何だこの凄まじい瘴気を放っているジャケットは!?
「女VS女」と言っても美人同士のなれ合い的なやつではなく、
ましてや女性格闘家の試合的なやつでもなく、
なんかフツーのオバサン同士のマジ喧嘩であることが余すところなく表現されている凄いジャケットです。
これはもう即レジに持って行かざるを得ませんよね。
■商品説明
殴る!蹴る!投げる!絞める! 女vs女、本気のガチ喧嘩
■女vs女、本気のガチ喧嘩。アクション映画の極北、ここに登場!
女同士による本気の喧嘩、それが“キャットファイト”だ!
「カルト的面白さを保証する!」と、ハリウッドレポーターも絶賛!!
トロント映画祭、ヨーテボリ映画祭ほか世界を熱狂の渦に落とし込んだあまりにエクストリームなヴァイオレンスとマッドネスを堪能せよ!
■特大音量の効果音の洪水と優雅な音楽がハードアクションを彩り、盛り上げる!
まるでマシンガンをぶっ放すようにパンチ&キックを繰り出す女たち。
そのパンチやキックが相手にヒットした時の打撃を表す効果音の音量がとにかくデカく、回数も尋常じゃなく多い!
そして、さらにその背景に流れるのは、世界的に有名な、優雅な音楽の数々。
■超実力派女優が大激突!個性派女優たちによる夢の競(狂)演!『6デイズ/7ナイツ』『ボルケーノ』『サイコ』などで個性を発揮してきたアン・ヘッシュ、医療TVドラマシリーズ『グレイズ・アナトミー 恋の解剖学』で人気を博したサンドラ・オー、そして『クルーレス』で火がつき『バットマン&ロビン Mr.フリーズの逆襲』でバットガール役でゴールデン・ラズベリー賞を受賞したアリシア・シルヴァ―ストーンら、夢の競演!
(松竹DVD倶楽部より)
なんか上の説明文を読むとさりげなく「ゴールデン・ラズベリー賞を受賞したアリシア・シルヴァーストーン」とか書かれてますがこれ不名誉な方の賞ですよね。一瞬なんか権威ある賞か何かかと思ったじゃないですか…
「夢の競(狂)演」といい実にうまいこと言ってる感あふれる紹介文です。
中東とアメリカとの間で大規模な戦争が勃発した世界。
かつて大学の友人だったアシュリー(アン・ヘッシュ)とヴェロニカ(サンドラ・オー)
が何だかんだくだらない切っ掛けで憎しみ合い、
ガチンコリアルファイト(※全3ラウンド)を繰り広げるという狂気じみた内容の映画でした。
はっきり言ってめちゃくちゃ面白いので、今回はかなり画像多めで見どころを紹介していきたいと思います。最終ラウンドの勝敗まではネタバレしませんのでよろしくお願いします。
アン・ヘッシュは一応メジャー系の実力派女優だと思っていたんですが、
最近は「
シールド・フォース」などにも出ていたり、B級志向になってきた感がありますね。
大変いいことです。
売れない画家・アシュリー。
評論家にはボロクソ言われ、不本意ながらケータリング業で
日銭を稼ぐ貧しい日々。この年になってこれは厳しい。
軍事産業幹部の妻で裕福な暮らしをしているヴェロニカ。
パーティの主賓として、旧友アシュリーに偶然出会ってしまう。
こっちは中東との戦争が起こったおかげで何もかもがうまくいき、
旧友との再会でも余裕で見下しモード。なかなかムカつく表情です。
なんという煽り態勢。女性特有(?)のマウントの取り合いが
実に見苦しい。しかし舌戦はやはり成功者に分がありますね。
いくら金持ちの旦那をゲットしたからと言っても、
本人自身に何か取柄はあるのか?
画家で身を立てようと日々もがいているアシュリーには腹に据えかねるものがありました。
舌戦で勝とうとするならばそこを突くしかありません。
ファーストアタックはヴェロニカ!
