製作:2019年アメリカ
発売:アットエンタテイメント
山岳州立公園の職員ウェンディは、その日登山コース(?)でビラ貼りの仕事に勤しんでいた。しかし、いつのまにか見覚えのない奥地へと迷い込み、遭難してしまう。しかもそこで登山客の死体を発見してしまう。救助が来るまで死体のそばで待機するウェンディだったが、周囲には人喰い熊の爪痕があった。
ジャケットに「人喰い熊出没」としっかり書いてあるので、おそらく人喰い熊など影も形も出てこない安いC級映画なんだろうなと思って借りたら、驚くべきことにバッチリ人喰い熊が襲ってきてくれる素晴らしい安いC級熊映画でした。ふだん誇大広告ばかりのくせになぜ今回に限ってこう奥ゆかしいジャケットなんでしょうか。
ちなみに本国版のジャケは全力で熊をアピールしているのでひと目で熊映画と分かるようになっています。変に改悪しないでそのまま流用すればいいのに。
熊が出てくるまでの本作の見所は、主人公ウェンディの恐ろしくマヌケなふるまいです。
彼女は山岳州立公園でビラ貼りの仕事をしているんですが、見た感じすごく気楽で健康的でストレスのなさそうな業務です。実にうらやましい。ただ、それにしてもイヤホンで音楽を聴きつつ小躍りしながら軽やかな足取りでビラを貼りまくる姿は、さすがに仕事も自然も舐め切ってる感がありすぎました。崖っぷちで異様なほどのマヌケ面をわざわざ作って自撮りしてみたりとやけに落ち着きがない。
そんな人間なので地図は当然のように紛失するし、無線機はぶん投げて破壊するし、スマホはすぐに充電が切れます。その結果、単なるビラ貼りの仕事ごときで完全に遭難してしまいます。
公園の職員を職場で遭難させようと思ったらここまで何重にもやらかさなければいけないのか。本作のテーマはダメ職員が困難を乗り越えることで自らの能力と根性を同僚に証明することのようですが、既に挽回不可能な醜態を晒している気がしてなりません。
↑しかもそこは救助隊がたどり着くまでに最低6時間以上はかかるほどの奥地であることが判明。
踊りながら練り歩いているだけでそんな遠くまで行ってしまうとは一体どんなスタミナの持ち主なのか。しかも山頂なので登りだったはずですが、全く疲労の色すらありません。
かなり不可解な遭難劇ですが、本作は幽霊が出てきます。つまりオカルト要素ありの映画です。
なので、これも超常現象のひとつと考えれば納得できないこともない。かもしれない。
遭難現場には死体があったので、ウェンディはその死者の念に呼び寄せられたという話です。
たぶん。
極度の怖がりであるはずの彼女が、寝る時も死体のそばを離れなかったのもそれで説明がつきます。
↑終盤ではありますがウェンディと人喰い熊との熱いバトルシーンが観られます。
熊スプレーで戦うというのもなかなか珍しいポイントと言えるでしょう。私も山菜取りで毎年山に入っているので参考になりました。まず幽霊には効かないということと、あと向かい風で噴射すると自分の顔面にかかって非常に苦しい思いをするということが判りました。
ただ熊スプレーは一本5千~1万円と高価なわりには熊を撃退する以外には全く何の使い道も無いのでそうそう購入する気にもなれないのが欠点です。
…ということで、熊映画マニアの方はチェックしておくべきかなと思います。
そうでない人は間違いなく見る必要は全く無いでしょう。