製作:2018年アイルランド
発売:インターフィルム
幼い息子を誘拐された警察官のアマンダ。身代金60万ユーロを調達するため、元夫とその仲間たちと共に銀行CEO宅へと強盗に押し入る。しかし、その銀行CEO一家はただの人間ではなく、食物連鎖の頂点であり宇宙の継承者でもあるトカゲ人間たちであった。
強盗に押し入ったら、ターゲットは普通の人間ではなく怪物だった…というパターンの映画はそこそこ目にしますが、さすがに「食物連鎖の頂点で宇宙の継承者のトカゲ人間」なんてのは初めて観ました。しかもコメディじゃない。100%どシリアスなホラー(?)です。アイルランドではレプティリアン陰謀説を好む人が多いんですかね。いやそのネタで映画を作るのはいいけど、強盗犯返り討ちのフォーマットに乗せるのはどうなんでしょう。あまり相性が良いとも思えないんですけど。
「強盗先のセレブ一家の正体は!?」
って本来そこは重大なネタバレだから書かない方がいいかなとも思ったんですが、ジャケットで既にネタバレしちゃってるというね。まあ何も知らずに観ていきなり中盤でヒト型爬虫類が出てきたら怒る人もいるだろうからこれでいいのかな。
冒頭で幼い息子が誘拐されてしまい、
警察官でありながら強盗の計画を立てるアマンダと仲間たち。
本作の前半部はごくオーソドックスなクライムサスペンスといった趣きであり、そこそこ安心して観られるクオリティではあるもののインパクトは何もありません。
目を付けた銀行のCEO宅に押し入ってカネを奪おうとするも、CEO一家が正体を現しはじめ、逆襲に転じてくるあたりから雲行きが異常に怪しくなります。何も知らずに観たら「フロム・ダスク・ティル・ドーン」並みの方向転換です。派手なアクションはないけど。
↑正体を現すと言っても目が変になってるだけでなかなかトカゲ人間化はしてくれない。
予算が無いならもうちょっと気軽に変身しやすいモチーフの生物にすれば良かったのに。
レプティリアン陰謀説には全然興味無かったんでよく分かりませんが、アイルランド人にとってトカゲ人間は宇宙の継承者でもおかしくないのか?
これはヒト型爬虫類ありきの企画なのか?
武装した強盗集団に対して、
「つまらない夜を面白くしてくれた」
とか余裕で超大物っぽいセリフを吐いてくれるだけにトカゲ人間たちの戦闘力はなかなか高いものがあります。そのうえ目にもとまらぬ超スピードで移動できるのです。…が、別に人間が絶対勝てないほどでもないらしく、頭を撃てば普通に死にます。宇宙の継承者なのに。
↑一応トカゲ人間と対峙する強盗団リーダー。でもトカゲ人間は基本ピントが合っていないか、炎や影で隠されて見辛くされてます。ボクシングでペチペチ殴り合うシーンはちょっと面白い。宇宙の継承者とボクシング。じわじわきます。本作は全体的に格闘アクションの動きはすごく頑張ってる感があるのに、効果音がペチペチしててもったいない。でも生きながらハラワタを引きずり出したりなどのエグイ場面も一応あります。
食物連鎖の頂点であり宇宙の継承者、というワードの力強さには心惹かれるものがありますが、いかんせんこのリザードマンたちが作中でやっていることが大したことないのでどうにも肩透かしな印象は否めませんでした。
人類を陰から支配している…と言っても銀行CEOですし。いや重要なポジションではありますけど。人間と子作りしたがってたトカゲ女に交配を強要された強盗団の青年の気の毒さが際立ってたぐらいで、あとは割りと地味なものでした。
それでもレプティリアン陰謀説に興味がある人はそこそこ楽しめるのではないでしょうか。
そんな人がどれだけいるのか知りませんが。