ひとつ前の記事「ヴァイラル」とは何の関係もありませんが、
タイトルつながりで何となく観ました。
しかしこれはそんな軽い気持ちで気楽に鑑賞するような映画ではありませんでしたね。
私がこれまでに観た映画の中でもトップクラスにイカれた変態映画でした。
一体何を食べて育つとこんな変態映画を撮るような超弩級の変態が出来上がるの?親の顔が見てみたいわ!…と思うところですが本作の監督はブランドン・クローネンバーグ。
なんとあの世界的に有名な変態映画監督デヴィッド・クローネンバーグのご子息でした。
つまり筋金入りの超エリート変態監督というわけですね。
「父親の作風を模倣はするけど、変態度では負けられん」
という意地みたいなものを感じなくもなかったです。
そこは負けてもいいんだよ。そこをインフレさせなくてもいいよ。
一応近未来SFサスペンスというジャンルになるのでしょうが、
なんと本作は
「有名人の病原菌を保管しておいて、感染させてくれるビジネス」
をやっている企業が多数存在するような世界設定。
主役はそんな企業の一つルーカス社で働く営業マン。
いや、こんな設定よく思いつきますよほんと。あり得ないって。
憧れのセレブと同じものを身に付けたり所有したりしたい…
みたいな欲望を突き詰めたからと言って、
「同じ病気に罹りたい」なんて欲求を果たして一般大衆が持つようになるのか?
……
いや、ならんだろ…
と考えてしまうのは私が特定の個人に熱狂した経験が無いからでしょうか?
そんなことないと思うけどなあ…。
「このウイルスはレアですよ」
「感染するのはあなたが初です」
「直接うつされた感じが味わえます」
というようなセールストークで病原菌を売りまくる主人公シド・マーチ。
なんで金を払ってわざわざ病気に罹らなきゃならんのだ…
「ウイルスの感染はもはや性行為に等しい」みたいなこと言ってましたけど
ワカらんぞ…理解できなさすぎるぞ…。
本作はそんな設定のお話なので、登場人物の誰にも共感できないし
どいつもこいつも何を考えてるのかわからんし
その結果ストーリーがやたらと難解に感じます。
ルーカス社のドル箱セレブ「ハンナ・ガイスト」という女優?が
中国で感染してしまった謎のウイルスを巡るサスペンスを軸に
話が展開することはするのですが、
感染したからさっそくそれを売りたいと申し出るハンナや
採取したらそれをさっそく自分に注射して苦しみまくるシドとか
そのウイルスほしさに暗躍するライバル企業がいたり、
イカリング大好きな強面コンビを使ってシドを監禁するやつが現れたりとか
もう本当にわけが分かりません。
発想が常人離れしすぎています。
イカリングは一体何のメタファーなの?
しかもこの世界ではセレブの病気をもらうだけではなく、
セレブの細胞から肉を培養してステーキやソーセージにして
売ってる商売まであってそれが大繁盛してたり、
皮膚片を培養して貼り付けて悦に浸ってたりとヤバい商売が横行しまくっています。
病気もらいたいだけじゃなくカニバリズム上等とかもう一体どれほどの変態が闊歩する近未来世界なのか?
まあ、冷静に考えると実害がない分病気をもらうよりはマシですかね。
吐血を際立たせるために白を基調とした画面構成をとるなど
映像的には一級品の趣がありまして、さぞかし父親からエリート教育を
施されていたんだろうなあ…努力が実って良かったね…
と微笑ましい気持ちになりかけますが、映像は良くても内容を鑑みるとそうも言ってられません。世が世なら危険思想人物として逮捕されて監禁拷問されてもおかしくない。
本作はおそらく、「変なモノが観たくて観たくてたまらない」という好事家にはウケると思いますし、私も「珍しいものを見たなあ」という満足感は得られましたが、
そうでない人にとっては多分
「何だこれ!キメェ!」としか思われないことでしょう。
ブランドン・クローネンバーグ監督にはせめてもう少し
「スキャナーズ」や「デッドゾーン」のような父親の娯楽作も見習って自作に反映させてほしいなと思いました。
ま、変態性を突き詰めたとしてもそれはそれで今後注目に値しますが…。