スタング　人喰い巨大蜂の襲来　感想

郊外の屋敷でパーティをしていたら巨大蜂が襲ってきた…という話なのですが、
いきなり巨大蜂が襲ってくるわけではなく、
まずは１０～２０センチぐらいの蜂が無数に襲ってきます。それでも充分でかいんですが。
というか、メインディッシュの巨大蜂よりもこっちの蜂の方がよほど恐ろしいように見えました。
というのも、この蜂に一度でも刺されると、卵（幼虫？）を産み付けられてしまい、
数秒～数分というものすごく短い時間で内臓を食い荒らして人間サイズに成長して体を突き破って出てくるのです。エイリアンのフェイスハガーを超強力にしたようなやつですね。ここはスプラッター度もまあまあ高めとなっております。


しかしそんな凶悪殺人蜂が無数に飛び回っているというのに、主人公のバーテンや屋敷の主人などの主要人物はやけにのんびりしているのがちょっと…いやかなり気になりました。刺されたらとんでもないことになるのに危機感が足りない…。早く屋敷の中に避難しろ！と使用人も言ってましたが、あんなに長くドアを開け放っていたら屋敷にも蜂が入ってしまうでしょう。
この映画は「そんなにモタモタしてたら助からんだろ」と言いたくなるシーンがちょっと多くて気になります。役者の演技と後付けのＣＧがかみ合っていない感じですかね。


次々と人間サイズの巨大蜂が誕生する中、主人公たちは命からがら地下室へ逃げ込んで籠城します。が、ここでもまたのんきに酒を飲みながら雑談。新プレデターやバイオ殺人熊ぐらいのモンスターが相手ならそれでも大して違和感ありませんが…。どうもこの映画の登場人物はあの殺人蜂を過小評価しているように見えて仕方ありません。殺傷能力なら数あるモンスター映画でも相当上位に来ますよあれは。なのに主人公は「蜂が好きな映画はＢＥＥ級映画さ」などと小粋なジョークまで飛ばしたりします。


この作品、アメリカ製のモンスター映画にしては非常に珍しく、銃器の類が一切出てきません。
反全米ライフル協会派が制作なのでしょうか。
巨大蜂は意外と柔らかいようなので銃があればまだ何とかなりそうなんですが、
いかんせんアイスピックぐらいしか武器がないため、機動力はもちろん戦闘能力でも全く太刀打ちできそうにない。数にも圧倒的な差がある。
という感じに、かなりの絶望感が漂っています。…が、やはり主人公たちがいちいちのんきな会話をするため、せっかくの絶望感が結構スポイルされてしまっているという状態。これは実にもったいないと思います。照れ隠しのような微妙なコミカル要素をなくしてシリアス一辺倒にして恐怖と絶望を煽りまくっておけば、「ディセント」クラスのハイレベルなホラー映画に達していたかもしれないのに。


クライマックスもオチも、王道といえば王道ですし殺人蜂の出来は素晴らしいのですが、
どうしてもありがちすぎて既視感全開な展開なので何かのリメイクのように見えてしまいました。
何か少しでもいいからひねりを入れてほしかったところですね。
というわけで、「王道モンスターパニックB級映画」が観たい気分の時にこれをチョイスするとまあまあ楽しめることでしょう。
このひねりのなさからして、むしろモンスターパニック映画初心者の方におすすめな１作と言った方がいいかもしれません。