町の住人ぐるみで主催されたマンハンティング・ゲームに放り込まれた男
ファンタ系映画祭で大絶賛された、世界熱狂のサバイバル・ムービー!!
(アット・エンタテインメントHPより)
街の住人が丸ごと襲ってくるというような説明文だったので「2000人の狂人」的な感じかなと思って観てみましたが実際襲ってくるのは6人だけで、アクション的にはかなり地味な映画でした。
主人公のウォーレンは重度のアルコール中毒者で、ヤクの売買でかろうじて生計を立ててるようなロクデナシ。ある時メキシコに自分の娘がいると知り、会いに行こうとする。しかし、メキシコ国境付近のとある街に立ち寄ったところ、そこは人間を狩って楽しむ狩猟祭をやってる異常な街で、ウォーレンはそのターゲットにされてしまうのだった。
という話で、古くは悪魔のいけにえから連なる、「アメリカ南部の田舎町はサイコ野郎どもの巣窟」系映画の一つです。
しかし本作、マンハンティングよりもどちらかというとアルコール中毒の辛さを表現することに注力している節があり、スリルで魅せるエンタメ映画ではなく苦痛と狂気を描いたアート風映画のようにも見えました。
主人公ウォーレンは運転中だろうと何だろうと片時も酒ビンを手放せないアル中患者。
酒が切れかけると手が震えて銃の狙いも定まらない。
しかし、酒さえ切れてなければこの距離の射撃は余裕。
元兵士という肩書なので、いざマンハンティングになった時の反撃が実に楽しみなところです。
ウォーレンも幼い娘に会いに行く手前、一応断酒を試みるのですが
耐えきれずに液体ハミガキを飲んだり、洗剤からエタノールを抽出して飲んだりとそれはもう鬼気迫るほどに辛そうなアルコール禁断症状の苦しみを見せます。極端に色彩の乏しい砂漠の映像がほとんどを占める中、酒が切れかけている時に映し出される悪夢的幻覚のイメージは赤を基調としていてやたら気合の入った鮮烈なおぞましさ。
そしてよそ者・町の住民を含めてロクデナシと判定された5人が選出され、
6人3組のハンターたちが砂漠に放り出された彼らを追い回す狩猟祭がはじまります。
なんでそんなことを?
という疑問には「あなたに理解できるわけがない」と言われてしまうので気にしないようにしましょう。
夫婦ハンター・スティーブ組の乗ったマツダ・プレマシーとガニ股気味に相対するウォーレン。
さすがアメリカ南部というか周囲に何にもなさ過ぎて隠れ場所もない。
ハンターは皆銃を持っているので、丸腰の獲物たちの返り討ちは一見不可能に思えますが…
「イコライザー」のような「ナメてた奴が実は強かった」系のアクション映画の爽快感を期待していると、案外裏切られることになります。
確かにウォーレンは何人かのハンターを非常に独創的な手法で葬り去るのですが、
ペースがあまりにも遅すぎるし、アルコール切れで青息吐息の意識朦朧、変な幻覚を見まくっている状態。観ていてあんまり気持ちよくありません。
そして、仲間である町の住民まで殺してしまうイカレた男スティーブもまたアルコール中毒。
「こんな狩猟祭はもう古い!これからはアメリカらしく野球やろうぜ!」
などとのたまいながら釘バットを振り回す狂気が実に素敵です。
彼が最強の敵であり、2人のアル中患者が激突するクライマックスはなかなか盛り上がります。
一緒に飲もうぜ!とものすごい良い笑顔で釘バット片手に迫って来るスティーブ。
一体何がそんなに楽しいのか。
そして衝撃のラストシーンでも、全く笑える状況ではないのにウォーレンが声をあげて大笑い。
断酒に成功した喜びなのか、単にヤケクソで笑ったのか、ちょっと図りかねますが相当に奇妙な余韻を残す映画でした。
酒をやめたいと思っている方にオススメです。