨殺というムゴイ結果に。大して強くなさそうなニワトリモンスターなんですがパニクってコケたりうっかり銃殺してしまったり。向こうはいくら貧困に苦しんでいても銃だけはしっかり持ってるもんなんですね。見るからに治安悪そうだからでしょうか。ニワトリモンスターなんぞよりも、この世の地獄と言って差し支え無さそうなこの村の環境の方がよっぽど恐ろしいです。
しかもそれだけの犠牲を払ってやっと恋人を生き返らせたと思ったら、実は恋人も金目当てなだけだったという救いも何も無さ過ぎるオチ。いや絶対そうだろうなとは思ってましたけども。蘇った恋人や悪魔が暴れるクライマックスはなかなか派手な人体崩壊っぷりで良いです。
しかし貧乏人全てが泥と血にもがき沈んでいくやるせなさを感じた映画でした。出来は悪くないが、あんまり楽しいものでもないしバッチイ系スプラッターがよほど好きな人以外には勧められないかなと思います。