ある好事家の記録 主に変な映画の感想

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メガロドン(※「MEG ザ・モンスター」原作小説) 感想





現在、映画の公開に合わせて「MEG ザ・モンスター」というタイトルでリニューアルされた文庫版が出回っていますが、私が持っているのはこちらの2001年発行の旧版です。定価686円。新版と中身は一緒のハズですが、新版の価格は994円。物価の上昇を実感しますね。

著者のスティーヴ・オルテンと言う人は本作ひとつでアメリカンドリームを実現し、ウォルト・ディズニー社は当時150万ドルで映画化権を買い取ったとのこと。ですが、その後映画化は暗礁に乗り上げ2018年に中国資本で実現するまでかなりの時を要しました。私も本作の素晴らしい内容に感激し映画版の登場を待ちわびながらもながらもさすがに時間が経ちすぎて内容をすっかり忘れてしまい、今になってようやく再読し映画版と小説版の違いについてああだこうだと益体も無い考察を巡らすことが出来るというわけです。






さて、映画版を鑑賞している時に何となく感じ取ってはいましたが、映画版と原作との相違は思った以上に大きなものでした。映画版は原作のエッセンスをいくつか掬い上げただけの別物と言っても過言ではありません。まあそれでも面白かったことに変わりはないし、世界的ベストセラー小説の映画化という建前が無ければあれほどの製作費がかけられることもなかったわけなので、映画版にケチを付ける気はありません。




しかし、原作に忠実な映画版も観てみたかった。という気持ちもまた否定できないところ。
本作の冒頭では、白亜紀後期7000万年前のアジアアメリカ大陸沿岸部で地上最強の肉食恐竜であるT・レックスを屠り喰らうメガロドンの様子がダイナミックに描かれています。この規格外のサメパニック物にふさわしいプロローグは映画化の際になぜカットされてしまったのか。もしかするとT・レックス程度ではジェイソン・ステイサムの戦闘力には遠く及ばないし、噛ませ犬としてのインパクトすら期待できない…などと思われたのかもしれません。



そう考えると、映画版が原作小説とかけ離れてしまった遠因はやはり主人公のジョナス・テイラー役がジェイソン・ステイサムに決まってしまったことにあると考えるのが妥当ではないでしょうか。なんせ原作のジョナスはメガロドンの研究に血道をあげる古生物学者です。それが映画版では「マッチョな潜水レスキューのプロ」ということになっており、名前は一緒でもキャラクターが全く違います。違うというか映画版はいつものジェイソン・ステイサムそのものなんですが。
ただし古生物学者ジョナスも青白きインテリというわけではなく、ことあるごとに「運動選手のような体つきをしている」と周囲の女性から評されています。見た目だけならステイサムをイメージして読んでも構わないかもしれません。髪の毛はともかく。




とはいえ、原作小説にはその運動選手並みの体にモノを言わしてメガロドンとタイマンで水中大格闘戦を繰り広げる、などという展開はありません。当たり前ですね。その辺の運動選手ではT・レックスにも勝てないし、そんなことをしたらいっぺんにリアリティを失ってしまいます。映像化することで逆に説得力を生み出してしまうステイサムがおかしいだけなのです。


…原作がサメ・パニック小説としての本性を現すのは終盤に入ってからで、それまでは海洋冒険小説としての色合いが濃い。絶滅したはずのメガロドンが未だ生存しているという学説を主張しているせいで世間では笑いものになっており、妻には愛想を尽かされかけている古生物学者。そんな彼がマリアナ海溝の底で冷水層に閉じ込められていたメガロドンを発見し、それを意図せず外海へ解き放ってしまうまでが前半およそ200ページ近くに渡って緻密な描写とマニアックなメガロドン蘊蓄によって綴られています。著者スティーヴ・オルテンのメガロドン愛がどうしようもなく強烈に伝わってきて仕方がない。愛妻を放っておいてメガドロンのことばかり考え、お守りにメガロドンの歯の化石を持ち歩くジョナス・テイラーには著者のそんな性質がだいぶ投影されていると思われます。





まあ、冷水層で閉ざされた領域からメガロドンが解き放たれてしまい、研究者たちが責任を感じてメガロドンを追うという大筋はかろうじて映画と原作で共通する部分です。
しかし、この広い地球上の海で、20m越えとはいえたかがサメ一匹が逃げ出しただけで一体何をそう焦ることがあるのか。放置してもいいんではないのか。
それが出来ない理由を本作ではこう説明しています。
メガロドンが目を付ける主な食料はクジラであるが、彼らは今まで捕食者に狙われたことがない。よってクジラがメガロドンの存在を知ることで、クジラの群れの回遊ルートが大きく変わってしまい、地球規模で生態系に大きな影響を及ぼしてしまうと…。


何だか壮大すぎていまいちピンと来ませんね。少なくともサメパニック映画では採用しにくい展開です。もっとも、最終的にはマスコミや野次馬がメガロドンに近づきすぎてしまい、阿鼻叫喚のサメ地獄となってくれます。ステイサムはこれを未然に防いでしまいましたが、普通の人間である古生物学者ジョナスは野次馬を喰らいまくるメガロドンを止めることなど到底できない。
原作版は細かく章立てされているのですが、クライマックス近辺の章タイトルが
「死の饗宴」からの「地獄」と大変ナイスなものになっており、それはもうムカつくキャラクター共をムシャムシャと噛み砕き貪り喰らい消化する様子までもが克明に記述されており爽快の一言です。ここら辺がしっかり映像化されていればなあ。中国と言う国は案外残酷描写に厳しいらしく、そのせいで改変されたらしいです。日本が出資していれば…とは思いますが、日本がサメ映画に金を出すはずもなく。日本人消費者はサメ映画に金を出しまくってるのにね…。



そういえば原作版は日本人や日系人が重要な役割で出てくるのですが、映画版はその辺がだいたい中国人に置き換わっていました。これも中国資本の影響ですね。かろうじて研究員の1人が日本人でしたが、メガロドンの最初の犠牲者となってオワリ。まあ非常に格好良い死に方だったので不快感は全くありませんでしたが。




結論を言えば本作はこれ以上ないほど面白いサメ小説だということです。読んだことのない人がいるなら新版を手に取ってみるのも良いかと思われます。けっこうな厚みがありますが、一気に読んでしまうことでしょう。






「MEG」の小説・映画についての感想はだいたいこんなところですが、
作者のスティーヴ・オルテンという方は本作以外に一体何を書いているのか? ということが少々気にかかりました。
2006年の「邪神創世記」以来、日本では音沙汰がありませんからね。というわけで英語版のwikipediaを見てみたところ、目を疑いました。
なんとまあ「MEG」をシリーズ化して現在8作目までが出版されているとのこと。いくらメガロドンマニアでも8作も書けるとは驚きです。タイトルは、



2作目…「MEG:ザ・トレンチ」(1999年)
3作目…「MEG:プライマルウォーターズ」(2004年)
4作目…「MEG:地獄の水族館」(2009年)
5作目…「MEG:オリジンズ」(2011年)
6作目…「MEG:ナイトストーカーズ」(2016年)
7作目…「MEG:ジェネレーションズ」(2018年)
8作目…「MEG:煉獄」(2019年予定)



何これ一体どんなことになってんの…
ロボ化したり宇宙に飛び出したりしてないだろうな…

他はともかく、4作目のB級感がなかなかひどい。
邦訳版出ないのかな…頑張って洋書を読むしかないのかな…。
まあ本作が大ヒットしてくれれば2作目以降の邦訳版が出たり映画もシリーズ化されたりするかもしれませんので、そうなることを祈っておきましょう。











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