変わった映画を見つけたらそれを語りたいブログ。 主にモンスターパニック映画、特にサメ映画の感想が多め
かなり低予算でいかがわしさ全開のイタリアンスプラッターアクション映画。
ものすごく好き嫌いは別れそうですが、低予算映画を見慣れている人間からすると、よくぞここまでやったなあ…と感動的なほど面白かったです。
ジャケットにも色々書いてありますが、「北斗の拳」リスペクトな雰囲気があります。
といっても経絡秘孔を突いて内部から破壊するなんていうのではなく、普通に外部からの突きでそのまま破壊しているので北斗神拳というよりは南斗聖拳に近いような気がしますが、北斗百裂拳みたいな超必殺技を放つ見せ場は何度かあります。
そこでスピード感を出そうとすると軽いパンチの連打になりがちなのですが本作はしっかり重さとスピード感を両立しているところが大変マンガチックで良いです。
ストーリーはいさぎよく心底どうでもいい雰囲気を貫いており、観客に見せたいのはグチャドログチャドロドグチャッチャとコブシや肉切り包丁によって景気よく粉砕されていく人体破壊描写に全力一点集中。
これがまた実に素晴らしい。
頭も手も足も吹き飛ぶわ潰れるわ血が噴水のようにドバドバ噴き出すわと制作者は限られた費用と労力をいかにして人間の体が砕け散る様子を見せるかに全振りしております。
かといって過度にリアルさを追求すると嫌悪感が出てきてしまいますが、そこはほどよくチープ感を漂わせることによって実にスッキリ爽やかな味わい。
薄くてサラリとした血糊の品質が味付けの決め手でしょう。
↑本作のために肉体を鍛え上げ、製作と監督と主演と脚本と音楽他を1人で全部こなした凄い漢エマニュエル・デ・サンディ。悪魔の力を借りているせいか作中ほぼ白目を剥いています。わざわざ白目になる必要があったのかかなり疑問ですが、本作に充満する怪しいエネルギーの大半はこの男から発せられており超スゲエと言わざるを得ない。ほぼ常時返り血に染まっていてキタナイ気もするが本作は血が映っていないカット自体がほとんどない勢いだから仕方ない。
↑ちょいとジャギ風味のこの鉄仮面の男が悪役。アダムの妻を丸焼きにしたことで恨みを買ってしまったわけですが、「金を返さないのが悪い」などと極めてストレートな正論を吐く男でもある。確かにこんな奴に金を借りて返さなかったら殺されても仕方がない気がします。
金を返せなかった事情などが特に語られるわけでもないのでそれほど理不尽な感じがしないのがストーリー上の難点か。
まあそんなことどうでもいいと言い切れるほど、クライマックスでこの二人が対決するアクションシーンにはわけのわからん勢いがあります。
映画においてある種の人間を感動させるために必要なのは、愛する人との悲しい別れでもなければ、再会でも病死でも蘇生でもありません。全身全霊の殺し合いなのです。それを存分に見せてくれた映画は賞賛せざるを得ない。
あっちもこっちもと欲張ろうとした低予算映画は結局どれもこれも中途半端で何も見どころが無いという悲しい事態に陥りがちですが、本作のような一点特化型は見どころが分かりやすく観客にも大変親切と言えるでしょう。
まあそうは言っても全編血みどろアクション満載かと言えばそうでもなく、どうでもいい水増しシーンもかなり多くて意外とテンションは低いのですが、80年代のイタリア製B級映画的で濃厚ないかがわしさが満ち満ちておりそれはそれでさほど退屈はしませんでした。
そこら辺も含め、本作は間違っても万人向けとは言い難いです。少なくとも「北斗の拳」「80年代スプラッター」「低予算」「バカ」これら全てに理解のある方でなければ愛せないと思いますが、ハマる人はハマるはずなので気になった人はぜひご覧ください。