これは凄い。
ジャケットの表も裏も別段変わったところはなく、
あらすじを読んでもジョーズの百番煎じぐらいの凡作だろうと思って観たら
この映画、ある意味極めてました。
私は観たことがありません。
ここまで主要登場人物がバカな映画を…
まずはサメの方から触れますと、
本作は海中の違法掘削工事で深海からやってきた「アルビノのオオメジロザメの群れ」が登場します。何やら無駄に捻りが入ってますが、別に大した意味はありません。やることは泳いでる人に喰らいついたり、ジャンプして船に乗ってる人に喰らいついたりするだけ。
見た目にはある意味インパクトはありますが…
↑潜水艦の如き魚影。どこに背ビレが付いているのか?
2010年代にこのクオリティ。
下手にアルビノ設定にしたため白くてヘボさが際立つ羽目に。
さすがにサメ映画とはいえ平均よりだいぶ下です
まあ、正直なところ本作においてはサメは単なる記号でしかなく、限りなくどうでもよい存在です。
本作の見所は完全に、バカを極めたバカだらけの登場人物たちによる
凄まじく豪快で大雑把なバカ人間ドラマ(?)と言えるでしょう。
普段ならイライラするところですが、ここまで開き直ってバカやってしまうとむしろ清々しくさえあります。
普通のサメ映画なら…いや、サメに限らずともモンスターパニック映画でも
殺人鬼映画でも、たいてい真っ先に血祭りに上げられるようなドチンピラ3人組が本作の主人公です。
こんな奴らを主役に据えたというだけでも、こんなユニークなサメ映画が出来るんだなあと感心しました。
↑実に味のある表情をしながら下の毛もよだつ恐怖話を聞いているバカ3人組。
リーダー格の真ん中は「ミスター複雑」の異名を持つ単細胞。
「ヌッキ」とかいう変なあだ名の超ケバい彼女がいる。
ジャン・クロード・ヴァンダムにちょっと似ている気がする
舞台はニュージャージーのどっかの海水浴場で、ミスター複雑の父親はそこの保安官ですが、
彼らが何者なのかは特に説明がありません。多分ただのプー太郎ですが、3人ともかなり鍛え上げられた筋肉を持っています。といってもナンパにしか使いませんが。
筋肉にはかなりこだわりがあるようで、筋トレをしているシーンが何度も何度も入りポージングもキメます。
しかもサメ退治に行く前にウォーミングアップとしてジムで筋トレします。あとサメの気を引くエサとしてプロテインバーをばらまいたりします。もうヤバイぐらい脳筋です。
そんな彼らはヨットスクールにたむろするエリートボンボン大学生たちと激しく対立しています。ボンボンが原因で友人がサメに喰われ、怒り心頭となったバカ3人組は女連れで爆竹とか花火とかを大量に抱えて海へ行き、サメに投げつけます。もうこの時点でサメ映画史上稀に見るバカな戦闘シーンですが、さらに花火とか爆竹の衝撃で女の子が海に落ちたりします。
どうしてそんな足場の悪いところで見物しようとするのか。
そこで胴体だけとなった一般人の無残な死体も発見しますが、
A「どうせ灰にして海に撒くから省略しても…」
B「いや棺に入れるかもしれないだろ」
C「そんなの棺に入れたら変だろ!」
てな感じのやりとりも難解すぎて頭が痛くなってきます。
というか通報もしないしその後保安官にサメの存在を訴えても却下されたところを見ると
死体は結局放置して紛失したようです。まさかのA案採用。被害者、知り合いだったのに…
そして爆竹で逃げたサメの群れを追うためにエリートボンボンの船に勝手に乗り込み、
ヌッキに盗難をとがめられても
「クソ野郎だからな 説明が必要か?」
の一言で済ましたうえ、
「ガソリン臭い!」と騒ぐ女の子の声を無視して
花火にライターで着火しようとしてそれをうっかり火薬だらけのバッグに落として大爆発。
この一連のシークエンスはまさにバカの極致…
コメディとしてみるとなかなか良く出来ているかもしれませんが
楽し気なBGMは流れていません。
その後ミスター複雑は父親である保安官にしぼられますが、
特権発動でどうにか刑務所入りは免れます。悪役がやることだよね?
被害者の遺留品も死体も何も提出せずしゃべりもせず、
ただただ「サメがいるんだ 信じてくれ」としか言わないので、
保安官にもエリートボンボンにもラジオ局にもたまたまライブに来た歌手にも誰にも全然信じてもらえません。
この辺は「どうすれば信じてもらえるか」を全く考えずにただ訴えるだけしかできない、知恵の回りかねる感じがある意味リアルにすら見えてきます。
今までの彼らの行動を振り返ると、そう受けとらざるを得ません。
バカなんだからしょうがない…
ようやくサメが一般人にも目撃され、
恒例の町長による「ビーチを閉鎖?とんでもない」イベントをこなしたあと、
海水浴場でサメパニックが起きます。
ここは近年珍しいほどストレートなサメパニックですが、所詮海水浴場なので
客が海から上がればそれで終わりです。
なので、エリートボンボンが大きなお船で
ヌッキを連れ出して入り江で船上パーティをしてたらたまたま船が壊れてしまい、サメに襲われるという危機が都合よく発生。
で、保安官がその救出をバカ3人組に丸投げするという猛烈に強引な見せ場が作られます。
「行ってこい」…?
バカ揃いな本作の中でも屈指の「何言ってんだこいつ」なシーン。
なんであんたは行かないの?せめて部下に行かせないの?バカなの?
この人だけはまともだと思っていたのに…。やはり親子か
そしてバカ共は保安官事務所から大量の銃を無断で拝借して武装。
警備とかおらんの?盗り放題ですか?
↑かなり凶悪な絵面です。どう見ても犯罪者、というか犯罪行為中です。
即刻射殺すべき対象に見えます
「水鉄砲と同じ要領さ」って…
絶対違うと思う。
というか何だこの悪者顔は…
うっかり人間に誤射しないかハラハラ。
あとはヒャッハー銃撃でサメを駆逐し、ジ・エンド。
かと思ったらそれだけではなく、このミスター複雑がなぜか
ヒーロー的にはやしたてられて違法掘削工事中のドリルのスイッチまで停止。
なんでそんなもんの場所も操作方法も把握しているのか。
ともかくドリルを停止したら残ってたサメもスゴスゴと引き返し一件落着。
…銃乱射する前にさっさと停めとけよ!
総評すると、
すごく面白いクソ映画です。
「バカでワルの小物が自分を主役だと勘違いしたらどうなるか?」というメタ設定のサメ映画、というテーマで作ったんでしょうかね。
非常に先進的かつ実験的な試みです。
一山いくらのクソ映画として埋もれさせるには惜しい。
このバカ共以外にも、
「観覧車」とか「ネックレス」とかクソどうでもいい伏線を敷いておいて忘れた頃に変な回収の仕方をしたり、見所は意外と多くあります。
バカの連打に退屈する暇がない。
脚本を書いてる人は多分それほど無能ではありません。
サメ映画マニアがコメディを見たい気分の時なら楽しめるでしょう。
ちょっと狭い条件ですがそういう人にはオススメです。