製作:2008年タイ
発売:チャンスイン
ミャンマー・タイ国境付近で軍に弾圧されている少数民族の村。そこに住んでいたのはヘビ人間一族の末裔の兄妹だった。なんかの任務で軍と戦おうとしていた凄腕兵士ナーウィンは、偶然そのヘビ人間の女ジンを助けることになる。そして彼らはやがて愛し合うことになるが、そんな彼らにCIAの手先が迫っていた。
先月リリースの新作を借りたら、まさかの2008年製作。なぜ今頃10年も前のタイ映画を買い付けてくるのだろうか。
「追う者は皆、地獄に引きずり込まれる!」
ってあんまりそういう感じのホラー映画でもないし。
異種族間の悲恋を情緒たっぷりに…いや血みどろに描いた内戦モンスター恋愛映画(?)です。何を観たんだかよく分からない。
ストーリー自体は上に要約した通りなので、「ヘビ人間」という存在の珍奇さを除けばまあまあ凡庸というか王道というか格別珍しくもないアウトラインをなぞっているような気がするのですが、設定に関する説明が不足気味なので結構ついていきにくいです。
↑トヨタのピックアップトラックに乗って少数民族の村にやって来る兵士たち。
これは激しく既視感のある光景。
そう、「ランボー 最後の戦場」を見た人なら分かりますね。
当時タイ・ミャンマー国境付近ではミャンマー軍事政権による少数民族の虐殺が日常的に行われていたのです。余談ですが「ランボー 最後の戦場」は個人的に最も好きな映画でして、劇場では3回しか観られなかったものの、北米盤DVDを速攻で購入して毎日毎日浴びるように鑑賞しまくり、なかなか国内盤DVDが出ないのに焦れてしまいには自分で字幕まで製作してしまったことがあります。
そんな人間にとってはテンションを上げていいのかどうか複雑な気分になるこの少数民族虐殺シーンですが、なんかよく見ると実は怪しい。どうやらミャンマー軍事政権による弾圧などではなく、ヘビ人間を捕らえて人体実験をしたいCIAの差し金でタイ人傭兵部隊がやっていることのようでした。村人に混じって生活しているヘビ人間を探すついでに虐殺しているということなんでしょうか? それだとだいぶ話が変わって来るというか少々不謹慎なような気も…まあファンタジー映画みたいなもんだしどうでもいいか。
銃撃戦や格闘シーンなどは非常に気合が入っていてよく出来ていると思います。ヘビ人間は終盤まで本性を現さないのでモンスターパニック要素はほぼ皆無ですが、そこら辺に注目する限りでは悪くない映画です。
ただ、なんとなくヘビ人間の女・ジンを助けた兵士ナーウィンの心情とか行動原理が全然わからん。ろくに言葉も交わしてないのにどうしてそんな命懸けで助けようとしているのか?
前世の運命による一目ボレとかそういうのでいいんですかね。
しかし追手がCIAの手先だというのはどうなんでしょう。
タイ映画なんだからわざわざCIAを巻き込まなくてもいいのでは…
いくらアメリカ人でもヘビ人間を捕らえて人体実験したいだなんてバカなことを考えたりしないと思うんですよ。
↑と思ったら、正体を現したヘビ人間はいかにも米国人が好みそうなアメコミダークヒーロー風の素敵な造形でした。これならCIAに狙われても仕方ない。というかヘビっぽくなくないですか。まあ下半身はヘビだから上半身はこんなんでも別にいいか。
なんかグランドクロスが起こる日に兄妹が融合して云々という伝説がってどうのこうのという話だったらしいんですが、曖昧すぎて全然理解できませんでした。土着神話的なあれなの?タイ人には分かりやすい話なんですかね。
ということで、基本ウェットな恋愛映画だと思うんですが、結構グロは激しいしチープなモンスターは出てくるしで難解な背景も含めると実に名状しがたい珍作でした。何となく大作を気取ったオーラを感じなくもないのですが、そこはしっかり90分という観やすい時間におさめてはあるので、ちょっとした退屈しのぎに闇鍋的なタイ映画でも観ようかなあなどという気まぐれにとらわれている人にオススメです。