『デス・レター 呪いの手紙』(2017)
何という安直なタイトルか?
そのうえ、恐怖の都市伝説ホラー! などと言われるともう
おバカ系のティーン向けライトホラーを想像せざるを得ないところですね。
と思ったんですが、
本作は意外にもロシア産の映画でした。
ロシア映画と言えば…映像は寒々しく色彩感に乏しく、お話は重苦しく悲劇的。
良く言えば重厚感があって文学的。
…というイメージしかありません。
なので私は普段ロシア映画はほとんど観ないのですが、
本作は78分とかなり短めだしテーマ的にも軽そうな雰囲気がなくもない。
これまでのロシア映画のイメージを覆してくれるかもしれない…
という期待を持って鑑賞してみました。
…ですが、本作はそれはもう頭から尾っぽまで「重い!暗い!寒々しい!」の三重苦。
白黒でもいいんじゃないかと思えるぐらい色彩感も無い。
今までろくにロシア映画を観ていないにも関わらず、
「これぞロシア映画だな」
などと得心してしまうぐらいに典型的(たぶん)なロシア映画でした。
ロシアと言えばドストエフスキー。
ドストエフスキーと言えば罪と罰。
なのでロシア映画ってよく罪とか罰とか言ってるイメージ。
単なるイメージに過ぎないはずなんですが、プロローグから早速こうもイメージ通りのものが出てくるとそれはそれで驚き。
100年ほど前のロシアの寒村、手紙の配達人をしていたこの男は
金目のものが入ってないかと手紙を勝手に開けてしまったところ、村に疫病が流行ってしまったらしいです。そんな昔に細菌テロめいた仕掛けが!?と思いましたが、そうではなく呪いの類でした。
そして舞台は現代のロシアに移り、その「呪いの手紙」の配達人に選ばれてしまうのは
建設会社社長お付き運転手の青年イーゴリ。
はじめは間違って会社に届いた手紙を正しいところに運んでやろうとしたのが切っ掛けで
おかしな現象に見舞われていくという筋立てですが…
イーゴリは職業が運転手だけあってベンツを運転する場面が多いんですが、やたらよそ見をしまくりで無駄にハラハラします。別に本作に限ったことではないんですが、映画を観ているとドライバーが運転に集中していないシーンは結構多いものです。
が、それは分かっていても本作は特にひどい。
ロシア特有のお国柄か?と思ってしまいますよこれじゃ。案の定、イーゴリは手紙に気を取られすぎて自転車のオッサンをはねてしまいます。
こっちとしては「これまずいじゃん、会社もクビだし人生終わったんじゃ?」
とも思えるほどの事故を起こしてしまったわけなのですが、自転車のオッサンは何でもないとあっさり去ってしまいます。
どう見てもケガをしていないわけがない当たり方だったのに…ロシアではこのくらい日常茶飯事ということなのか?
ちなみに本作ではこれも重要な伏線となっているのですが
真相を知った後に思い返すと本当にあり得ない事故でした。
あんな過去があって、あんな簡単に事故る職業運転手とか救いようがなさすぎる…。
手紙をちょっとでも開けようとすると、すごい勢いで少女の怨霊が迫って来て
近くにいた無関係な人に不幸をもたらしたりします。
何で?と言いたくなりますがともかく絶対開けちゃいけない雰囲気だけは伝わる。
でも別に読みたくないしなあ…。
そもそも中身に興味が湧かない…。
ちなみに何らかの「罪」を背負っている人間が配達人に選ばれるらしいです。
そして時間の流れがおかしくなる現象まで起き始め、SF的な要素までチラつかせはじめます。
なかなか刺激的な展開ではありますが、
絵的にはもうホント色が無くて欝々としていて厭世的な気分にすらなってきます。
なぜか婦人警官まで巻き込んで手紙の届け先とその人物の素性を探ることになるのですが、その婦人警官までもが運転しながらスマホいじりまくり、わき見しまくり。
警官もやるってことはやっぱそういうのに緩い国か?
と思ってたら今度は派手に自爆。
そしてイーゴリの背負っていた「罪」もまた、
過去のわき見運転が発端で起こった悲劇なのであった…
(冒頭のオッサンとの事故のことではない)
そして何と、手紙の正体も、受取人の正体も、
とってつけたような激しくどうでも良いものでした。
演出的にはやっぱり何か文学的な雰囲気が漂ってるので
「もしかして自分が意味を読み取れてないだけ?」
みたいな不安を感じなくもありませんが、
つまるところ本作のメッセージは
「運転中は余計なことするな! 運転に集中しろ!」というものでした。正論ですね。
でもホラー映画でそんな主張わざわざするの?
手紙とかスゲーどうでも良かったんですけど?
間違っても「この手紙を受け取った者は、死ぬ――」なんて映画じゃないよ。
…などと文句を言うのはとりあえずやめておきます。
私も事故は起こさないようしっかり前を見て運転しよう。素直にそう思いました。
なお、娯楽映画としては
「出来は良いけど特に楽しくもない」感じ。
まあまあ暇潰しにはなるでしょう。