ジャンルが何なのかあらすじを見てもよく分からなかったのですが、
ダニエル・ラドクリフの首にヒモ付けてジェットスキーみたいなことしてる変なジャケットに興味を引かれて鑑賞。
しかしこれは相当奇怪な映画でしたね。
常日頃から変な物を見たいと思ってる人間には良い燃料となる作品でした。
無人島で助けを求める孤独な青年ハンク(ポール・ダノ)。いくら待てども助けが来ず、絶望の淵で自ら命を絶とうとしたまさにその時、波打ち際に男の死体(ダニエル・ラドクリフ)が流れ着く。ハンクは、その死体からガスが出ており、浮力を持っていることに気付く。まさかと思ったが、その力は次第に強まり、死体が勢いよく沖へと動きだす。ハンクは意を決し、その死体にまたがるとジェットスキーのように発進!様々な便利機能を持つ死体の名前はメニー。苦境の中、死んだような人生を送ってきたハンクに対し、メニーは自分の記憶を失くし、生きる喜びを知らない。「生きること」に欠けた者同士、力を合わせることを約束する。果たして2人は無事に、大切な人がいる故郷に帰ることができるのか──!?
(公式HPより)
ちなみにこれでもコメディではありません。(多分)
無人島に遭難して絶望し、首吊り自殺をしようとしていたハンク。
しかしそこに死体が流れ着いてきて…
やたらケツからガスを噴出しまくる死体だったので…
この死体に乗って行けば無人島から脱出できるんじゃねえ?
という、いきなり飛躍した発想力を魅せてくれるプロローグに期待が高まります。
感動的なBGMとちょい古風なタイトルロゴ、壮大な大海原を背景に死体のオナラジェットで邁進するという珍妙で幻想的で荒唐無稽なオープニング。こんなの見たこともないし考えたこともないよ。
「スイス・アーミー・マン」とはスイス・アーミー・ナイフ(十徳ナイフ)にかけられており、このオナラジェット死体がまるで十徳ナイフのように便利な存在である、という意味らしいんです。主人公ハンクが遭難から生還するためにこの死体(メニー)を活用するというわけですね。
公式HPでも、わざわざ10通りの使用方法を解説してあったりします。
もちろん一番使用頻度が高いのが強力なオナラジェットで、これは飛行も含めた推進力としては当然ですが、火炎放射器としても、銃としても、様々な場面で大活躍。道具として使えるだけではなく、本作のテーマ的存在でもあります。
つまり本作は紛れもないオナラ映画です。本作から何やらヒューマンドラマ的な高尚なテーマや教訓を読み取ってありがたがる人がもしかしたらいるのかもしれませんが、私にはこれが単なる下品なオナラムービーにしか見えませんでした。
死体のメニー役はあのハリー・ポッター役で世界的にあまりにも有名過ぎるダニエル・ラドクリフです。しかし、死体という割には開始20分ぐらいで早くもペラペラしゃべりだすのであまり死体という感じがしません。むしろゾンビに近い。
あのファミリー向けな健全すぎるお顔の人が、屁をブーブー噴出したり口から濁った水をドバドバ吐き出すわけです。こびりついてしまったハリーのイメージを払拭したいのかもしれませんがいきなりちょっとエキセントリックすぎる気がします。
しかしそんな彼が口から噴出する水を、遭難中とはいえ喜んでガブガブ飲みまくるハンクも相当にいかれた人間です。彼は疎遠な父親や片思いの人妻など様々な問題を抱え込んでいる悩み深き青年ですから、話す死体メニーとの触れ合いを通じてそれらに解決の道筋を見出すドラマなのであろう。…などとボンヤリ考えながら鑑賞していました。
しかし、触れ合いと言っても限度があります。
落ちてた週刊誌やハンクのスマホ画像を見て興奮したメニーが、ハンクに女装させてイチャつき出すという謎の展開。
デートのシミュレーションをするにしても、遭難中の森でわざわざ映画館やバスを再現するなど狂気の沙汰と言わざるを得ません。こういうシーンがやたら凝っており長い。
というか明らかにこの辺が本作のメインであり、私はもしかしてゲイムービーを観ているのだろうか? とすら感じました。
なんせ水中キスシーンまでありますからね。そこで感極まって(?)特大の屁をこいて水面から空中に飛び出すというね。奇怪にもほどがある光景なのですがスローモーションで感動的なBGMまで流すので、なんとなく感動しなければいけないような気分になりました。画面に映ってるのはラドクリフの尻なのにね。音楽と演出の力って絶大なものですね。
そしてアニマルパニック好きにはちょっとうれしい「クマとの戦い」がクライマックスに配置されていたり、ラストでは片思いの人妻や疎遠な父親とも対面するのですが…
あのオチはなんなんでしょう。
私には「人前でオナラしてもいいじゃないか」というメッセージしか読み取れませんでしたね。
よくねえよ、と言いたくなりましたが。それとも「恥を恐れるな」的な意味なのかな…
まあそれだけにしてはやけに感動的かつ芸術的な演出であり、
オナラを噴射しているダニエル・ラドクリフを観て感動の涙を流しそうになりながらも、それはおかしいだろ、とこらえる。
などというやり場のない感情の矛先に戸惑いもしましたがそれも含めて非常に奇怪な映画を観た。という変な満足感はありました。
特に誰にもオススメしませんが下ネタとかゲイ的描写を許容できる方は観てみても良いかもしれません。