ある好事家の記録 主に変な映画の感想

変わった映画を見つけたらそれを語りたいブログ。  主にモンスターパニック映画、特にサメ映画の感想が多め

超強台風 感想




製作:2008年中国
発売:ブロードメディア・スタジオ



中国沿岸部のとある都市に、超強い台風が迫りつつあった。「市民の命より大事なものは無い」という信条を持つ市長は、己の社会的立場や経済的損失を投げ打ってでも市民を救出すべく、自ら暴風と高波の荒れ狂う危険な港町へと走り出す。








今年は台風が多いですね。発生してからそのまま素直にまっすぐ行ってくれれば日本にはやって来ないのに、中国がバリアーでも張ってるかの如く急カーブを描いてわざわざ毎回日本に上陸してきやがります。たまには中国へ行けよ! と思ってる方も少なくないでしょう。
ということで、今日観たのは中国にメッチャ強い台風が上陸した時の状況を実に緻密にリアルにシミュレーションしたであろう超大作です。






ところで内容の前にまずジャケットについてなんですが、途方もなくかっこいいデザインですよね。墜落する飛行機と大波から逃げてる構図の上に主要登場人物5名のシリアスかつ精悍なお顔が並べてあります。ついでにサメがジャンプしてたりします。本作はクライマックスがサメとの対決になっており、ディザスター映画のような雰囲気を前面に出しつつも実はサメ映画でもありました。



しかし5分も観ればすぐ判るのですが、ディザスター映画っぽい雰囲気も単なる体裁に過ぎなくて、本作は純然たるプロパガンダ映画…のつもりで作られたであろう作品です。

中国ってなんて素晴らしい国なんだ。
中国共産党は人民を大事にしてくれる素晴らしい政党なんだなあ。
中国人民解放軍は情に厚くて有能だなあ。

ということさえ観客に擦り込めればなんでもいいんよ。
っていう雑なノリなんですが、
本作はそれをあまりにも過剰にやり過ぎてしまったせいで、むしろ中国共産党をおちょくっているかのようにも見えてきます。過ぎたるは猶及ばざるが如し、という孔子さまのありがたいお言葉を見事に体現。




↑暴風雨の中、背広姿で飛び出し漁師たちを救いに来た市長。後ろでザブーンと大波が荒れ狂う中、漁船を守ろうとしていた漁師たちに避難を急ぐよう説得。
「あなたほどの方がわざわざ俺たちなんかのために…」と感極まる漁師たち。
中国共産党は貧民の命も軽視しない!
超強い台風が来ようと誰一人死なせはしない!
そのためなら市長はどこへでも駆けつける!
というね。まさに市長の鑑。こんな素晴らしい市長がいるなら市民は安泰。そんなメッセージが異常なほど強く伝わって来る強烈な演出です。スーパーヒーローとしてアベンジャーズに参戦してもおかしくない勢い。










↑危険な状況にいる市民であれば、たとえ犯罪者であろうと見捨てない!
冒頭で市長自ら取り押さえたスリが危機に陥ってるのを見て真っ先に駆けつけようとする市長。ずぶ濡れになろうと感電しそうになろうと関係ない。そんなカッコ良すぎる市長の姿に心打たれ、悪辣なスリも思わず改心せざるを得ない。
トップは現場で駆けずり回るべきなのか?
会議室で采配を振るうことに専念すべきなのか?
いや、彼はその両方を見事にこなします。全ては市民の命を守るため。そのためなら法律すら捻じ曲げる。「人の命を救ってこその法律のはずだ!」信念は規律を上回る。素晴らしい迷言、いや名言ですね。









↑大波が押し寄せたことによって、避難所にサメが出現。ちっさ!大して危険でもなさそう!としか思えないサメなのが残念でならない。台風のSFXは普通にレベル高いのに。肝心のラスボスは30センチぐらいのオモチャの魚をヒモで引っ張っているかのようなくそしょぼい映像が展開されてしまいます。どうしてサメだけはいつも蔑ろにされてしまうのか。でもこれがクライマックスなんです。
「私は元特殊部隊なんだ!」
と叫んでサメを棒で殴りつける市長の姿が眩しすぎて画面を直視できません。




市長の姿があまりにも死ぬほどカッコ良すぎるせいで他のものはなかなか目に入ってこないんですが、もちろん中国人民解放軍の美化っぷりも半端ではありません。金で階級を買うような人々にはとても見えない。離島で産気づいた妊婦を助けるため、わざわざ台風の目に入ったわずかな間隙を狙って多大なリスクを背負いながら決死の救助作戦を展開。そこには今までに見たどんな米軍礼賛映画よりも美しく実直で清廉な中国人民解放軍の姿がありました。


さらに、市長の部下たちである町長や役人たちの聖人ぶりも見逃せないポイント。
たとえ台風が迫ろうとも娘の結婚式は予定通りやってあげたい。そのせいでクビになってしまったが、それでも市民の救助に我が身を捧げる。なんと清らかで気高い魂を持つ中国人たちなのか。
彼らの活躍によって、超強い台風もサメも誰一人として仕留められません。まさかの犠牲者無し。この手の映画でキルカウント・ゼロはあり得ない。でもいいんです。市長がかっこよかったから。


ということで、「わざとらしすぎて変な意味で面白くなってしまったプロパガンダ」という物好きにはたまらないディザスター+サメ映画の珍品となっておりますので、中国共産党に洗脳されない自信がおありの方はご覧になってみてはいかがでしょうか。


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プロフィール

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岩石入道
性別:
男性
自己紹介:
B級~Z級映画が主食。ホラー、モンスターパニック系が特に好き。目についたサメ映画全てチェックしたい
krgm200@gmail.com

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