(1981年/アメリカ)
227頭のライオン、トラ、ヒョウ、ジャガー、ゾウが登場する動物パニックファミリームービー!
(TCエンタテイメントHPより)
今月の新作アニマルパニックか、と思って借りたんですが、
DVD化されたのが遅かっただけで1981年製作とだいぶ古い映画でした。
ストーリーはあって無いようなもんで、
「アフリカでライオンやトラの群れと暮らす動物学者のオヤジ。ある日妻と子供たちを呼び寄せるが、タイミング悪くオヤジの留守中に訪ねてきてしまい、全力でジャレついてくるライオンやトラの群れにみんな大パニック」というだけ。
いや、しかし、これは凄い。凄すぎる。
私も今年に入ってからだけでもすでに150本近くも映画を観ているわけですから、これまで全ての累計ではおそらく数千本もの映画を鑑賞してきたということになります。
(そのほとんどがろくでもない映画なのはさておき)
その私が観てきた数千の映画の中でも本作は「狂気」というポイントにおいて確実に頂点に位置すると言えます。本作はある意味「悪魔のいけにえ」より危険なオーラを感じます。
間違いなく史上最狂かつ史上最恐のアニマルパニック映画ですよこれは…
とはいえ、本作はそもそも「アニマルパニック」という認識が正しいかどうかがまず微妙です。
サイトによっては「コメディ」だったり「ファミリー映画」だったりしますからね。
なんでそんなことになるかというと、
ライオンやトラをはじめとするネコ科の猛獣が「襲ってくる」映画のようでいて、実はそうではないからです。ジャレてるだけなんです。
本作に登場するライオンやトラ、ヒョウ、チーターなどと言ったネコ科の猛獣たちはCGや着ぐるみなどではなく全部本物。これがまず凄すぎる。
普通アニマルパニック映画と言えば、CGや着ぐるみを使うことがほとんどですが、そうするとリアルじゃなくなるし、本物を使ったら使ったで役者と同一フレームにおさめることが困難になってしまいます。
そんなリアルさと安全性の狭間で悩まなければならないからこそ、アニマルパニック映画というものに対する興味が尽きないのだと私などは思うわけですが、本作はそんな壁などいともたやすくぶち破っており冒頭からラストまで驚愕の嵐でした。
↑喰われてるようにしか見えないんだけど、ジャレつかれてるだけ!こんなの日常風景。
当たり前でしょうが、ネコ科の猛獣たちは相当人に慣れているようで、アニマルパニックでよくある血に飢えた怪物という雰囲気は全くありません。
本作を突き詰めて表現すると
「ネコ科の猛獣が人間にジャレつく様子を延々映してるだけ」
のドキュメンタリー映画とも言えます。
…しかし、いくら本気で襲う気がないからと言っても、
ライオンやトラなんてジャレついてきただけで人間など簡単にズタボロになってしまうのではないか?
ということが印象としてはあるため、いくら本作がほのぼの動物愛護精神に満ちた内容でも慈愛の目で観ることは非常に困難。すぐ人間に抱き着いたり甘噛みしてくるネコ科の猛獣にもう気が気じゃない。
実際、いつのまにか登場人物が血をダラダラ流しているシーンもいくつかあり、いやそれ芝居じゃなくて絶対リアルな怪我でしょ!? と突っ込まざるを得ない。
ちなみに撮影監督のヤン・デ・ボンは頭の皮を剥され200針縫ったそうです。
家の中に一歩入ればそこはライオン天国(地獄?)。トラもヒョウも一杯いますよ。
まあ確かにネコ科ですから、しぐさはでかいネコみたいでカワイイと言えなくもないですよ。しかしそれにしても多すぎやしませんかね。撮影に225頭も使ったという触れ込みでしたが家の中にそんなにいたらもう尋常じゃない猛獣密度。足の踏み場もないほどです。そんなのに代わる代わる抱き着かれ甘噛みされ…そのうち1頭ぐらいうっかり野生の本能を出しちゃったりしないの?
そんなネコ科の猛獣がみっちり詰まった猛獣屋敷に訪ねてくる、家主の妻と子供たち。
遊んで遊んで~と洪水のように迫って来る猛獣たちにたまりかねて逃げ惑うくだりが一応本作のメインの部分であり、コメディかつパニックな猛獣との触れ合いです。
しかし100頭以上の猛獣の群れをコントロールできるとは思えない。画面で起こっている出来事の大部分がおそらくアドリブで構成されているのではないか…役者の怖がる演技は演技ではなくマジの反応なのではないか…スタッフの一人や二人ぐらい喰われているのではないか…という恐ろしい想像が膨らんでしまい、なんでこんな狂った映画を作れたのかと呆れるような感心するような複雑な思いに囚われました。
やっと逃げ切った、疲れたから寝よう!
と思ったらいつの間にかいっしょに寝ている猛獣たち。多すぎて笑っちゃいます。
奥さんや子供たちも、もういい加減にしてくれ!…って言うかと思いきや、突然
「襲う気はないのね!よく見ればライオンもステキ!」
などと言い出し、さっきまであれだけ怖がって逃げ惑っていたのに急にどうした!? とこっちが戸惑いました。
…まあ、動物愛護精神が大事ですからね。
ネコ科の猛獣が好きな人、動物映画好きな人には当然超オススメですが、
洪水のように大量に押し寄せてくるネコ科の猛獣ともみくちゃになって転げまわる人間たち、という尋常ではない狂気に満ちた映像に90分間どっぷり浸ってみたいという好奇心旺盛な方にももちろんオススメですね。こんな凄まじい映画はもう二度と現れないでしょう。