2017年南アフリカ共和国製作。
最近暗くて陰鬱な映画ばかり続けて観ていたので、
そろそろ明るく爽やかなアクション映画が見たいなあ…。
ということでコレを借りてみたんですが、
思わず「何だこりゃ」とつぶやいてしまうぐらい変な映画でした。
と言っても別に珍奇な話だったり奇怪なシーンがあるわけでもないんですがね。
「残忍な強盗団と女教師、狩られるのはどっちだ!?」
…なんて煽り文句を見るに、
これも「イコライザー」みたいな「ナメてた奴が実は強かった」系アクションなんだな!
って期待するわけじゃないですか。
予告編でも完全にそういう見せ方でしたし、
「教師のエマが帰宅中に強盗団に拉致されてしまい、いたぶり殺されそうになるのだが、
実はエマは幼少時から特殊部隊的な教育を受けてきたスーパーエリート戦士であった」
っていうお話ですしね。
この手の映画なら序盤でエマが弱そうに振舞うほどに、本性を現して反撃に転じてからのカタルシスが増すというものでしょう。
普通に考えれば何のひねりもない分かりやすい直球映画のはずなんですが…
まずはジャケットの詐欺っぷりから。
っていうかこのジャケットの人は誰なの?
本編に出てくるエマと同一人物には見えないんですが…?
そんな服一回も着とらんし…?
ジャケットではかなりワイルド系の姉御と言った雰囲気なのに、
本編に出てくるのはむしろ小動物っぽい感じの可愛い系。
大変美人ではあります。が、とてもじゃないけど強そうには見えない。
でも戦闘モードになったらイメージ変えてくるのかな?
…と思ったら最後までそのまんまでした。
つまりエマは最初から最後まで見た目通り弱いんです。
じゃあ強盗団と戦えるわけないじゃん?と思うところですが…
そんな可愛らしい女教師と互角の死闘を繰り広げることになる強盗団の方は、一見すると屈強な男の6人組。
彼らはこれから大きな仕事をするところらしいのに、移動中に警官に目撃されてしまいます。が、その警官を殺してしまうほどの冷酷非情な凶悪犯。さすが南アフリカですね。強盗のレベルも違います。
…と思いきや、何だかメチャクチャ弱そうです。凶悪な強盗どころかもはやチンピラとすら言えないようなヘナチョコ野郎ばっかり。特に↑コイツは酷い。下手すると私でも勝てるのではないか。マトモな悪党と言えそうなのはリーダーであるボスマン1人だけ。役に立たないメンバーをどやしつけるボスマンを見ていると気の毒になってくるぐらいダメ人間だらけです。
エマの追跡に手間がかかり過ぎて本来の目的である強盗が出来なくなっちゃってるのが本当に気の毒すぎる。 それはそれとして、この映画、異様にタメが長い!
本作の尺は1時間42分ですが、エマが強盗団と戦い始めるのは1時間を過ぎてからです。
それまではアフリカの荒野でのエマと強盗団との追走劇がじっくりゆっくり描かれます。
ポンコツ強盗団のメンバーの人物描写がなかなか細かくて無駄に丁寧なのが良いような悪いような…。別に退屈するほどつまらないわけじゃないんですよね。
追走劇の合間合間で娘に施した戦闘教育について延々語りまくるエマの父親。
「アイツが本気を出してしまったら危険なんだ…俺はむしろ強盗団が心配だ…」
という感じの語り口。
後ろで聞いてるオッサンのやる気の無さが笑えます。
最初の方は相槌打ってたけど後半は「まだ終わらないのかな…」感丸出し。
決していい加減に作られた映画では無いのですが、
こういう変なところで気を抜いてるのがちょっとツボにはまります。
そして終盤でようやくエマと強盗団が直接戦いはじめるのですが、
「私を追わないで、あなたたちを傷つけたくないの」
などと戦力差をアピールしまくっていたエマといい、
さんざん娘の天才性を語りまくっていたオヤジといい、
エマは一体どれほど強いんだ!?と1時間以上かけて期待を膨らませてきたにも関わらず、
全然大したことなくてもう逆にビックリします。
あんなにもったいぶってその程度なの!?まだ弱いフリしてんの?してないの!?というね。
もうアクションシーンなど一切ないと言っても過言ではないです。
殴ってるシーンが何回かあるけど明らかに当たってないよ。
そのうえ強盗団は追跡中にバッチイ生水をゴクゴク飲んだせいで、
ただでさえ弱そうなのに体調不良でさらに著しく弱体化。何してんの本当に…
こいつら一体どこまで弱くなるんだ…と心配になってくるほどです。
しかもせっかくエマに銃を突き付けてもなぜかわざわざ銃を投げ捨てて素手で戦ってみたり。
まだバトル中なのにわざわざエマに背を向けて油断しまくってみたり。
わざと負けに行ってるとしか思えん…
ということで、弱者同士が非常にしょっぱいバトルを繰り広げるノンアクション映画でした。
これはこれで非常におもしろいです。
派手さもスケールもテンポもインフレしまくっているハリウッドの大作映画とは対照的にデフレを極めに行ってる珍作として楽しむのが良いかと思います。