これ、メチャクチャ安そうなジャケットですよね。どえらい安直な邦題だし。
後ろで斧持ってる殺人鬼のシルエットもあるし、
きっとキャンプに行った若者グループがアックスマン的殺人鬼に襲われるだけの
しょうもないC級スラッシャーホラーなんだろうな…下手したらZ級かもな…
と観る前のハードルは下がり切っていました。
が、よく見ると
「人々がひたすら自滅していく、驚愕の内部崩壊キャンプサイト!」
…などという煽り文句が。
え、スラッシャーものじゃないの?
「屍獣」って何?
6人の若者グループがボランティア活動のため
田舎のキャンプ地にやってくる。
そこで悪ふざけが過ぎたためにうっかり死んでいくアホ共。
…ストーリー的にはそれ以上何とも言いようがない感じの
実にマヌケな内容のホラーコメディでした。
まあ、コメディと言ってもそこまで露骨に笑いを取りに来ているわけではなく、
一見すると「悪魔のいけにえ」と同じような、ざらついた空気感のあるシリアスホラーのような趣があります。あくまでも趣だけですが、それはそれで撮影技術的にはレベルが高いように見えないこともない。
「獣人プレデター」みたいに夜のシーンも昼間に撮ってますがあれと違って笑っちゃうような露骨な安っぽさはありません。
製作は2012年のようですが、見た目には1970年代と言われても信じてしまいそうな(スマホは出てきますが)、色褪せて少し荒い映像が全編にわたって映し出されます。グラインドハウス風と言っても良いですかね。ゴアシーンはそれなり。
ただしラストシーンの一瞬だけは完全に全力で笑いを取りに来ています。
ある意味本編の全てがそのラストの一瞬のための前フリに過ぎなかったとすら感じる強烈なインパクトを持つ名シーンです。
ちなみにプロローグで警官と正体不明の怪物女が交錯する様子が映りますが、あれは時系列的にはラスト後のことなので本編を見終わった後にもう一度見直してみました。最初に見た時は実に不気味な印象でしたが、真相を知ってから改めて見るともう100%お笑い映像でした。
恐怖と笑いは紙一重…「悪魔のいけにえ」でも覚えのある感覚です。
あの唯一無二の奇跡的な雰囲気に最も肉薄した映画と言えるかもしれません。…言いすぎか。
それにしても「
目ん玉串刺し」になる様子をこれほどコミカルに見せつけた映画はおそらく他に存在しないでしょう。
そんな悲惨な光景を笑いに変えるため、どれだけの布石をうってきたのか…それだけが目的でこんな映画を撮ったのか…
あとから考えるとその下らない努力に脱帽するほかありません。
とは言っても、そんな細かいことを気にせずダラダラ観ている限りでは、
本作は淡々と不幸な連鎖反応が起こっていくだけの乾いた映画です。
超自然的な曰くがあるようなないような土地で、
身の回りの人間がバタバタ死んでいくからオレは死神なんだ、
と語るアレな若者がいたりと若干ハッタリを効かせながら、
基本的には非常に下らない事故で若者が死んでいきます。
チェーンソーで邪魔な木を伐採して歩道を作るというボランティア活動にいそしむアホ女。
こんな危険な物を遊び半分でブンブン振り回す人間には共感も何も出来ませんが、
思い返せば本家「悪魔のいけにえ」でもレザーフェイスがうっかり自爆していたような気がします。
自爆したアホ女には全く同情の余地はありませんが、
とんでもないグロを見せられた揚げ句「助けられなかった」という無駄な罪悪感まで
植え付けられてしまったこのナイーブな青年は実に気の毒でした。
ボランティア活動に励むほど真面目だったのにねえ。
まあ一見無意味なそんなこんなも大体は笑撃のラストまで持って行くための布石でしかないのです。本作は80分とかなり短めですし、ファイナルデスティネーション的な死に方を眺めながらその瞬間まで暇をつぶすくらいのことはできるでしょう。
とにかくラストの悲惨すぎる光景と、それを笑いに変換するために積み上げた努力には一見の価値ありの珍作です。