製作:2018年アメリカ
発売:ブロードメディア・スタジオ
刑務所を出所し、自宅へと車を走らせていたアシュリーとマックス。しかし田舎道で何者かからの投石攻撃を受け、激流へ落下し流され森で遭難してしまう。そこでたまたま密猟中だった違法ハンター集団に助けを求めるも、逆に襲われそうになる。だがそんな彼らの前に、伝説のビッグフットが現れる。
「この牙で泣かした人間数知れず」
…とかなんとか書いてあるものの、実際はそれほど噛みつき攻撃をしてこないし別に誰も泣きはしないビッグフット物のサバイバルホラー。
UMAの中では最もメジャーなテーマですが、個人的にはビッグフットとかサスカッチ物の映画ではアタリを引いたことが無くロクな思い出がありません。
しかし、本作はそんなスカだらけのビッグフット映画の中では突出して良い出来であると感じました。
例によって襲われるのが一組のカップルだけで殺され役がいないため見せ場が無く退屈である…などという悲しい事態を避けるため、大量の密猟者集団を出したのが非常に効果的に働いています。
そうは言っても中盤までは主人公の夫婦が遭難してから怪しい密猟者たちに絡まれるくだりをじっくり丁寧に時間をかけて展開。そこにビッグフットの姿をチラつかせることで不穏な空気を醸し出すことに注力しているため、ダルイと言えばダルイ。
しかしその分、ビッグフットが襲い掛かって来てからはムカツク密猟者どもをこれでもかとムゴイ目に遭わせてくれるので実にスカッと爽快。文字通り大出血祭。必要以上に人数が多いのが素晴らしい。人数が多いからと言ってやっつけ仕事になるわけでもなく、なかなか趣向を凝らした屠り方を見せてくれます。例えばアレクサンドル・アジャの「ミラーズ」を彷彿とさせるアゴ裂きシーンは大変気持ち悪くて良いです。
↑ビッグフットなんてただのデカ足でゴツくてキモい毛むくじゃらゴリラもどきかと思いきや、斧とか弓矢とかトラバサミだのといった武器を駆使して襲ってくる。かなり知能が高い。ただのクリーチャーものとはまた少し違った味わいがあります。
ビッグフットの造形は着ぐるみ感も無ければCG感もない。動きも良いし出し惜しみも無い。実に自然な存在感が素晴らしい。前クチビルがめくれ上がる描写は特によく出来ています。
ただ本作は1時間45分と結構な長尺なのですが、人類vsビックフットの激闘が延々繰り広げられるのかと思いきや、先住民族の保安官がビックフットの存在を認めるか認めないかとかで悩み出し、先住民族の儀式に参加するだのなんだのと言ったよく分からない脱線が始まります。
このくだりはUMAマニア的にはもしかしたら重要なのかもしれませんが、ビッグフットの由来に興味が無い人間としては異常に退屈です。
眠たい展開…というか少しばかり意識を喪失してしまいました。
↑先住民族?の婆さん。
どう見ても邪悪なクリーチャーみたいな外見ですが、主人公マックスの傷の治療をしてくれた優しい婆さんです。ビッグフットと人間の混血か何かですかね。戦いだけでなく交配もテーマに入っているようです。
それはいいんですが、本編のBGMに合わせてドンドコ太鼓を叩くという奇行を披露。シンプルなモンスターパニックかと思いきやこのような奇怪なシーンが多々あるせいでだいぶインパクトが増しています。
そんなヘンチクリンな儀式とか婆さん太鼓のくだりを乗り越えると、マックスが奥さんを賭けてビッグフットと全身全霊の殺し合いを繰り広げて頂けます。このクライマックスは本当にしつこいぐらい死力を尽くした泥まみれの激闘という感じで、満足感は非常に高いです。多少冗長という点を除けば、本作はビックフット物では珍しい良作と言って良いでしょう。普通にオススメです。
…ただ、ラストだけは個人的にいただけませんでしたね。
あのホームラン級クソ映画「
獣人プレデター」とほとんど同じ絵面でしたからね。
蘇るトラウマ。なんでよりによってアレと同じような締め方にしたのか。ま、最後の最後だけだから別にいいですけどね…。