単純なモンスターパニック映画が見たくてこのワニ映画をチョイスしたのですが、
これはどうもジャケット詐欺というか何というか…。
ワニが人を喰らうシーンなどほとんどありません。2回だけかな?
ましてやワニと人間の熱いバトルなども皆無です。
そしてこれはイギリス映画なのですが、独特なノリに全然ついていけません。
やっぱりモンスター映画ははアメリカ製が一番かもしれませんね。
このワニはいたずら小僧グループが動物園から盗んだ卵が孵ったヤツのようですが…
動物園から盗むって…そんなことするのは若気の至りでは済まされないというか、ここまでの悪ガキってそうそういるもんでしょうかね。何でもいいから何か別な理由にしておけば良かった気がしますが。その悪ガキグループの一人であるティムという男が、15年振りにその故郷の村に帰ってきたところからが本編スタートです。
イギリスのどこだか分かりませんが、舞台となる村はとてつもなくド田舎です。
そのせいか知りませんが、村人が陰湿でティム夫妻に対して微妙に冷たい。よそ者ならともかく、この村出身の人間に対してどうしてそう冷たくなるのかよく分かりません。親の会社を継いでいきなり社長になってるからかな?と想像はしますが、全体的に説明があまりないのと楽しい雰囲気が一切無くて淡々としておりどうも居心地が悪い。
映像はイギリスの田舎だけあってなかなか美しく、説明不足の淡々とした理解しにくい人間ドラマと合わさって何だか格調高ささえ感じます。
村の沼地にワニがいる描写はちょくちょく挟まれますが、なかなか人を襲いません。
中盤で若い女性が一人失踪し、さらに散歩中の婆さんがいきなり喰われてようやく存在が認知されます。
そこで過去の行いからワニの仕業といち早く察知したティム。さっそく友人と妻と一緒にボートでワニ退治に乗り出すのですが、ヤリ1本しか持っていません。こんな無防備な状態で、しかも愛する妻を連れて何やってんの?と微妙に呆れて観ていると、驚くべきことにボートの上に立って沼を凝視していたティムと友人が橋にぶつかり、引っかかってボートから離れてしまいます。
…橋にしがみついてバタバタしているシーンは完全にコメディ映画のそれでした。
そこまではシリアスなモンスタースリラー映画だったのに、突然ねじ込まれるお笑い。
しかもそのあと、従業員のデブがワニと出くわし、熊手で渾身のジャンプ突きをかましてワニを倒してしまいますがこのシーンもわざとらしいぐらいコミカルな演出でした。
しかしそれだけで終わるはずもなく、ワニがもう1匹いることはいるんですが、
問題はワニというよりサイコ殺人鬼でした。
この映画、モンスターパニック映画を装ったサイコ殺人鬼もののホラーコメディだったのです。
実にタチが悪い偽装ですね。ホラーコメディはあまり好きなジャンルではないし…モンスターパニックが見たいからこれを選んだのに…。
肉屋がヤバイ奴なのですが、ひき肉を作るときにタンを入れて、それで作った料理を店で出してみんなで旨そうに食べるシーンがあったりします。ブラックコメディ的なノリなんでしょうが気持ち悪いだけで全然面白くもなんともないしバクバク食べるシーンを見せすぎで鬱陶しいです。
イギリス人の品性を疑いたくなりますよ…。
人間をひき肉にするところを従業員のデブに見つかるシーンもコントのようなノリですが若い女性が被害者になりかかる場面の合間なのであんまり笑えません。
猟奇的なシーンが割とシリアスなのでノリについて行きにくい。
それとも英国紳士は紅茶を飲みながらにこやかにこういう映画を観たりするのでしょうか。
クライマックスは拘束された妻を助けようとするティムとサイコ殺人鬼2名とのバトルです。
しかし拘束された妻をなぜか放置してサイコ殺人鬼と2人きりにしちゃうとか謎の行動を見せたり、追っかけたサイコを金的蹴り1発で倒してみたり、訳の分からん活躍をするのはまあ…よくないけどまあいいとして…、ティムがワニと関わるところが全然ありません。ワニはもう眼中にないようです。ワニ映画だと思って観てるのにワニが完全放置状態…。物足りないなあ…。
ワニには一応逃げたサイコ殺人鬼を食い散らかすという見せ場があることはありますが、それっきりです。ワニが沼地にいるだけでは何の脅威もなさそうで、殺人鬼が処理されたらハッピーエンド。ワニは最後には字幕で雑に処理されます。何だこれ。
淡々とした人間ドラマからワニワニパニックの予兆を見せ、突如コメディに変化し、猟奇サスペンスになり、最後はそれらがごった煮になりワニがどっか行く。
そんな感じのイギリスのド田舎を観たくてたまらない人なら何とか楽しめるかもしれません。