製作:1987年アメリカ
発売:有限会社フォワード
クイズやバラエティ的チャレンジで負けたら殺されてしまうという、刺激的な超人気番組「おだぶつTV」。出演者は全員死刑囚なので問題はない。恩赦か、死か? 司会者チャックは今日も笑顔を振りまき死刑を執行する。
しかしある日、手違いで紛れ込んだ一般人の老婆を処刑してしまうのであった…
一体何と言うくだらないタイトルなのか。これは観ないわけにはいかないでしょう。さすが有限会社フォワード、目の付け所がよそとは違います。何本売れたのかなあ。
ただ、「死刑執行ウルトラクイズ/おだぶつTV」という素晴らしい邦題は昔のVHS版の方限定でして、DVD版の商品名からは「ウルトラクイズ」が省かれております。残念だけど、まあ仕方ないか…。ジャケ裏に「クイズに間違えたら、その場で死刑!」とか書いてあるけどそこまで言うほどクイズに特化した番組でもないですしね。
ちなみに監督は「尻怪獣アスラ」などのアホ映画の巨匠マーク・ピローとのこと。それはどうでもいいか。
私が言うのもなんですが、人間の死というものは娯楽になり得ます。それは中世ヨーロッパにおける公開処刑が民衆のささやかな楽しみであったことを例に挙げるまでもなく。現代ではさすがに人道にもとるということで公開処刑は蛮行扱いされておりますが、80~90年代くらいまでは我が国のテレビでも「事件・事故の決定的瞬間!」みたいな番組がお茶の間で人気を博していました。現実の死はもちろん、映画でも小説でもありとあらゆるエンターテインメントで登場人物の死はハイライト扱い。人は誰でもいつかは死ぬし、死に対する恐れや興味も捨てられないし、結果娯楽としての死も否定は出来ないのです。
であれば、こんな番組があればなあ…と考える人間がいてもおかしくないのではないでしょうか?
↑まず死刑囚をギロチンにセット。クイズに正解すれば恩赦となりますが、うっかり間違えると即座に首が斬り落とされます。
観客席ではそんなパパに声援を送る奥さんと小さなお子さんたちが!
悲壮感の欠片もないところが逆に素晴らしい。運動会か何かかな。実に心温まる光景ですね。
死刑囚にも最後のチャンスを、最後の娯楽を。誰も見てないところで孤独に死ぬよりこっちの方がマシって人もリアルでいそうですね。
しかし、現実は無情。回答は不正解。
↑パパの命運は尽きてしまいましたが、家族にはまだビッグチャンスが残されています。切り落とした頭が落ちた時に上を向いていたら、なんと1万ドルを進呈! このわくわくチャンスタイムには奥さんと子供たちもテンション爆上げ大喜び。死刑判決を受けてしまうようなマッドダディを引き取るよりも現金をいただけた方が幸せなのかもしれませんね。
それにしてもアメリカのバラエティは司会者もオーディエンスもやたら軽妙でテンションが高くてえらく楽しそうです。執行の瞬間はスタンディングオベーションで大熱狂。こっちもつられて楽しくなってきます。
↑囚人服にソックリな最先端ファッションで決めて遊びに来たばかりに出場者とカン違いされてしまったおばあさん。種目はクイズではなく、ガソリン携行缶を持って炎の輪をくぐっていくというサスケ的な肉体競技へ参加させられる羽目に。
あまり年寄り向けの種目とは思えませんね。
スタッフのポカが原因にせよ、本人もなんでまたノリノリでこんなデスゲームに参加してしまったのか。後々問題になった時に自己責任派も無視できない勢力となりそうです。
…っていうか黒煙が濃くてばあさんの勇姿がよく見えません。これ実際に燃やして撮影してるってことですよね。本当にばあさんにやらせてるのか?
↑一方、こんな種目も。徐々に空気を抜かれて行く箱の中で、死ぬ前にパズルを完成させろ的なやつ。後のソリッドシチュエーションスリラーを先取りしているかのようなデスゲーム。
「おだぶつTV」は様々な趣向を凝らして死刑を執行してゆくので、好奇心旺盛な視聴者を飽きさせることはありません。
…と手放しで大絶賛したいのはやまやまなのですが、本作は番組外の出来事…司会者のチャックがモラリストに抗議されたり、殺し屋に狙われたりといった場外乱闘にも結構な尺が割かれておりまして。そちらの方もつまらないとまでは言いませんが、わりとダラダラ間延びしてたりします。
そのため、くれぐれも過度の期待は禁物です。
しかし、このタイトルに惹かれてしまったようなマニアの方であれば、観て損があるとは思えませんね。レンタル屋にあるのかどうかは知りませんが、セル版でも千円台なので購入しても損はないでしょう。いまどきこんな珍作をDVD化してくれる有限会社フォワードさんのためにも新品で買うのが大局的に見て正解かと思われます。
しょうもない映画専門家の私が太鼓判を押す珍作中の珍作、その手の方には大変オススメです。興味が湧いた方はぜひご覧になってみてください。