製作:2018年カナダ
発売:ニューセレクト
究極の恐怖を疑似体験できるアトラクション施設「パーディション」に望んで参加したアリソン。彼女は幼い頃に父親に虐待されたトラウマを克服したいと願っていた。しかし、パーディションでの責め苦は想像を超えており、運営は本物の異常者集団なのではないかと疑念を深めていく。
邦題がいくらなんでも安っぽすぎて損してると思うんですが、これはなかなか悪くないですよ。
サイケデリックで毒々しく汚らしい映像といちいち神経を逆撫でしてくるBGMがほんのりとしたアンダーグラウンド感を漂わせてきます。そこに怪しい日本人とか過激な残酷表現とか支離滅裂気味な心理描写で塗り固め、マニア好みの珍品としか言いようがない見事な仕上がり。
ただし、ひたすら不愉快さを追求したタイプのシリアスなホラー映画かと思いきや、後半で露呈する黒幕のあんまりなポンコツさ加減が適度な笑いを提供してくれるおかげで全体の印象としてはほどほどに角が取れて丸くなっている気がします。そこは喜んでいいのかどうか微妙なところです。
父親から虐待を受けたトラウマに苦しむアリソンは、それを克服するため極限の恐怖を与えてくれるパーディションというアトラクションに参加する…という話なわけですが、アトラクションとはいえ前半は確かに非合法の拷問殺人組織に連れ込まれたかのような危険なムードが漂ってていい感じに恐ろしそうなんですよね。
↑まあ実際にやってることは大体水責めが多くて、あとはカワイイ犬に追い掛け回されたりとか、カンオケに入れたりとかその程度のヌルイ拷問なんですが。被験者が深層心理で恐れているものを引き出したいという意図があるようでその辺は勿体ぶってる感じ。しかしアリソンは自分から望んで参加しているくせにいちいち本気で抵抗するのはいかがなものか。
そんなパーディション運営のトップはドクロの仮面とボイスチェンジャーで実に気味が悪く、ピンヘッドみたいな威圧感を醸し出しています。かなり大物っぽく見えるんですけどね。前半は。
↑なぜかパーディションを取材している怪しすぎる日本人リポーター。スタッフや参加者にまるで壊れたレコードのように同じ質問を繰り返すのがなんか気持ち悪い。カメラマンは西村喜廣という方ですが、特殊メイクも兼任しているらしいですね。相当いい腕をお持ちのようでスプラッター表現はレベルが高かったです。久々にウッときました。
で、後半になるとなぜか急にボロが出まくるパーディションの人たち。
せっかく拷問殺人組織のようなヤバさを演出出来ていたのに、肝心のトップが奥さんに電話して怒られるわ、金がなくてジャンクフードばかり食ってるんだぞ!と叫ぶわ、アリソンの頭突きで鼻を折られたスタッフに治療費が出せないと逆ギレするわとギャグとしか言いようのない前半との落差。
どうしてそのタイミングで奥さんに電話する必要があったのか、すごく疑問です。
あと大体のアメリカ人は毎日マクドナルドかドミノピザ食ってるんじゃないの?
それと頭突きしてくるような危ない患者を相手にしてるのにそこら辺に刃物がいっぱいあるという危機管理のなってなさがひどすぎる。
そんな彼らの凋落と反比例するかのようにサイコ感を増しキレていくアリソン。
キチガイに刃物を持たせたうえに色々と下手に刺激しまったかわいそうなパーディションスタッフたちの命運は…?
…本当にすごくかわいそうでした。
ということで、本作はゲテモノ好きの方にはオススメです。
そうでない人は午後ローで入った時にでも観てみてください。多分入らないけど。