最悪の選択　CALIBLE　感想

しかしこれが、感動の涙どころかこちらの精神力をガリゴリとえぐり削りまくって来る強烈無比な最悪胸糞激鬱映画でした。ちょっと、勘弁してくださいよ。なんでこんなもんオススメしてくるんですか…もはや娯楽映画として成立してないレベルでしょ…「たまには涙を」って苦痛の涙ですか？
いや映画の出来そのものはむしろ非常に良い部類なんですけどね…


まあ、「最悪の選択」などという不穏なタイトルの時点で別に感動物でも何でもないことは予想してましたが、それにしてもここまで最悪とは思ってませんでした。


主人公ヴォーンは３０歳くらいの男性で、婚約者が妊娠しておりもうすぐ一児の父となる予定。そんな時、親友のマーカスに誘われド田舎の寒村で鹿狩りを楽しむことにする…
という話ですが、またしても鹿狩りが導入となっています。正直鹿なんか撃ち殺して何がそんなに楽しいのか理解できませんが、狩猟民族にとっては身近な趣味なんでしょうね。


鹿狩りにさほど興味が無く、押しの強い親友マーカスに半ば無理やり付き合わされている雰囲気のヴォーン。いかにも気弱でヘタレそうな好青年です。鹿の頭に狙いを付け、引き金を引くと、鹿は頭を上げてしまい、その向こうには小さな男の子の姿が…！


この誤射シーンの悪夢的やっちまった感がとんでもなくリアルです。役者の演技が上手過ぎて大変キツイ。鹿で隠れていた男の子が斃れる姿、それを見て呆然自失に陥るヴォーン、激情に駆られヴォーンに銃を向ける父親。さらにそれを撃ち殺してしまうマーカス。
バレたらオワリだ、埋めて隠すしかない…だがそれは最悪の選択だった。


うっかり子供を撃ち殺してしまった。これほどいたたまれない事故もない。その場で自殺するのが一番マシな気がします。次点で自首。いずれにせよ、正常な人間ならもう今後まともな人生を送ることはできない。マーカスは隠ぺいに走り、ヘタレなヴォーンは中途半端に反発しながらも結局はそれに従ってしまう…

何をどうあがいても救われないと分かり切っているのに、それでも「バレないでくれ！」と祈りたくなります。



自分だったらどうしよう？ と嫌でも考えてしまいますし、そういうつもりで作られた映画でしょう。まあ私はスポーツハンティングなど一生やるつもりはないのでそのまんまこれが自分の身に起きたら…と仮定することは難しいですが。


しかし、そんな私でもすっかりこの２人に感情移入してしまい、あああどうすんだよおおと絶望してしまうぐらいには入り込んでしまう映画です。
そうなると、視聴者の精神などもはやサンドバッグも同然。
特にマーカスが「彼ら」と口を滑らせるシーンと、犬を使って捜索するシーン、その後無音と化す演出のシーンと計３回も観るのをやめたくなるタイミングがありました。もうやめてくれ、耐えられないと言いたくなる。住民同士みな顔見知りの寒村、バレたらどんな反応なのか…何をされるか分からなくて恐ろしい。村で親切にしてくれた男が溺愛する甥だったというのが恐ろしい。



事故を起こしてしまい、埋めてしまうところまでなら、もしかしたら自分もそうしてしまうかも…？と思えなくもないです。だがその後が苦しい。苦しすぎます。犬があんなに有能だなんて…犬さえいなければ…というのはともかく、胸糞悪さは超一級品の本作。精神的ダメージを負いたいという方にはぜひご覧になっていただきたいと思います。