1作目、2作目ともに劇場公開時に鑑賞済み。
1作目はニューヨーカーが手持ちカメラで撮影しながら巨大モンスターから逃げ回るもので、
まだPOV形式の映画がさほど流行っておらず、私は何も知らずに劇場へ行ったら画面酔いして嘔吐をガマンしていただけで終わってしまいました。
2作目の「10クローバーフィールド:レーン」は1作目の先入観を逆手にとり、巨大モンスターの襲撃が現実なのかどうかわからないまま終盤まで引っ張ることによって、シェルターにこもるジョン・グッドマンがキチガイなのかどうかを悩ませる密室サスペンスの秀作でした。
最も日本ではポスターやジャケットの時点で盛大にネタバレしていましたが。あれは犯罪レベルの愚行だと思う。
幸い私は事前情報なしでポスターにも目もくれず鑑賞したおかげで最大限に楽しめました。
3作目はなぜか劇場公開せず、いきなりNETFLIXでの配信です。
このシリーズ、プロモーションに何かこだわりがあるようで色々変わった仕掛けをうちますが、個人的には媒体が何であろうとただ観るだけなんでその辺にはあまり興味がありません。
問題は中身です。
地球の資源問題を解決するため、宇宙ステーションで新たなエネルギーの開発を試みる科学者たち。しかしある事故により、恐ろしい別次元の世界を目の当たりにする。
(NETFLIX紹介文)
舞台がほぼグッドマン製のシェルター内だけで貧乏臭かった「10クローバーフィールド:レーン」と比べると、美麗CGの巨大宇宙ステーションが出てくる本作はそこそこ製作資金が潤沢になったことが伺えます。
しかし、肝心のお話の中身の方がどうも…テキトーすぎる気が致します。深読みできそうな部分もあるにはありましたが…。
シェパードという名の素粒子加速器を宇宙で作動させ、エネルギーを生み出そうとしている科学者たちが主な登場人物たちです。人類の命運を握っているエリート中のエリートたちのはずですが、正直頭が悪そうな人が何人か混じってます。
この手の宇宙パニック映画ではありがちなことですが。
船長のいうことに従わないシーンも散見され統率の取れていない無能集団、という印象を受けてしまいます。
シェパードの換気を怠ったせいで加速器が暴走し、パラレルワールドに移動してしまった!さてどうやって戻ればいいのか!
…という話なのですが、パラドックスというよりむしろカオスです。
目が片方だけ変な動きをするようになったロシア人が3Dプリンタで銃を作ってミミズを大量に吐いて死んだうえに胃の中にジャイロが入っていたりともう何でもあり。
どうしてそうなったのかという説明も推測も何もなし。
そんなような怪奇現象が多発するので「イベント・ホライゾン」みたいなコズミックホラー的展開になるのかなと思いきや、クルーの一人マンディが壁に右腕を奪われ、その腕が勝手にシャカシャカ動いて字を書いたりするシーンはかなりコメディチックな雰囲気でした。
この映画がどこを目指しているのか全く分からず、ますますカオスな状態に陥ってきます。
しかし、本作の主題は主人公エヴァの葛藤にあるようでした。
エヴァは自分が作った装置による火災事故で子供2人を亡くしており、
パラレルワールドではその事故が起こらなかった世界であると知ってしまいます。
普通なら「そういう可能性世界もあったんだ、良かったね」で済ませるところですが、エヴァは元の世界に帰ることを拒み、別世界の自分の家族の元へ行って事故を防ごうとします。
パラレルワールドの自分に会ったらまずいだろ?たとえ会えても一緒に暮らすことは不可能だろ?その後どうすんの?と誰もが思うし船長も説得するんですがエヴァは聞き入れません。
冒頭でシェパード計画に参加するかどうか悩んでいたエヴァはどっちの世界のエヴァだったのか?という謎もあり一見なかなか深い話のようにも見えます。
…まあ、メッセージを送れば事故は防げるだろうってことで結局行かないんですが。そりゃそうだ。
壁の中に突如転移してきたジェンセンは、エヴァの夫が病院で救った少女モリーと何らかの関係があるかのような演出に見えましたが、特に明確にはされませんでした。
というかもし何もなかったらエヴァの夫のパートはほとんど無意味ですよね。あっても無意味かもしれませんが。宇宙ステーションが大変なことになってる間、地球には巨大モンスターがやって来て大変なんだ!というだけのことに尺をとり過ぎだと思います。
結局シェパードをもう一度作動させることにより、量子もつれが元に戻って帰れる。ということでしたが何かケムにまかれている感じがします。元の並行世界に戻るなんて凄まじく難しいことじゃないのか?換気するだけで正常作動するのか?そんな単純か?
で、オチは当然1作目に出てきたような巨大モンスターが出てきてあら大変、というわけですが。思わせぶりにあれこれやったわりには大味なエンディングです。
1作目のモンスターの出自を描く、というテーマだったんでしょうけど、
素粒子加速器が暴走してモンスターが別次元から来た、というだけなんで本作での宇宙ステーション内でのすったもんだは1作目とは何の関係もありません。
それにエネルギー研究で並行世界からバケモノが…というのは「
アザーズ 捕食者」と同じようなもんですね。
総評としては、別にシリーズとして扱うほどのつながりも希薄だし、
単独の映画としても前作「10クローバーフィールド:レーン」の方がはるかに面白かったです。
暇つぶし程度の感覚で鑑賞するのが正解でしょう。