人間をゾンビっぽい怪物に変異させてしまうハリガネムシのような寄生虫(中国発)が世界中で大流行。
それをとある田舎町の姉妹からミクロな視点で見た終末系パニックホラーです。
私も寄生虫のような気持ち悪いものを観るのがけっこう好きという性分ですので
さぞかし生理的嫌悪感に満ち満ちたパニックシーンがあるのだろうと
期待して鑑賞したのですが、低予算のせいかそれほどでもありませんでした。
寄生虫感染者は耳や目からウネウネした虫を出してるゾンビといった地味な風情でしかも出番が意外と少ない。安い。ケチりすぎ。
オバマ大統領を出演させたりするから金がなくなるんですよ全く嘆かわしい。
それはそれとして、本作の見どころはやたらとエゴイズム全開な主人公の行動にあります。
女子高校生だしある程度は仕方ないかなとは思いましたが、
それにしてもあそこまで躊躇なくナチュラルに自分中心で物事を考えられるとなると、
本作の製作者もおそらく寄生虫パニックそのものよりも
自分さえ良ければ被害を拡大させることも厭わない人間の愚かさをまず見せたいのではないか
と思えました。視覚的サービスシーンがないのは多分そういうわけなんですね。
ただ主人公エマとその姉ステイシーは自分勝手であると同時に
非常に愛情深い人間としても描かれているわけで、
そこに共感できるかできないか、つまりあなたは感染を拡大させる側なのかどうか?
というのを問われているような気がしました。
本作には大人の姿はほとんど出てこず、田舎町の高校生たちを中心に
ストーリーが展開します。
今どきの若者らしく、スマホやパソコンを使いSNSでのコミュニケーションが生活の多くを占拠しています。
常に誰かとつながっていなくては不安。
食事中でも構わずメッセージのやり取り。
私から見るとこれはこれで非常に病的な生態に見えますが、これが現代の常識的生活だと認めざるを得ないのでしょう。
しかしそんな日常も中国からもたらされてしまった虫インフルエンザという奇病の蔓延によって街が封鎖されるという異常事態に見舞われます。
そんな中でも馬鹿な高校生たちはパーティで乱痴気騒ぎ。
それほどまでに、人とつながり人の集まりに参加したい。という人の気持ちは私には理解しにくいものがありましたが案の定感染者が紛れ込んでおりパーティが大パニック会場化。
そこで姉のステイシーも感染してしまうという悲劇に見舞われるわけなんですが…。
彼女らは感染拡大を防ぐために軍がとっている方策に対して、全く持って非協力的。
「どうしても街を出たいの」って言ってもねえ…
そんな感情論を聞いてもらえるわけないのに情で訴えようとする女性にはやっぱりイラついてしまいますね。まあ、それでもまだそこまでは理解しますが。
何とか自力で寄生虫を取り除くぜ!とばかりにえらくバカっぽい手法で寄生虫を引きずり出すシーンはある意味本作最大の見せ場ではあります。
ただの女子高校生ごときが教科書にアンダーラインを引いたぐらいでアメリカ政府でも解決不能な寄生虫騒ぎの解決法を発見できるのはおかしいだろ…とは思うものの
エマたちはそれで治ったと信じているわけで、当局に除去方法を教えた方が良いのでは…
と彼氏に進言されるんですが「姉が連れていかれるから駄目」とあっさり切り捨て。
自分さえ良けりゃいいんだよ!というか自分にとってはこの身の回りの世界こそが全てなんだよ。他の奴らなんてどうでもいいよ。死ねよ。という感じである意味清々しくはあります。
そこが麗しき姉妹愛と完全に表裏一体なものとして描かれているがゆえに、気持ちが悪い。
彼女らに「助かってほしい」と思って鑑賞した人はどれくらいいるものなんでしょうかね?
基本ハッピーエンドを好む私でもこれは「死んで終わるべきだ」と強く感じさせるものがあったのですが。私には彼女らが自覚無き悪にしか見えませんでした。
まあ、映画自体は娯楽性が薄くていまいち楽しいとは思えなかったので
そんなどうでもいいことを延々考えながら鑑賞せざるを得なかっただけとも言えるんですけどね。
でもそんなわけのわからん寄生虫を流行らせた原因が中国だとはっきり言ってたのはちょっと面白かったです。
最近中国に媚びを売るハリウッド映画が多いですからね。
そこはマーケティングを無視した低予算映画の強みかもしれませんね。
世界中が大パニックでスマホの電波も届かなくなったけど
どうにかなんないかな…スマホ使いたいな…とスマホスマホのスマホ中毒。
緊急事態だから当然? いや最初からずっとスマホ使ってました。
非常事態の時ぐらい家にこもってれば感染せずに済んだのに…。
寄生虫も寄生虫同士で集まる習性があるのも皮肉のつもりでしょうかね。