製作:1981年カナダ
発売:ソニー・ピクチャーズエンターテインメント
名門私立金持ち高校の成績優秀者グループ通称「トップ・テン」の1人バージニアは、それなりに楽しい高校生活を送りながらも時折奇妙な幻覚に悩まされていた。それは数年前の交通事故の後遺症であった。症状は次第に悪化していき、幻覚の内容が殺人行為になっていく。
そして実際にトップテンのメンバーが一人また一人と失踪し始めた。
「ナバロンの要塞」「最後の猿の惑星」で有名なJ・リー・トンプソン監督が流行に乗り遅れまいと撮ったサイコ系スラッシャーホラー映画。尺は110分と長め。
原題は「HAPPY BIRTHDAY TO ME」。
この映画、「トップテン」とかいうものすごくバカそうなエリート金持ち高校生たちが一人ずつ血祭りに上げられていくというありがちでシンプルなスラッシャーものかと思いきや、意外と話がゴチャゴチャしていて分かりにくく、先読みが全然出来ません。一体どんな真相が!?とかなりワクワクする展開ではあるのですが、オチは想像以上にトンデモでズッコケ必至な反則技でした。オチで脱力する映画ランキングを作ったら結構上位に入るかもしれません。
まず、本作は殺人シーンがなかなかユニークで良いです。前半の殺人シーンでは犯人の顔を画面に映さず黒い皮手袋を中心に見せてくるというダリオ・アルジェント的な手法を使ってきます。ストーリーの分かりにくさと相まって、アメリカンホラーと言うよりはジャーロに近い雰囲気。
↑ベンチプレスをやってる奴に「ウェイトを追加して」と頼まれ、限界まで増やした後にセーフティーバーを外し、金玉にウェイトを落とす。トレーニーにとっては悪夢としか言いようがない素晴らしい殺害方法。
これに限らず被害者は殺される直前まで殺人者を信じきっており完全に無警戒な様子です。ということはトップテンの中に犯人がいるパターン。
というか、ジャケ絵を見るとどうやら主人公のバージニア自身が犯人のようです。彼女はメンバーを殺している幻覚を見てしまう…とか言ってますが幻覚ではなく本当に殺していたというわけですね。中盤以降は殺人者の顔も映るので、そこで犯人はバージニアであると確定します。いや、したはずでした。
彼女がおかしくなった原因が「事故後に受けたトンデモな脳手術」にあるらしく、そこに「誕生日」がどう絡んできて殺人に至るのかが全く想像が出来ない。
ちなみにそのトンデモな脳手術を行う回想があるのですが、そこが一番スプラッターでした。無理やり脳みそを露出させられグチュグチュいじられるのはいつ見てもキツい。「武器人間」ほどではないにしろ1981年の映画にしてはかなりエグイです。
で、そんな手術をする羽目になった事故の原因は?
というのがまた恐ろしく酷く、バージニアの誕生日パーティにトップテンのメンバーが誰も来てくれなかったことに腹を立てた母親が酔っ払い運転をして橋から落ちたから、という話。
バージニアがおかしくなり始めたのもトップテンが酒に酔って橋でチキンレース的なゲームをしたせい。
要するにこの映画の登場人物がみんなバカでアホで性格悪すぎるせいでこうなったのでは?
と思いましたが、クライマックスに至るとまたおかしなことになってきます。
バージニアは殺したメンバーの死体を集めてイスに座らせ、ケーキを持ってきて「HAPPY BIRTHDAY TO ME」と一人で悦に入ります。
殺人者が死体を飾って悦に浸るシーンと言えば「アクエリアス(86年伊)」のあの名場面を思い浮かべますが、もしかしてこれが元ネタなのかと考えてしまう良いシーンです。ここだけ見れば本作が何となく名作に見えてこないこともない。
ところが、そんな素晴らしいクライマックスから突如繰り出される衝撃の真相にははっきりいって脳がついていけない。
犯人かと思われたバージニアが、顔の皮をベリッと剥すとそこには別人の顔が!
犯人は完璧すぎる変装術でバージニアに成りすましていた別人だった!
コイツ誰だよ!!忍者か!?っていう。
いや、殺されたと思われていたトップテンのメンバーなんですけど、印象が薄すぎて驚きより混乱が勝ってしまう。
しかも動機がものすごくとってつけた感。
誕生日とか脳手術とかトップテンとか何も関係ない話ですよ。ラスト数分でこの怒涛の超展開。
殺人は幻覚と見せかけて本人がやってると見せかけて実は変装した別人によるものでした~…ってそりゃ訳分からんくもなる。あんな手の込んだことする意味が全くないし、バージニア以外を殺す意味も無いし。一体何なんだ。
ということで、奇怪さという点においては今でも充分通用する珍作だと思います。変なものを観たいという方にはオススメです。