「あなたが目撃するのは、史上最悪のバッドエンド」
となかなか魅惑的な煽り文句が期待を膨らませてくれるホラー映画です。
カルト教団に洗脳されてしまった息子を山小屋に拉致監禁して、
さあ洗脳を解こう…としたらカルト集団の襲撃にあってしまう家族の悲劇。
一体どんな胸糞悪いバッドエンドなのか、楽しみなところですね。
…と言っても、バッドエンドって「予想外に無慈悲なオチを見せられる」から嫌な気分になるのであって、こうも最初からアッピールされると「どうせ全滅エンドなんだろうな」と構えて鑑賞してしまうので、いまいち精神的ショックを得られないという難点があります。
まあ別にそんなもん欲してないと言えば欲してないのですが。
本作は、ジャッカルの仮面を被ったカルト教団についても、
それに洗脳されてしまった息子ジャスティンを助けようと努力する家族についても、
それほど深い描写がありません。
前半では、家族に雇われた軍人が洗脳を解こうとする描写に尺が割かれており、
そこはホラー映画のテンプレートからは逸脱した内容なので、
なかなか興味深いストーリー展開のように感じられました。
「俺の名はジャスティンではない、タナトスだ」
などと中二病全開な洗脳されっぷりを見せるジャスティン君。
年齢的には20歳前後かと思われるんですが、
そんな死神の名をもらえるほどカルト教団内で地位があるらしい。
そりゃあ居心地も良いことでしょう。
果たしてこの強固な洗脳を、スティーブン・ドーフ演じるカッコイイ軍人さんは解くことが出来るのか?
どういう手順で洗脳を解こうとしているのか?
やけに自信満々なスティーブン・ドーフを見ているとその辺のディテールに期待してしまったし実際途中までは計画通りに実行していくのですが。
…いざカルト教団が襲撃してきた時、真っ先にやられてしまうのはどうかと思うんですよ。
これには本気でガッカリですよ。お前が主人公じゃないのかよ…
この人がやられちゃうと、もうあとは「山小屋で籠城する家族VSカルト教団」っていう地味目のサバイバルホラーという展開にしかならず、目新しさがなんもない。
スティーブン・ドーフを失った家族側があまりにも弱そう、かつ団結力皆無なのでどうあがいても教団側には太刀打ち出来そうにないし、別に助かってほしいとも思えないし、そもそもバッドエンドがウリなので助かるわけがない。
あとはもうどんな死に様を見せてくれるのかだけがお楽しみとなってしまいますが、そんなものを楽しめる人は結構歪んだ人間性を持っているのではないか?と多少自己嫌悪に陥ってしまうような気がしないでもない。いや、フィクションだからいいんです。…と思ったら本作は実話ベースらしい。一体どうしろと。
ただ、開き直ってそれを楽しむにしろ、まず
何でわざわざそんな人里離れた山小屋に閉じこもることにしたの?
カルト教団の襲撃を1ミリも想定してなかったのはなぜ? 銃は?
という疑問を頭から無理やり追い出さなければなりません。
あとこのジャッカル仮面のカルト教団、
一切合切が正体不明で背景も何も語られません。
それによって不気味さを増幅させようという狙いは分かるんですが、
出現時の演出がスタイリッシュすぎて清潔感すら漂っているため、映画的には特別気味悪くも怖くもない。
とはいえ、その手のサバイバルホラーとしては
一応希望もチラ見せしてくれるのでそれなりにハラハラはさせてくれますし、
そこそこムゴイ拷問シーンもある。
踊るようなナイフ捌きで華麗に獲物を切り裂く仮面女などもまあまあの見どころ。
オチは全く持って想定通りすぎて、特に気分が悪くなることもありません。
結局、無難に楽しめるB級ホラーって感想ですね。
ジャケやあらすじに惹かれて鑑賞しても特に損した気分になることもないでしょうから、
暇つぶしにはそこそこ悪くない選択肢かと思います。