製作:2016年アメリカ
発売:エクリプス
高校卒業後の週末に、人里離れた山荘へ遊びに来た9人の若者たち。酒を飲んで騒ぐのも飽きてきた頃、「殺人者ゲーム」なる遊びで楽しもうとし始める。推理要素のあるかくれんぼのようなものだったはずだが、2回目のゲーム後に3人の死体が発見されてしまう。彼らは遊びではなく本当の殺人犯を探り当てることが出来るのか?
山奥に集まった9人のうち3人が殺された!
しかも殺人はまだ続く!犯人はこの中にいるのか!?
…という、今どき珍しいぐらい古典的でベタなクローズドサークルもののミステリです。…と言いたいところなんですが、登場人物が9人もいて、しかもハーバード大に入れるくらいの進学校卒業生が大半を占めているはずのなに、全員が揃いも揃って壊滅的にバカすぎて探偵役が不在になっています。こういう推理小説的なシチュエーションでもしもバカしかいなかったらどうなるのか?というネタとして観る分にはけっこう面白いかもしれません。一口にバカと言ってもなかなかバラエティ豊かなバカ共が揃ってますしね。
さて、探偵役がいないと言いましたが、一応それっぽい役割なのかな…?と思えなくもないキャラクターはいます。
↑ルーマーという名のこの男がそうです。引っ込み思案で自分に自信が無く、みんながどんちゃん騒ぎ中でもすみっこで大人しくしているような奴。しかし、ハーバード大への進学が決まっている頭脳明晰な男。
山荘で殺人が起こり、パリピ共が過剰にパニックに陥りまくる中、彼はなんとか論理的に事件を分析しようと試みます。マジメに見ている側としては彼の意見に耳を傾けたいところです。
しかし、一番年上で野蛮なドゥエインが頭ごなしにルーマーを否定しまくり。
「死体のあった部屋には鍵がかかっていたんだ!」と密室殺人を指摘しても
「知ったこっちゃねえ!!!」と切り捨てられ、
「なぜ死体をドミニクの部屋へ!?」と至極最もな疑問を呈しても
「探偵気取りはやめろ!!!」と怒鳴られ、
「この中に犯人がいる!」と叫んでも
「お前バカか」。正当な主張をドゥエインとかいう脳筋野郎にことごとく封殺されてしまい…
↑ついに
発狂。急に
「犯人は昔からの知り合いじゃない可能性が高い!」などとミステリ的には事実とは真逆の世迷言をのたまい出し、ただの私怨でドゥエインを強引に犯人扱い。野蛮な前科者が真犯人なわけがないですね。せっかく探偵役になれそうなキャラだったのにこの転落振りはちょっと笑えました。
まあコイツのことはともかく、実は本作は最初の殺人発覚直後の段階で犯人もトリックもモロバレでした。いや、あまりにも古典的すぎるからウラをかいてくるんだろうな…と思ったらわりとそのまんまで三周回って逆に驚きました。何の臆面も無くその古臭い手で来るとは…。おまけにトリックを暴いてくれる探偵がいないもんだから犯人が勝手に一部始終をペラペラしゃべり出すのにはさすがに苦笑いしてしまいます。
…しかし、犯人の動機だけは結構感心したと言わざるを得ない。バカ全開とはいえ伏線は実に分かりやすくキッチリと敷いており、かつ笑えます。殺人の動機がユニークなミステリは記憶に残りやすいんです。例えば山田風太郎の連作短編「妖異金瓶梅」の中の「赤い靴」における殺人の動機はあまりにも軽くてバカバカしいのに、それゆえ強烈に印象深かった。まあ、こんなテキトーな映画の引き合いに出すのは失礼なことかもしれませんが。
ヒロイン格のイルサが最強にバカで性格悪いというのもある意味見どころです。私も色んな映画を観て来ましたがここまでヒドいビッチ野郎は観たことが無いです。何かと他人に罪を着せようとするし疑ってわめくしすぐ便乗するし。ネイルガンを顔に打ちこまれて瀕死の親友(笑)の顔からむりやりクギを引き抜こうとするくだりは最悪すぎて最高でした。という具合に、バカっぽさを楽しめる人にはオススメできないこともないのでその手の方は借りてみてはいかがでしょうか。