右ストレートがチンに見事に炸裂。
打撃に関してはヴェロニカに一日の長があるようです。
なんか無駄にオシャレなBGMをバックにまずは拳のぶつけ合い。
殴り合いでは分が悪いとみたアシュリー、チョークスリーパーで大逆転の図。
絞め技ならば負けん!
…凄まじいインパクトの絵面ですね。
ジャケット画像に使いたくなるのもうなずけます。
好事家を誘蛾灯の如く引き寄せる、実に香ばしい迷バトルでした。
とりあえず第1ラウンドはアシュリーの勝利。
アシュリーのチョークスリーパーで敗北したせいで、
あろうことか2年間も昏睡状態に陥ったヴェロニカ。
目を覚ました時には夫は事故死、子供は中東で戦死、財産は治療費で使い切ってしまったという悲惨極まりない状況に。
敗者はすべてを失う。それがこの世界のルール。
それとは対照的に、喧嘩に勝利したアシュリーはようやく画家としての名声を得て、
子宝も授かり、成功者としての道を歩んでいました。
そんな彼女の姿を見て、ヴェロニカが許せるはずもなく
第2ラウンドの火ぶたが切って落とされます。
「ぶっ殺す!」
たったこれだけのセリフがなぜこんなに面白いのか?
個展にふらりとやって来て、破壊の限りを尽くして逃げたヴェロニカを追うアシュリー。
オバサン同士の喧嘩なのに、異常に本格的なパンチを繰り出す2人。
ボクシングの修行シーンがなかったのが逆に不自然に感じます。絶対鍛えてただろ?
バックで仰々しく流れているのはベートーベンの「運命」。
パンチがヒットした時の効果音もやけにデカくて迫力満点。
こちらを笑わせに来ているのは明らかですが、こういう変な角度から笑いのツボを刺激してくるアクション映画というのは相当珍しいと言えるのではないでしょうか。
それにしてもこのシーンにおけるヴェロニカの
怒涛の高速右フック4連打のハンドスピードは凄まじいものがあります。
後姿なんでスタントマンかもしれませんが、見えないぐらい速い。
全てを失っても、おそらく女子ボクシング界でのし上がれることでしょう。
…そういえば黒い服を着ていますね。
夜間のストリートファイトで黒い服はヤバイ。
パンチが余計見えづらくなります。
しまいにはトンカチやレンチまで持ち出して狂気の凶器攻撃で
さらにボコスカ殴り合う2人でしたが…
第2ラウンドはヴェロニカの勝利。
やはり地を這う者のハングリー精神こそが殴り合いの喧嘩においては
重要な決め手となるようです。
これでアシュリーも2年間の昏睡。
天丼的に彼女も上手く行きかけていたその全てを失います。
そして全てを失った者同士、最終決戦の行方は…
アメリカ国歌「星条旗」をBGMに…
前蹴り!! 投石!!…女性同士の喧嘩ってもっと陰湿なものを想像しちゃうんですが、
本作の主役2人は、それはもう漢らしく正面切っての物理攻撃。
中東とアメリカとの戦争がストーリーのバックグラウンドでスパイスのように効かされていますので、これも何かの皮肉とか暗喩が込められているのかもしれません。
と言っても、特に社会批判のような深みを感じるような映画ではなく、
単純にいい年のオバサン2人が全身全霊で互いの肉体を破壊し合う様を鑑賞してゲラゲラ笑うという楽しみ方で充分イケる珍作かと思います。
ただ男の目線から見ると、「お前らなんでそんなにいがみ合ってるの?」という部分で理解が及ばない面もありますので、そこら辺は女性の意見も伺ってみたいところではありましたね。
こんなもん見たがる女性がいるか?ってのが問題ですが…。
あと、第3ラウンドの戦闘シーンが第1、第2ラウンドよりもスピーディさと迫力において若干クオリティが落ちるという難点もありました。
決勝戦なんだからそこはもっと盛り上げるべきではないか?
そんな残念さもありますが総合的に見ればかなり満足度の高い作品でした。
ジャケットの画像が心の琴線に触れたのであれば観て損はありません。
その手の人にはオススメです。