製作:2003年アメリカ
発売:ソニー・ピクチャーズエンターテインメント
アチャファラヤ川の保護区域で石油採掘の仕事をすることになったサンダース技師。その時下流のリゾート湖では淡水でも活躍できると評判のオオメジロザメが観光客食べ放題騒ぎを起こしていた。さらに川底に隠した金を回収に来たギャングにも絡まれ、石油採掘の仕事は遅々として進まないのであった。
個人的には最高に格好良い邦題だと思っているサメ映画。
原題も「RED WATER」ですが、やはり「サメ地獄」の威力は絶大。地獄とついてるだけでワクワクしてきますね。後年「ブラックフット クマ地獄」というフォロワーが現れたのもうなずけます。
しかし中身の方はあまり評判がよろしくなく、テレ東の予告編の方が断然面白いとよく言われているようです。
「鮫工船!プロレタリア・シャーキング・パニック!」まあ本作に限らずテレ東の造語センスは面白すぎるから仕方ない。
評判が良くないと言っても、あくまでそれは非サメ映画ファンから見てのことで(多分)、サメ地獄愛好家から見ると本作の出来はかなり高い水準にあると言えます。CGではない爆発シーンの充実、実物のサメとアニマトロニクスのサメ、そしてルー・ダイアモンド・フィリップス。変な表現ですがB級サメ映画としては一流の素材が揃っています。
ただし、「サメ地獄」とか言いつつ実はサメがメインではないということだけは認識しておかなければなりません。本作のストーリーは、過去に暴噴事故で人を死なせたトラウマを持つ採掘技師が新しい仕事を引き受けて立ち直ろうとしたら、たまたまそこに隠し財産探しにやってきたギャングとカチ合ってしまい、命を懸けた戦いに発展する…というものです。
サメは何となくそこに現れてちょっかいをかけてきたり死体処理業者扱いされるというだけの存在。別にいてもいなくても大筋に支障はありません。
↑毎度おなじみ淡水でも生息可能だという豆知識を視聴者に植え付けてくれるオオメジロザメ。海で撮影するのが面倒だから川か湖にしようという時は大抵彼らが駆り出されます。他にはない独自スキルを持っていれば仕事に困らない好例と言えるでしょう。
襲撃シーンが豊富だとは言えませんが、「淡水にホホジロザメを出したらリアリティを損なう」という気遣いのあったこの時期のサメ映画製作者の変な生真面目さと来たら…。
しかしそんなどうでもいいリアリティよりも、採掘開始に合わせてギャングとサメが同時に襲来してくるというあり得ない偶然の方がよっぽど引っかかります。
序盤はルー・ダイアモンド・フィリップスのくそマジメそうなしかめっ面から繰り出されるいかにもなヒューマンドラマ的空気が悪くない雰囲気を出しているのですが、ギャング+サメの襲撃によってそれが一気にぶっ飛んでいきます。
とんだ邪魔が入ったせいでまた暴噴事故が起きそうになり、それに対処するシーンが大きな見せ場となっていて「今度こそ防ぎきってトラウマを克服する!」という話になるのかと思いきや普通に防げず大爆発!子煩悩な従業員も普通に死亡。
悲劇を繰り返すことになってしまった採掘技師の胸中は…?
…なんてことよりまずギャングたちを撃退しなければいけないということで、そこからのドンパチアクションはまあまあ見ごたえがあります。爆発もド派手ですしね。サメはそれを邪魔しているだけですが、同じオオメジロザメ地獄でも「フライング・ジョーズ」や「処刑鮫」よりもこちらの方がよほど面白い。なのでそこそこオススメできる部類のサメ地獄ではありますが、サメ地獄というよりサメも出てくるアクション映画として鑑賞するのが正しい姿勢と言えるでしょう。